個人宇宙のレビューコレクション
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風待ち人 夢追い人(iPhone・iPad対応版)なかなか営業成績が上がらない新社会人の神山と金田が、ストリートミュージシャンの岬と出会ったことから始まる物語です。選択肢はなく、40分程度で読了しました。 とても面白かったです!読み終わった後、そっと背中を押してくれるような温かい作品でした。文章の表現も好きです。作品の世界観に寄り沿った、美しくも飾らない文章は読んでいて心地が良かったです。登場人物につきましても、金田と岬のキャラクターがとても個性的で、2人のやり取りの場面はとても楽しく読みました。あと、岬がチラッと目を向けた時のイラストが特に好きです⋯⋯! @ネタバレ開始 ストーリー部分についても、夢と現実の狭間で迷いながらも、3人が自分なりの結論を出していった部分にすごく好感が持てました。特に主人公の神山には大きな共感を抱きました。3年後の神山は「あまり変わってない」と言っていましたが、すごく変わったよと自分は思ってしまいました。その領域にたどり着くことが、本当に難しいんですよね⋯⋯。 @ネタバレ終了 最後に作品の途中で流れた『よわむしスプートニク』という楽曲について、初めて聞きましたが、すごく良い曲ですね。ライカのエピソードは知ってるので、個人的に響くものがありました。素敵なゲームをありがとうございました!
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女のフリしてゲーム作ったら、女装することになりましたフリゲ制作を趣味としている高校生・間瀬くんが、いろんな事情があって女装をすることになってしまったギャグ物語です。全2エンド、1時間程度で読了しました。 とても面白かったです!グラフィックや演出が細かい部分まで作り込まれており、本当にあっという間の1時間でした。ボイスの演技が、物語のコミカルさをより加速させていると感じました。エンディングにもしっかりギャグを入れてくる演出が個人的に好きです。 @ネタバレ開始 男子トイレで不幸にも(?)遭遇してしまった男性の顔が出てきた瞬間と、間瀬くんのアレを見てしまったキヨスケさんが叫ぶ部分は、声に出して笑ってしまいました(笑)。 間瀬くんとキヨスケさんが、創作について真面目に語っていく部分も良かったです。自分も創作をやっているので、どうしても作品内容と直接関係ない部分を意識してしまう時がありますが、間瀬くんが言っていたような気持ちで今後も創作を続けていきたいですね。 あと、玲香ちゃんのインパクトも強かったです。トゥルーエンドを読み終わった後、よくよく考えてみると、結構ぶっ飛んだ事をしているなと思いました(笑)。クラスメイトの男子を女装させ、自分の兄とデートさせて、いったいどんな結末を望んでいたんだろうと考えました(笑)。 @ネタバレ終了 長くなりましたが、最後の瞬間まで本当に楽しいギャグ物語でした!ありがとうございました!
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1MINUTE IRREVERSIBLE(ワンミニッツ・イリバーシブル)詳しい概要は言えませんが、抗えない運命を描いた物語です。全2エンドで10分も経たずに読了しました。前作『BRADLEY』はプレイ済で、そちらと同様に映像・世界観・言い回しなど制作者様でしか表現できないセンスが爆発した内容でした。 @ネタバレ開始 物語自体は切ないの一言になります⋯⋯。断片的に語られた背景から、主の優しさを感じてしまったので尚更です。「にげる」→「にげない」の順番で読みました。客観的に見たらバッドエンドの運命でも、その中で最善の行動を選び続ければ当人たちにとってのハッピーエンドになるかもしれない、と個人的に考えてしまいました。素敵な作品をありがとうございました!
