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エヌエヌのレビューコレクション

  • Idiot Savant
    Idiot Savant
    精神疾患という扱うのが難しいテーマに深く切り込んだ作品です。 多くの登場人物、話の展開が複雑に絡み合っており、誰かの脳髄の内部を覗くように、物語に足を踏み入れてプレイするのは、とても興奮させられる体験です。 複数エンド作品ですが、エンドの名称がどれもうまい付け方です。 どのキャラも己の信ずるところを突き進むのみで、とても魅力にあふれています。 理系的知識と文系的想像力の融合こそが重要と思っているので、こうした物語が創り上げられたことに感嘆します。 多くの要素を持つ作品であるため、いまだに感想がまとまらないですが、通常の文脈から外れた人たち(それは程度の差はあれど我々の誰もが持つ面)が、どう救済されるかの物語であると思いました。 @ネタバレ開始 座標軸xyz=000である喫茶店を物語の原点としていることがとても好きです。 喫茶店でコーヒーを頼む行為の意味をどう捉えるかなど、まさに世界をどう認識しているかということが分かりやすく示されていました。 最初のbadとなっていく一連の物語は、ある意味で甘美な物語です。 徹底的に純化した世界は美しいものがあります。 「タンポポが一生懸命咲いていたから」という言葉にまさにそれが象徴されていました。 美しいものと醜いものが徹底的に極端化されるというのは残酷であり、そして同時に物語として強い魅力があるのだと思います。 そうしたBadであったり、Merry badになる世界の方向を気に食わないとし、強い意志を持って変えていく展開には胸が熱くなります。 それは同時に、純化した世界から遠ざかり、試行錯誤を必要とする現実的な世界を粘り強く生きるべきとする、プレーヤーへのメッセージでもあると感じました。 多くのキャラが登場しますが、それぞれのNとSの組み合わせがなされており、せいらがモノポールとして、世界の外へともう一極を求めるという構造になっているのが好きです。 それが永続しない、幻のような一瞬の作用であったこともまた理論的です。 世界の道理を抑え、世界の結末を捻じ曲げようとする点において、呪いと祈りとは、同じことだと思います。 このため、気に食わずに新たに始めたREが、また別のBADを招いてしまうのも必然です。 しかし、それにひるまずに、世界を変える意志を持ち続ける姿には励まされるものがあります。 「RE」は、ノートの扱いで大きく2ルートに分かれますが、ノートを渡す行為を是とし、それが物語の前提であるとする点も素晴らしかったです。 badの結末を導く恐れがあったとしても、物語が始まることをまず良しとする態度が好きです。 見てはいけないものを見てしまうと、有機物も無機物の境も消え、生と死の意味も消えていってしまうので、その点でも、せいらはほどよい位置にいて適任者です。 後半から終盤にかけて、複雑に絡み合った関係が、救済に向けて収束していく様子はすごかったです。 ポイントとなるのが外部からの介入なわけで、これによって物語が良い方向へ向かうという価値観が好きです。 外部からの介入を受けることは決して悪いものではなく、決して自己の放棄を意味するものではないと思います。 それは介入を受け止めるだけの自分の強さを必要とするためです。 閉じた関係になるとbadになりがちであり、外部からの介入による気づきや、他者性を取り込むことによってhappyへと向かうことが多方面から描かれていました。 幸福とは何かとはという議論はあるものの、自己完結タイプの幸福はもろく、弱い面があることは否めません。 このため、他者の幸福を自己の幸福とするせいらがキーとなるのは理論的にも正しいです。 このゲームが理論面においても強固に組み上げられていることに感動します。 ある意味で最大の謎が「今までのどれにも似ていない文字と文法」で書かれたノートであると思いますが、僕の曲解では、物語が始まるきっかけとなるこのノートとは、作者とプレーヤーをつなぐこのゲームそのものであると感じました。 終盤の展開は複雑なもので、僕の読み込みがまだ足りておらず、もう一回プレイしてじっくり読み解いていかないといけないですが、あまりこればかり考えすぎると、別の次元を覗いてしまいそうな気もします。 発狂とは理論を失うことではなく、理論を突き詰めた結果なのだと思います。 もしかしたら、このゲームは、これをプレイする者は一度は精神に異常をきたすものなのかもしれません。 そうだとしたら、ワクワクします。

