heart

search

お風呂かこのレビューコレクション

  • 女のフリしてゲーム作ったら、女装することになりました
    女のフリしてゲーム作ったら、女装することになりました
    タイトルを見て、「これはおもしろいだろう」という予想した上で、期待しながら読みました。結果、その期待を裏切らないどころか、当初の予想を上回るおもしろさでした。率直な感想を述べますと、「こんなん笑うわ」です。おもしろすぎ笑。 @ネタバレ開始 主人公の心の声が印象的でした。この表現が正しいかは分かりませんが、小者っぽいというか少し悪っぽい感じがいい刺激になっていて、状況だけではないおもしろさがありました。もちろん状況だけでも大概おもしろいのですが、登場人物の反応を見るのが楽しいという、実況的なおもしろさのある作品だと感じました。また、物語の展開や落とし所が分かりやすいため、終始ストレスなく安心して笑える作品であると思いました。いやあ笑ったなあ。 @ネタバレ終了 おすすめオブおすすめの作品です。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • さよならキャットボックス
    さよならキャットボックス
    進むにつれて提示されていく情報を、ゆっくりと受け止めて考えたくなる作品でした。 @ネタバレ開始 気づいてあげられていたらとは思うものの、気づいたところで受け入れてもらえるのかという問題もありますよね。なんというか、教えないのも優しさのようで、相手を否定したくないがゆえの行動であるように思えるので、行動の是非を問うのは違う感じがしました。作中での言葉を借りると、「価値観」を尊重したからこうなったのかなと。否定はしたくない、でもそれはできない。だったら……。という選択のように思いました。 個人的にタイトルがとても気に入っています。キャットボックスについては他の方も触れていますが、私も見ないままにしたということなのかなと思います。また「さよなら」という表現が、短いけれどはっきりと儚さを思わせてくれるので、タイトル画面の雰囲気も相まってきれいだと感じました。このきれいさが、灯子の心理を表しているとも感じました。 @ネタバレ終了 他者との関わり方を考えられる作品でした。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • 女中浮世の怪談
    女中浮世の怪談
    女中さんがいくつかの怪談話を聞かせてくれます。話の中で起きている事柄としては、ほどほどに常軌を逸している部分があって不気味でした。しかし、女中さんの趣味なのでしょうか。憎悪やら怨恨やらの話が多かったような気がします。反応を見て楽しそうにしていたので、もしかしたらそうなのかも。 @ネタバレ開始 一番最初に読んだ、池に落とされるお話は驚きが先行しました。唐突にやられたので、「え?」という感じになりました。なんで落とすのー。( ;▽;)ヤメテヨー 全部読みましたが、肉屋のお話が特にお気に入りです。なんとなく現実でもありえそうな感じが、気味悪さを強くしていたように思います。話としては勧善懲悪の形式をとっているくせに、その中身がなかなかの悪趣味さだったので、すごく気持ち悪かったです。 しかし、これらのお話を全部あの女中さんに話して貰っていると思うと、何というか得をしたような気分になりました。 @ネタバレ終了 ほどほどに気味悪くてたのしかったです。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • 消灯コーヒー
    消灯コーヒー
    タイトル画面に惹かれて読みました。絵や声で表現されている空気感が魅力的です。雰囲気が楽しめる作品だと思います。 @ネタバレ開始 どんでん返しをされましたが、それは嘘か真実か。もしかしたら、あれは嘘でも何でもなく、真実を冗談めかして話しただけなのかもしれないとも思いました。声的には本当に嘘だったように感じましたが、どうなのでしょう。 @ネタバレ終了 雰囲気がある作品でした。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • 人間らしく
    人間らしく
    自分の生がわずかと知ったとき、人は何をするのか。何が出来るのか。恐らくそれに普遍的な解はないけれど、どこか似通った部分があるようにも思う。 @ネタバレ開始 作中で人間らしさとして描かれている部分は、理想的な人間らしさのように思いました。ただ、ゾンビとして描かれる部分も、ある意味では人間らしいように思います。先の展望に何となくの考えはあるけれど、環境や生活に流されてしまうのも、同じく人間らしさかなと。何がしたいのかという部分は、終わりが示されて初めて知覚するという人も結構多いのかなと思ったりもします。とはいえ、明確な終わりに対して何かをしようと足掻く様も、やはり人間らしさの中に含まれる行動なのではないかと思います。今作の主人公は、自身の腐っていた状況を省みることで行動に出ます。そうしたのは、心のどこかにはずっとあった、理想的な人間らしさを求めたがゆえであるとも思いました。 またタイトル画面の変化が大変印象的でした。時間の経過で失われたものと、のこされたもの。そういった彼の軌跡が光によって表現されている部分に、美しさを覚えました。 @ネタバレ終了 短編ながら印象深いお話でした。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • 打ち上げ花火とコンペイトウ
    打ち上げ花火とコンペイトウ
    数回のマップ選択の後にエンディングにつながる形式です。難易度はそれほど高くないと思います。それでは、出かけましょう! @ネタバレ開始 どこまでも澄んだ透明感のある声。幽霊とは思えない明るく弾けるような声。作中でその存在には『幻覚』という表現が使われています。それが明かされたとき、文の至るところで清い表現が使われてていたのはこのためかと納得しました。 好きになった人間がいなくなるという傷は、その幻を作るに足り得る事態であると思います。それはおそらく、相手への依存度や自己が持つ価値観、そして交わした思いの強さなども関係すると思います。 ただ、気持ちの強さ、思いの強さというものは、不変ではないと思います。時間を重ねていけば、記憶は遠くなり、忘れてしまうこともあるかもしれません。しかし、忘れてしまったとしても、交わしたひとつの約束が、その甘い一瞬の花が、思い出させてくれることでしょう。きっとその事実だけは、ずっと変わることはないと思います。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 また、花火の下で。 @ネタバレ開始 あと、私はべつに鉄棒は嫌いではないですね(笑) @ネタバレ終了