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僕らのノベルゲーム文化祭のためにノベルゲームを作ることになった、文芸部に所属する高校生5人の青春物語です。選択肢はなく、約3時間半で読了しました。『創作』というテーマに真摯に向き合った内容になっており、後半からの劇的に下げて上げていくジェットコースター的な展開と、テーマに対する凄まじい熱量を感じて、読み終わった後はしばらく呆然となりました。 もう少し物語の概要に触れていきます。文芸部に所属するタツ君の提案で、主人公の樋口くんを含め、5人の文芸部員が合作でノベルゲームを作ることから始まります。文芸部の5人はみんな個性的な性格をしており、前半は1人1人のキャラクターを丁寧に描いていく展開になっています。序盤で結構ガツガツと言ってきた印象の谷口さんが、意外と気さくで創作に対してストイックな部分を見せてくれたのが特に印象的でした。普段とは違う大胆な格好で登場した美央ちゃんなど、前半の展開で文芸部のみんなに愛着を持つことができました。 @ネタバレ開始 この作品の肝となるのは、やはり後半以降の展開ですね。とある事情で、文芸部とゲーム制作が空中分解寸前まで追い込まれる事態になります。それに至るまでの過程に強引さはなく、自然を転がり落ちていくような感じで進んでいくので、かなりの緊張感を持って読みました。また、樋口くんがタツ君を追い込んでしまう場面は共感できてしまう部分が多くあり、その部分は(良い意味で)一種の気持ち悪さを抱きました。ただ、誰でも目を背けたくなるような感情をしっかり描き切ったからこそ、その後の展開に大きなカタルシスを感じることができました。 鬼瓦くんが描いたエレナを見た瞬間が、個人的に作品で一番好きな部分です。素晴らしい演出も相まって、自分も感動してしまいました⋯⋯。そんなエレナに救われた樋口くんが、終盤の屋上で今度はエレナを救う立場に切り替わった部分も良かったです。最後の体育館の展開は、今までの鬱憤を全て晴らすかのような「まさに青春!」の一言に尽きますね。 @ネタバレ終了 個人的な話になりますが、昔から創作活動をしている自分に対して「なんでこんなことをしてるんだろう?」と思う瞬間が結構あります。そして、その答えは未だに自信を持って言えない部分があります⋯⋯。ただ、一つだけ断言できるのは、他人の創作に救われたから今の自分は創作活動を行っているという部分です。エレナのイラストの場面で一番感動してしまったのは、樋口くんと同じような気持ちを自分も経験したからなのかなぁと冷静になって思いました。 総括に入りますが、この作品は「合作」という構造で、創作活動が抱えている清濁をしっかりと表現し、メリハリのあるシナリオで青春を描き切った、大変クオリティの高い物語です。創作をやっている人であれば、共感できる部分はたくさんあると思います。 ⋯⋯最後に今作の推しですが、自分は遙先輩と鬼瓦くんです。遙先輩のマイペースだけど、いざと言う時はビシッと締めてくれるところが好きです。あと、鬼瓦くんのちょっと偏屈な部分があるけど、同じ志を持っている人には優しいところが好きです(立ち絵はありませんか?そうですか⋯⋯)。「ハラハラドキドキ・創作!青春!」の楽しい3時間半でした!素敵な作品をありがとうございました!
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片恋スターマイン最高に面白かったです。特に紫季先輩のルートは目から熱いものが出てきそうになるくらい、とても心を揺さぶられました。全6エンド、2時間半程度で完走しましたが、あっという間の時間でした。大きな余韻に浸りながら、衝動的に感想を書いてしまうことをご容赦ください。 この作品の主人公は、大学3年生の桃耶ちゃん(名前変更可)です。彼女は高校時代から片思いしている紫季先輩がいて、彼に告白しようと心に決めたところ、幼馴染の翔くんと再会することから始まる物語です。制作者様の過去作『隣の家の幼馴染に素直になれないのでラインする。』と『憧れの先輩と推理クイズで以心伝心しちゃうかもしれない』と、同様のキャラクターが登場します。そちらはミニゲームやコミカルな要素が強いですが、今作は「完結編」の名にふさわしい本格的な長編恋愛ノベルになっています。イラストはよりスタイリッシュになり、彼らの微妙な三角関係を卓越した描写力で徹底的に描いています。自分は過去作品を全てプレイ済だったこともあり、序盤から3人に強く感情移入しながら読むことができました。自分は紫季先輩、翔くんの順番で進めました。 @ネタバレ開始 まずは翔くんルートから。中盤の事故・記憶喪失の部分は、本当に衝撃的でした。と、同時にシナリオを書いてる身として、このやり方は物語の構造として「すごい!」と思いました。過去作からずっと「翔くん片想い」だった恋愛構造が、このハプニングで一気に「桃耶ちゃん片想い」にひっくり返ってしまったからです。厳しい態度で接してくる翔くんに対し、ひたむきに頑張る桃耶ちゃんをより応援したくなりましたし、間接的に事故前の翔くんの葛藤も感じることができました。記憶が戻った瞬間のカタルシスは本当に大きかったです⋯⋯。過去作のラインで悶々としていた翔くんが、ここまでストレートに言えるようになったんだなぁと感動しました。 次に紫季先輩のルートです。こちらも心を揺さぶられるくらいに面白かったです。伏線の回収とか、普段はクールに振る舞っている先輩が激しく動く部分とか、「おおっ!」と思う部分はたくさんありました。その中で個人的にすごく良いと感じたのは「何よりも相手の幸せを願う」ことを決めた、桃耶ちゃんの人間的な成長でした。過去作ではのんびりとした部分が特徴だった桃耶ちゃんが葛藤の末、紫季先輩の幸せを何よりも願うようになりました。その結果、周囲の人間にも良い影響を与えるようになり、ついにグッドエンディングを迎えます。きっとそれは「自分の幸せ」以上に、「相手の幸せ」を願った結果なんじゃないかと考えています。全ての問題が綺麗に解決する、一番すっきりとしたエンディングでした。あと、紫季先輩のバッドエンドルートも個人的には好きです。秘書ルートも事故死ルートも、それぞれ違うベクトルの物語を想像してしまうような、そんな余韻が残る面白い内容でした。 @ネタバレ終了 長くなりましたが、満足感の高い素晴らしい作品でした。過去作から読んできた身としては、これ以上はない大団円だったと思います。本当に、本当に楽しい時間でした。ありがとうございました!