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  • 可惜夜のがんがら荘
    可惜夜のがんがら荘
    毎回楽しみにしているシリーズですが、今作も予想以上に面白かったです。 シリーズものは、見慣れたキャラたちの安心感と、今回はどんな舞台なんだろうというワクワク感があります。 薄暗いアパートを一部屋ずつ回っている雰囲気がすごかったです。 そして、導入部分の演出やゲームシステムの親切さなど、どんどん進化しているのが感じられます。 答えとなる単語が、どれも怖かったです。 謎を解いて一文字ずつ推測して考えていき、答えの単語が分かったとき、うわ・・・となる感覚は素晴らしいです。 いつもに比べて今回は脅かし要素が少な目だなと油断した瞬間、脅かしをくらい、叫びそうになりました。 完全に読まれているタイミングで不意打ちでした。 トゥルーまで辿り着けて、ほっとしました。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 俺と彼女と誰かと誰か
    俺と彼女と誰かと誰か
    ヤンデレ妹の不穏な魅力を感じながらプレイを始めましたが、どんどん深くなっていく世界観に引き込まれていきました。 文章がとても綺麗で、非常に読みやすかったです。 マルチエンド作品にもかかわらず、どこにも分岐がなく、どうしようかと思いましたが、何をすればいいかが分かったときは、キャラの心情とも一体化した感動がありました。 @ネタバレ開始 どのエンドも非常に印象的でした。 END3は「毎回同じことを言うのね」というあのセリフが、残酷極まりないがゆえに素晴らしいものでした。 END1は、タイトルの良さを感じさせてくれるものでした。 ノベルゲームは作者が作ったシナリオをプレーヤーが読むしかできないものであり、たとえマルチエンドであっても解放条件があれば必然的に作者が誘導するようになるわけですが、そうしたレールを逆手に取ったタイトルと結末で素晴らしかったです。 END2は「ジブン」かなと思ったりもしましたが結局自力では分からず、ヒントを見て到達しました。 END4の「この関係はよけいに残酷で。よけいに綺麗だった。」という一文が好きです。 記憶がすべて作り物であったとしても、あるいは、偽りであるがゆえに美しいとするその感覚は痺れるものがあります。 挿入される昔話が、とても寓意的で示唆的で皮肉にあふれており、崩壊する運命にあるバベルの塔を一つずつ積み上げているようでした。 たとえ破壊されることが前提となっていても、まずは創造をしなくてはならない。あるいは、創造をするためにはまずは破壊を行わなければならない。そんなことを感じさせてくれました。 ラストの強く生きていくスタンスには非常に感銘を受け、ロボットとの掛け合いにはくすりと笑わされるものがありました。 ああした絶望の果てにあるほんの小さな可笑しさを描けるというのはすごいです。生きるとはそういうことなんだと感じさせられます。

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  • テスト返し
    テスト返し
    カエルのシュールなイラストに、一体どんなゲームなのか、さっぱり分からないながらも始めましたが、タイトルの意味が明らかになるにつれ、引き込まれていきました。 @ネタバレ開始 どうしても満点をとれないもどかしさがつのり、行き詰りましたが、そこから状況が明らかになっていく展開は衝撃的でした。 過去を変えることはできないという救いのない状況でありながらも、前を向いて未来を変えていくことに勇気をもらえるものでした。 ラストの夕暮れの教室のシーンには感動です。