    レビューページを表示

  • シリアルキラーの名前
    シリアルキラーの名前
    社会に迎合することの違和感、それによって周りから受ける影響や押し付けられる価値観。それら日常にありふれた苦痛を通して、溢れ出た嫌悪と憎悪を汲み取ったようなお話でした。 @ネタバレ開始 恵まれない家庭環境がゆえに歪んでしまうのだ。犯罪心理とはそういうものだ、と結論づけるのは簡単であり、しかし簡単な結論であるからといってそれが間違っているとも思えない。その論自体は、おそらく当て嵌まる部分もあると思います。これに対し物語を読んだ私が、別の側面を見出したくなっているのは、その歪みに主観を通して触れられたからだと思います。 主観を排し大枠に押し込めることはできると思いますが、それはやはりあくまで主観を排した視点であって、主観からとらえた世界とは遠くかけ離れているように思います。当人たちにとっての世界は、良くも悪くも周りから強く影響を及ぼされるものであったため、その大枠を押し付けられる苦痛というものは、グロテスクなのでしょう。 だからこそ、その枠は自己を守ることにも使われていたのだと思います。グロテスクが社会の形態であり、そこに迎合せず自陣に踏み入らせないための壁が、あの枠なのだと思いました。個人であるという認識をしてしまうと、個人にすらなれない自分が消えてしまう。あるいは、自分の実態に目を向けないための記号という解釈もできるかなと思いました。 ただ、共感できるからといって、正当化できる行為ではないのは事実です。人間社会において、殺人は等しく罪でしょうから。しかし、その行為に至った過程を見ると、どうしても情が芽生えてしまう。そういう恵まれなかった人に対して、一般社会のルールを押し付けるというのは、やはり酷でもあるのだと思います。そういう社会のルールは、知る機会がなければどうしようもないのも事実なので。作中ジョンはその行為が罪であるという認識はできていましたが、その行為の実態というか、罪である理由などの根幹の部分が、明確には分かっていなかったのではと思いました。罪が罪であると自覚するのに、想像ではなく体験が必要になってしまったのではないのかなと。後悔しているという明確なものが出てきたのも、終盤でしたから。許しを乞えたのは、それが罪であるという実態を知ることができたからなのかなと。 名前というものに固執する姿勢には、甘えたりして縋っていたかったという感情が潜んでいるようにも思いました。なので竹内に対する感情は、この部分も含まれているかなと思いました。もちろん存在の肯定という部分も大きいとは思いますが、回想での描写もあったので、こういう解釈もできるかなと思いました。 「純粋さを失ってはいない、ただの少年だった」 この一文に込められているものが、切なさを思わせます。 純粋であったがゆえの歪み、純粋であるがゆえの美しさ、それらに密やかな幸福を感じられる主人公もやはり、純粋であると思います。 かけがえのない記憶となった彼は、いつまでも純粋であり続けることでしょう。 @ネタバレ終了 熱量を感じる作品でした。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • ヤドカリ
    ヤドカリ
    紹介文の最初の方にだけ目を通して、珍しいヤドカリを見つけて食べる話なのかなとか思っていたのですが、全然違いました。きれいなタイトル画面だったので余計にそうだと思ってしまった。 @ネタバレ開始 美優さんの、大食いハイスペックかつ他にも特徴があり、さらにまた終盤で要素が増えるというてんこ盛りさは圧巻でした。これでは幼なじみという強力な要素でもってしても、えみちゃんがキャラ負けしてしまう! 実際えみちゃんとのルートだろう方に行ったら、やつにやられてしまいました。もっと見たかった……無念。というか、幼なじみという要素さえも、えみちゃん独自のものではなくなっていませんか。 「何日か一緒に遊んですっかり親友になった」 というのを綾斗くんが忘れているから釣り合いが取れている……のか? ほのぼの、と言うにはBADENDの残忍さが目立ちますが、雰囲気は通して温かいと感じました。 作中にはヤドカリ(甲殻類の方)を食すシーンがなかったので、それについては私の頭の中でやっておきます。この三人なら和気あいあいと、内一人は大量に食べそうですし。地の文で共食いとか言われそう。 @ネタバレ終了 テンポも良く楽しいお話でした。 ありがとうございました。

