個人宇宙のレビューコレクション
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嘘のように、赤い空の下でとある研究所の屋上。記憶喪失の少年ユイは、夕方の時間に余命がわずかな少女セナと出会ったことにより始まる物語。選択肢はなく、約40分程度で完走しました。 「問の章」では、ユイとセナの出会いから仲良くなる流れが丁寧に描かれています。そして、「解の章」で、とある真実が判明します。「問の章」で散りばめられた伏線を、「解の章」で見事に回収しています。真実が分かった時は「ああ、そういうことか!」と納得してしまいました。 個人的に秀逸だと思ったのは、真実が判明する原因となった道具の部分です。また、ユイが生きる意味について答える場面のやり取りは、真実を知るとより一層心に迫るものがありました。未プレイの方は、ぜひ夕方の物語を読んでみてはいかがでしょうか。
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ブキヤ武器屋を訪れた主人公が、そこの主人の質問に答えていき、武器を選んでもらうゲーム。1周5分程度で武器をもらうことができます。質問はたくさんあり、用意されている武器も多様です。 主人との軽快な会話を楽しみつつ、いろんな武器を手に入れることができました。余談ですが、自分が最初に渡された武器は「ねこぱんち」でした。⋯⋯これで戦えるのかなあ(笑)。
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イヴの迷宮外の世界が存在しない館。主人公の少年トーマはそこで目を覚ますが、以前の記憶を失っていた。その直後、少女イヴと出会ったことにより始まる物語。全4ルート。40分程度で完走しました。ジャンルはホラーですが、いきなり驚かすような演出はありません。 冒頭からいきなりイヴは「私を殺しなさい」と言って、自身の首元にナイフを突き立てます。印象的なオープニングのおかげで、一気に作品の世界に入ることができました。その後はホラーにふさわしい展開や、いきなりバッドを迎える選択肢もありますが、トゥルーエンドはすっきりするような余韻がありました。2人の立ち絵・スチルも、とても綺麗で素敵でした⋯⋯!
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.「赤信号、待つか否か」をいきなり選択されることから始まる物語。全3ルート10分程度で完走しました。特定の選択肢を選ぶと、さらに3つの掌編を読むことができます。 現代社会で生きていく上で誰もが抱く感情を、身近な題材(赤信号・三角コーナーなど)で上手に表現しています。個人的にすごいと思ったのは、豊富にある心象風景的な背景イラストです。日常生活の中で鬱積した感情を、独特のシュールさを加えて描かれています。電車の中でシュノーケルを付けているイラストは、特に良いと感じました。 短いながらも印象に残る、独特の作品でした。未プレイの方はぜひやってみてはいかがでしょうか。
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隣人と和解せよ声を発せない子供ニアと会話をしていく物語。全7エンド、30分弱で読了しました。 とにかくニアの可愛らしさが魅力的な作品でした⋯⋯!えもふりの(イラストを立体的にさせる)技術を使用して、会話をせずとも自然な動きでニアの可愛らしさを表現しています。 また、複数の選択肢を選ぶことによってエンドが変わりますが、エンド毎に主人公とニアの関係性が大幅に変わります。1周の時間は短く、さらにUI・演出も丁寧に作られていますので、気軽に周回できると思います。未プレイの方はぜひ魅力的な子供との和解を試みてかいかがでしょうか。
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ラウの王冠人の負の感情に憑依する存在「悪心者」。それを退治するための人間「悪心者祓い」を養成する学校を舞台にした物語。選択肢はなく、3時間半程度で読了しました。 ストーリーはまさに王道の少年漫画のような感じで、主人公のラウを中心に多くの個性的な少年少女たちが登場します。基本的には悪心者とのバトル、登場人物たちの学園生活で物語は動いていきます。また、現実世界でも議論されているジェンダー的な問題を取り上げており、ラウはそれが原因で度々苦悩してしまいます。特に病院の場面は辛いものがありました。 しかし、友人たちとの交流を持ったことにより、ラウの心境にもどんどん変化が訪れます。特に後半の場面でラウが周りの人間のために力を使うと断言したときは、確かな成長を感じ取れて痺れました。個人的に好きなのは真希です。自分の容姿を自覚しつつ、信念を貫いている部分には好感が持てました。 また、立ち絵が豊富に揃えられており、私服・制服・戦闘服などキャラクターがバリエーション豊かに衣装チェンジしていきます(サブキャラまでしっかりと用意されている徹底ぶりです)。さらに、重要な場面では漫画的なスチルが挿入され、効果的に登場人物たちの感情を引き立てており、この演出は本当にすごいと思いました。未プレイの方はぜひやってみてはいかがでしょうか。