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さよならチョコミントある夏の日、主人公の僕と幼馴染のチコが外でアイスを食べることから始まる掌編です。約1000文字なので、5分もかからずに読了しました。 短い時間ですが、物語の世界観とかいろんなことを想像してしまう物語でした。夏特有の雰囲気に包まれているからでしょうか。二人の何気ない動作の中に愛しくも切ないものが入っており、読み終わった時は何だかセンチメンタルな気分になってしまいました。とても印象的な夏の掌編でした。ありがとうございました!
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エルシェの少年とある王国の少年リオは、物心ついた時から『おねえちゃん』のエルシェに監禁されていた。そんな日々の生活に退屈を感じていたリオが、外に出てみようと考えたことから始まる物語です。ストーリーの一部に探索パートが入っており、全2エンド20分弱で完走しました。 以前の作品もいくつかプレイしていますが、今作はさらに探索パートやイラストに動きが入ってる部分があり、「おおっ!」と感じる瞬間がたくさんありました。2人のイラスト全般も、すごく綺麗で惹き込まれました・・・!探索パートは、不穏な演出と物語の謎を散りばめたことで、絶妙なスリル感を味わいながら進めることができました。 @ネタバレ開始 明かされた真実にはとても驚きました⋯⋯。全く予想できず、すっかりファンタジー的な世界観を考えていました。確かにこれは『王国』と呼ぶにふさわしい舞台だったと思います。作中でエルシェは過激な行動に出ることはありませんが、探索パートのおかげで多大な時間と準備を積み重ねていることが分かりましたので、間接的に凄まじい狂気を感じることができました。短い時間ながら満足感の高い、とても面白い作品でした!ありがとうございました!
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ヤドカリ普通の高校生・綾斗は、いつも謎の美少女・美優に「親友だから」という理由で付きまとわれていた。そんなある日、綾斗は奇妙な殺人現場に遭遇してしまう。その矢先、謎の生命体『ヤドカリ』の存在を知ったことから始まる物語です。1時間程度で、全てのエンドを見ることができました。立ち絵はなく、メインは文字で進行していきます。 とても面白かったです!『ヤドカリ』に関する謎・不穏な部分を散りばめつつ、美優と幼馴染のえみとのラブコメパートを入れるなど、メリハリのある展開で一気に読んでしまいました。一番好きなキャラクターは、やはり美優ですね。最初は「なんで綾斗に付きまとってるんだろう?」と思いましたが、終盤のカッコ良い行動で一気に好きになりました。普段のクールな感じを出してるけど、食べ物のことになると途端にムキになっちゃう部分も、すごく可愛かったです・・・!楽しい時間をありがとうございました!
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和泉くんと三姉妹。主人公・雅くんの両親が海外出張に行くことになり、3姉妹のメイドさんが家にやってきたことから始まる日常コメディーです。全4エンド(ノーマルエンド、各ヒロインのエンド)、コンプリート後に追加されるおまけのストーリーを含めて2時間程度で完走しました。 とにかく3姉妹のキャラクターが魅力的に描かれており、最後まで楽しく読むことができました!個人的には、あまねさんが一番好きです。普段はマイペースに動いているんですが、時折強い部分と弱い部分を見せてくる辺りに大きな魅力を感じました(もちろん、くるみちゃんのツンデレっぷりとか、しずくちゃんの正統派な感じも好きです・・・!)。3姉妹だけでなく、主人公の雅くんもすごく好きです。まだ高校生なので「あーっ!」と思う言動もたまにしてしまいますが、根はしっかりとした男の子なので、すごく安心して読むことができました。 基本的にはドタバタコメディーで進行していきますが、3姉妹の境遇に関する部分など、ハッとする瞬間も多くありました。普段の生活では忘れてしまいがちになってしまいますが、当たり前に存在することの中にも、幸せは沢山ある——。個人的な感想になりますが、クリア後たくさん開放された一枚絵を眺めながら、そう思ってしまいました。素敵な作品をありがとうございました!
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未完の後悔主人公の平山くんは、とある事情でバスケ部を辞める。その後、先生の計らいで写真部に入ることから始まる物語です。選択肢はなく、約40分程度で読了しました。 登場人物たちの感情を丁寧に表現しており、一般小説を読んでいるような感覚がありました。後悔との向き合い方がメインテーマになりますので、自分自身の中に残ってる後悔など、いろいろなことを考えながらプレイしました。 @ネタバレ開始 平山くんは自分の後悔を乗り越えるため、迷いながらも仲間と激しくぶつかっていく部分があります。彼自身の強さはもちろん、彼の背中を押した先輩、彼の怒りを受け止めてくれた仲間の優しさなども感じました。せめて、そんな優しさを自分も持っていけたらな、と読み終わった時に思いました。素敵な物語をありがとうございました!