    レビューページを表示

  • 最終電車
    最終電車
    時間に関する表現が多く用いられていますが、特に「たっぷり五分」という表現から、生きることへの苦痛が相当なものなのだと感じました。 @ネタバレ開始 主人公には、ある意味では冷たさも感じます。助けたのは気まぐれと言い切ってしまう冷たさ。交わした言葉に背く冷たさ。同情していたはずなのに、自分だけは生にしがみつく冷たさ。そして、それに見切りをつける冷たさ。そこに温かさはなく、あるのは罪悪感と後悔、そして人間らしい傲慢さだと思います。 いじめをやめさせようとは考えないところや、すぐに逆上してしまう部分から、年齢相応の人物であると思いました。これらの言動の根底には、常に自分が恵まれていないという思いがあり、その意味では自己憐憫に浸るのは正しいのだと嘆いているようにも見えました。己を保つことを優先するのは人間らしいともいえますが、その在り方は彼とは異なります。なので、同じ道を歩く未来は当然ないと思います。 自己満足の贖罪もあっけなくやめてしまいますが、罪の意識などは所詮その程度ということなのだと思います。自分の負った罪の意識などたやすく正当化してしまえるのが、人間らしい傲慢さだと思いました。今回の場合は、幼さゆえの過ちとも言い換えられますかね。 生きるために物事を都合よく解釈しているのが、この主人公の結末として相応しいと思いました。 @ネタバレ終了

    レビューページを表示

  • Paint Over
    Paint Over
    背景が非常に魅力的な作品です。私は美術に知識や理解などは持ち合わせてはいませんが、しかし創作活動で何かを表現しようと模索する者としては、どこか通じるものがありました。 @ネタバレ開始 桜井先生がおっしゃっていた「悩んだ方がいい」という言葉は、個人的にかなり好きです。悩むという行為は引っかかるところがあるからするわけで、つまりはそれだけ真剣だということだと思います。加えて、悩むこと自体はそれほど嫌われるものではないと思います。かくいう私も何かを思っては悩み、なんとなくの糸口を見つけて解消したくせに、またすぐ次の何かに悩み始めるなど、もう悩みまくっています。気負いすぎるのがあまりよくないというだけで、悩むということにはきっといい面もありますよね。あとそれを「かゆい」と表現するのは、相沢くんらしくていいなと思いました。私も使おうかな。 また、牧野さんが言っていたように、さばっと見切りをつけるもよしですね。そこは好きにしたらいいと思います。まああの眼差しが語るものはそこではないでしょうが、しかし相沢くんも感じていたように、あれは決して嘘ではないと思います。本心だからこそ、あれだけ重みのある言葉になるのだと思います。 そして現実の壮麗さを見て、Paint Overという答えにいくの、ほんとかっこいい。自分の理想とする四季の情景を描くために、とか言っていたのに、理想を押し上げられてもなお向かう。というよりむしろ燃えているところが、正に追い求める者だと感じました。 「あなたの今の絵、あたしは本当に好きだから」 ああ本当に、表現者というものはかっこいい。 理想と現実の対比が今作の大きな部分だと思いましたが、ここからは物語の枠にとどまらない強烈な熱を感じました。そして"実る寒空の下、"の心地よい余韻。この作品好きです。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。

    レビューページを表示