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かなりあは唄わず夜の世界で生きているカナリアのウナ・ドゥオ・トリアたちの物語。15分程度で読了しました。基本的には画面のイラストをクリックして表示されるセリフを読みつつ、左下にある矢印で次のページに進んでいく構成になってます。まさに、動く絵本を読んでいるような感覚でした。 キラキラとした感じの世界観なので、最初は穏やかに進んでいくのかなと思いましたが、ドゥオに異変が起きてから、どんどん不穏な方向に流れていきます。多くが語られるわけではありませんので、いろいろな考察ができそうな内容だと思いました。美しさと同時に、言葉にできない物悲しい余韻を残してくれる不思議な作品でした。
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たまゆらの夜自分以外に誰もいなくなってしまった夜の世界。そこで漫然と生きていた主人公の青年・響は、散歩でやってきた神社で少女の姿をした神様・タマと出会う。そこから始まる物語。選択肢はなく1時間程度で読了しました。また、この作品はサウンドノベルの形式です。 主人公の響は孤独を愛し、人を嫌い、そしてそんな思考に陥ってしまう自分自身も嫌っています(でも、完全に人を突き放すことはできません)。物語の前半はその思考をベースにした心理描写が多く、個人的には共感しかありませんでした。 そんな性格の響ですが、夜の世界で出会ったタマとの交流によって、徐々に考え方に変化が起こります。一緒に楽しんだり(Tシャツの場面は笑ってしまいました)、時には衝突を起こしたりしますが、その部分を丁寧に描写したことによって、終盤のシーンは心が揺さぶられるものがありました。 バックで流れる静かで幻想的な音楽もマッチしており、夜の世界をさらに引き立たせていると感じました。また、オープニング演出も凝っていて素晴らしかったです。未プレイの方は、ぜひ夜の物語を味わってみてはいかがでしょうか。
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再会はエレベーターの中で主人公の裕二は高3の時、電車の中で出会った女子高生に恋をする。結局、彼女にその気持ちを伝えられないまま卒業してしまったが、1年後にエレベータの中で彼女と再会してしまう。そこから始まる短い恋の物語。約10分程度で読了しました。 ほろ苦いけど、どこかすっきりとするような読後感を残す、素晴らしい短編でした。最初はギスギスした感じで裕二と彼女の会話が始まりますが、その内容もなかなか痛快で面白かったです。そこから自然な流れで本題へと入っていき、最後のシーンを迎えます。「待ってるだけじゃ何も始まらない」という言葉は、じんわりと響くものがありました。短い時間ですが大きな余韻を残す物語でしたので、未プレイの方はぜひやってみてはいかがでしょうか。
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Giggle。ひそひそいろんなタイプの「怖い」作品が収められた、フルボイスのホラー掌編集。おまけの話も含めて20分程度で完走しました。おまけの部分は”イヤホン(もしくはヘッドホン)推奨”です。 その後の展開を想像するだけでゾッとする話、ストレートに恐怖を感じる話など、短いながらも多様な怖さを感じることができました。声も演技も全て素晴らしかったです。 個人的には「私は彼女の、彼女は私の背中を押した」が好きです。とあるメジャーな怪談をちょっと逆手に取った導入で、すぐ物語に入り込めましたし、オチもいろんな考察ができてしまいそうな余韻がありました。短い時間で終わりますので、未プレイの方はぜひやってみてはいかがでしょうか。最後にもう一度だけ言ってしまいますが、おまけの部分は”イヤホン(もしくはヘッドホン)推奨”です。