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  • キツネ耳つくも神に何故か付きっきりで看病される話
    キツネ耳つくも神に何故か付きっきりで看病される話
    可愛らしいイラストに目を惹かれ、ほのぼのラブコメ的な作品かと思ってプレイを始めました。 @ネタバレ開始 実際は、涙なしにはプレイできない感動的な物語でした。 タイトルの「何故か」の意味を何度も深く味わえました。 前日譚ではさらに話が深くなり、何気ない話などがすべて回収されて収束していくのは圧巻でした。 月を見上げながらのシーンは忘れられません。 ひとかけらであっても、という願いはとても胸を打ちました。 素敵な物語をありがとうございました。

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  • 紅い月の奇妙な路地裏
    紅い月の奇妙な路地裏
    不穏な雰囲気に魅了されてプレイを始めると、画面を飛ぶ蝶に驚かされました。 過酷な社会人生活に比べると、奇妙な路地裏はどことなく心地よいものに感じられます。 @ネタバレ開始 END2は衝撃展開で鏡に映った顔が恐ろしいものでした。 END3は二人がこっちを見ている構図が恐怖です。 END5の時には逃げることも必要であるという、優しいスタンスはほっとするものですし、戦うこともまた必要というメッセージも良かったです。 END4の後の生活が非常に気になるものだったので、ハロウィンでその後の後日談を見れて、とても良かったです。 ミニゲームもハロウィンの雰囲気たっぷりでした。 飾り付けされた部屋や、ハロウィン衣装も見れて、大満足です。

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  • 意味怖系ホラーゲーム
    意味怖系ホラーゲーム
    ドット絵で描かれる部屋をじっくり見て回るのがとても良かったです。 何が起こったのか、静かなBGMの中で、残された物から推測していくというのは、ハラハラするものでした。 @ネタバレ開始 そうした静かな探索パートと、真相が明らかになった際の動きのあるパートの対比が綺麗でした。 1つ目と2つ目にある不自然なまでのプレゼント、ともに友人が登場すること、ゲーム紹介文の括弧、そうした意味が分かった時の恐怖はとても良かったです。 スマホ画面であることをずっと前提にしていたので、アナザーエンドは驚きでした。

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  • おじさんと遊ぼう
    おじさんと遊ぼう
    癖の強いおじさん構文に圧倒されながらも、テンポの良い展開に楽しく、ときにドン引きながら面白くプレイできました。 @ネタバレ開始 結末の姿は衝撃的でした。 タイトルに見事に騙されました。

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  • pastERRORdown
    pastERRORdown
    淡い色遣いのドット絵の可愛らしさに魅力を感じてプレイしましたが、まさかのゲームシステムでした。 アイデアもすごいし、それをゲームシステムに落とし込んだのがすごいと思います。 初めて電話をかけたときは衝撃でした。 @ネタバレ開始 生半可な気持ちでプレイを始めたことを怒られ、何とか助けようと頑張り、理不尽な世界に対する抵抗のエンディングを見たときは、どうしようかと思いました。 間違えて全部を消してしまってやり直しになったりもしましたが、最終的に無事にたどり着けてほっとしました。 この世界に生きる者へのメッセージは、とても暖かく強い言葉でした。 おまけ部屋の二人のイラストを見れて、本当に良かったです。

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  • love laboratory
    love laboratory
    ゲーム開始直後、無機質なコンクリートの壁に輝くネオン、そして流れるBGMで、切ない感情が溢れかえります。 そして、動いている!という感動。少し横を向いたり、伏目がちになったり、すごく表情豊かです。手を動かす部分などもスムーズにつながっています。 @ネタバレ開始 バッドエンドは「そんなことはない、目が合っています」と叫びたくなるものでした。 トゥルーでは、あらかじめシナリオが用意されたゲームであることを前提にして、こんなに感動的な物語ができるんだと感情を揺さぶられるものでした。 そして、これをうまく逆手にとったハッピーエンドが鮮やかです。 タイトルの意味をかみしめながら、何度もプレイしたくなる素晴らしい作品です。

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