個人宇宙のレビューコレクション
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Please call me…?ある冬の日、偶然にも公園で主人公とその同級生のヒロインが出会い、ちょっとしたジョークを交わしていく物語。15分程度で読了。 意外な展開がありつつも、全体的にほっこりとした心地の良いラブコメでした。序盤のやりとりも、しっかりとラストに繋がってます。 短い物語ながらも、ヒロインの田中さんはとても魅力に溢れた女の子として描かれており、「こんな女の子が学生時代にいたら、すごく楽しかっただろうな〜」とつい思ってしまいました。 未プレイの方は、ぜひちょっとした冬の物語を読んでみてはいかがでしょうか。
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たとえ明日が晴れなくても。謎の少女から突如として、残酷な運命を予告された主人公の話。選択肢はなく、1時間程度で読了。なお、ヒロインの2人はボイス有です。基本のベースは恋愛・ヒューマンドラマ。 「これで終わりなのかな?」と思った瞬間、一気に読み手の感情を突き落とすような急展開もあります。でも、最終的にはちゃんと丸く収まってくれます。 主人公は謎の少女ティアナにひたすら翻弄され続け、一時はかなり追い詰められたりしますが、その度に恋人の明日晴から力強い励ましの言葉をもらいます。まるで雨と晴れのように、この作品は陰と陽がきっちりと分かれており、生きる上での清濁を把握することが、メインのテーマなのかなと感じました。個人的に雨恵の名前の由来・タイトルについては、秀逸だと思いました(本編を読み終わった後、改めてタイトルを見て、ちょっと鳥肌が立ってしまいました)。 2人のボイスの演技も素晴らしかったです。ティアナは終始淡々とした演技をしておりますが、時折感情がちょっとだけ入る部分があり、その加減がすごく良いと感じました。
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海の彼方で消えた空幻想的な青い背景が美しい現代ファンタジー作品。全3ルート、30分程度で完走しました。 浅い海がずっと広がっている幻想的な世界。そこで目覚めた主人公は記憶を失っていた。 そんな彼を待っていたのは、制服を着た可憐な少女だった。そして二人は、遠方に見える白い塔に吸い寄せられるかのように足を進めていく。 序盤の展開から、最初は「絵本みたいな作品かな?」と思いましたが、後半から主人公は記憶を取り戻し、いろいろと重たい選択を課せられます。選んだ選択によって、切ない感じのエンドになったり、どこか狂気を感じてしまうようなエンドになったりします。 どこか現実的ではない美しい背景が魅力の作品なので、その世界を味わいながら、二人の行く末を見守ってはいかがでしょうか。
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臨界天のアズラーイールシナリオ・演出・立ち絵・音楽など全てのクオリティが高く、良質な長編映画を見終わった時のような大きな満足感のある作品でした。プレイ時間は約5時間。2つのルート鑑賞済。 何よりすごいと思ったのは、作中に流れる音楽! どうやら製作者様の自作のようで、彩りのある音楽が登場人物たちの感情や物語の展開を、より強く引き立たせています。 個人的に良いと思ったのは、タイトル画面でも流れている『lilium』。このモチーフとなっている登場人物をまさに象徴している音楽で、これだけでその人物の性格が見えてくるような力強さと美しさを感じました。 次にシナリオについて、ネタバレにならない程度に軽く触れます。 SF・神話の要素が入りながらも、ベースは恋愛・ヒューマンドラマ。あと、ちょっとだけロードムービーが入っているような気がする。 ストーリーは『第1部』と『第2部』に、きっちり分かれます。 『第1部』の序盤は、割と緩やかなペースで物語が進んでいきます。「これがSF?」と疑問に思ってしまうくらいの穏やかな恋愛的展開が続いていきます。しかし、随所にある気になる伏線・加速している悪夢の描写・そして悪夢に反比例するかのように充実していく主人公の境遇。 なんだか喉につっかえるような違和感を抱きつつ、『第1部』の終盤の展開に突入。 そこからは積み上げてきたものを一気にひっくり返すような怒涛の展開が続き、主人公はどん底に落ちた状態で『第2部』に入ります。『第1部』終盤以降の物語の爆発力はとても高く、それを過ぎたら、もうエンディングまで止まることができませんでした。 これ以上は核心に触れないようにしますが、『第1部』で積み上げてきた伏線もしっかりと生かしつつ、『第2部』も展開していきます。 『第2部』終盤の彼女との会話も、『第1部』でしっかりと積み上げてきたからこそ重たく、そして力強く主人公の背中を押してくれたんだなと思いました。(彼女が割とあっさり受け入れたのも、ある意味『あの世界』の彼女だからこその行動なんだとも思いました) 個人的に好きなのはアズ。 最初はいい感じに乾いた感じのキャラクターだったけど、主人公と交流していくうちに、徐々に人間らしい血が入っていき、どこか憎めないキャラクターに変わっていったのが、個人的にとてもツボでした。 ガッツリとした物語を読みたい! 良質の音楽を聞きたい! そんな方は是非、プレイしてみてはいかがでしょうか。序盤の展開に「んっ?」と思っても大丈夫。それを通り抜けた先には、素晴らしい余韻の読後感が待っていると思います。
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マサユメテンシ記憶喪失になってしまった超人気アイドルの女の子が、主人公の家族と一緒に共同生活をする王道のボーイミーツガール。2つのエンディング。40分程度で完走。 何より秀逸に思ったのは、終盤の演出! 「これを表現したいから作ったのかな?」と思うくらいに、終盤に出てくる楽曲の歌詞に物語の全部が入っているように感じました。 ストーリー自体は捻りのない「まさに王道!」という感じなんですが、終盤の演出を経た後は、このストーリーだからこそ歌詞が輝くんだなと思いました。物語が終わった後、前半の日常描写を振り返ってみると「ああ、良かったなあ⋯⋯」と思うくらいの余韻が残りました。 未プレイの方はぜひ正統派の物語を味わってみてはいかがでしょうか。
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ヘブンズ・ロワイヤル一度死んでしまった悪人たちが、『天国』という舞台で殺し合うという魅力的な設定のサバイバルファンタジー。5時間程度で読了。 生前の一部の記憶が失ってしまった主人公のルーシー。 どこか淡々として、明らかに腹に一物を抱えた男ナルガ。 それ以外にも個性的な天使や、悪人たちが登場していき、序盤から今後の展開が気になる部分が多く出つつ、ついにベブンズロワイヤルという殺し合いが始まります。 個性的なキャラクターが脱落するごとに、ルーシーの記憶もどんどん取り戻していき、終盤も「そうきたか!」という意外な展開で最終決戦を迎えます。 戦闘の合間にも、ルーシーとナルガの間で繰り広げられるクールな会話に「こういう感じのコンビっていいなぁ⋯⋯」って思いました。 立ち絵・スチルも非常に綺麗で、特に女性キャラクターは惹きつけられるものがありました。個人的な好みはエリス。シビアな世界観の中にいるにも関わらず、ちょっと抜けた部分があり、そこらへんに愛着が湧いてしまいました。 個性的な世界観・魅力的なキャラクター・伏線の回収・ラストに向けての意外な展開もしっかりと行われており、最後まで物語を楽しむことができました。 未プレイの方は、ぜひ奇妙な死後の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
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ティラノフェス2019オープニング