浦田一香のレビューコレクション
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未完の後悔後悔に向き合って前に進む、というお話です。 誰にでも、後悔していることってあると思います。 その向き合い方を教えてくれる作品です。 嫌なことや、嫌な自分と向き合ったとき 自暴自棄になってしまったり 周りに当たってしまうことも 時にはあると思います。 ですが、周りの人が全て敵になることなんてないですし きっと、自分が塞ぎ込まずに周りを見渡せば 優しい人や後押ししてくれる人がいます。 宥君には写真部の仲間や竹中君など とても頼りになる人がいます。 だから、きっとこれか後悔することがあっても きちんと向き合えます。 もちろん、宥君以外の登場人物も、なんならこの作品をプレイした人も。 作品全体を通して感じたのは 「優しさ」ですね。 優しい人が多く登場します。 そして、時にその優しさが空回りしてしまうことも あるけれど、諦めない。 諦めないことも含めて、優しさなのかな と思いました。 後悔してる人、何かから逃げた人。 そんな人に刺さる物語だと思います。 あとがきも含めこの作品が好きです。
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Please call me…?高校生同士の会話劇がメインの内容です。 その会話が面白く、さらにとても上手だと思いました。 英語のジョークがあるのですが、 私のような英語が苦手な人のために、和訳解説も 付いているので安心です。 さらに、冒頭のジョークが最後の展開に生きてくる。 短い話ですが、よく考えられていると思いました。 物語が終った後の展開も気になりますね。 田中と櫛田がどのような関係になっていくのか 妄想が膨らみます。 田中が夜空を見上げて感想を言うシーンがあるのですが、 それが田中の言うとおり嘘の感想なのか 実は本当の感想なのか、思春期の 不安定な心を表しているように思いました。 受験目前にあのようなことになっても 前向きに考え、ジョークを交える田中は 本当に良いキャラしてますね。 良い作品でした。
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初恋は年齢天秤の中でとてもよくできた、すごいシナリオだと思いました。 そして、シナリオの構成力だけでなく シナリオから伝わるメッセージも素晴らしいと思います。 肉体だけ成長しても、心や中身が伴わなければ意味がない。 そのようなメッセージを受け取りました。 また、一人一人のキャラクターが とても丁寧に描かれており 自分の中の嫌な部分にもしっかり向き合って 成長していく様子は読んでいて とても良かったです。 二人の天秤は対等になりました。 そんな二人の幸せを願っています。
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超朝が弱い僕を起こしてくださいまず、アイディアがとても良かったと思います。 思いついてもなかなかできることではありません。 賞賛を贈りたいと思います。 登場するキャラクターは全員、優真のことが好きで 羨ましくなりますね。 UIなども凝っていて、見やすく使いやすかったです。
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Candy Box絵に惹かれてプレイしました。 ネックレス、ネイル、ピアスと ノベルゲームではあまり見ないヒロインに驚きつつ、 読み進めていきました。 ヒロイン(名前不明)はあけすけというか性や恋愛に関して とても手慣れている感じで、主人公である徹を振り回します。 その関係は恋人というより、友達に近い不思議な関係です。 とはいえ、恋人ではないのにセックスをします。 その関係性も魅力的でした。 歳を重ねた人からすれば、ふしだらな関係と言えるかもしれません。 ですが、この一種の危うい関係も 若い内にしかできないのかな、とも思いました。 終始明るい彼女ですが、過去に暗いものを抱えており 彼女自身も人間関係で悩み、苦しんでいたのかなと思いましたね。 だからこそ、徹を手助けしたり導いてくれたのかもしれません。 いずれにせよ、徹は彼女と出会うことで変りました。 もっと深く知り合っていれば、違う未来もあったのかも、 と思いました。 読み終わったあとに、いろいろ考えさせられました。 深い物語だと思います。 文章が上手だと思いましたね。 小説を読むような感じで読めました。 落ち着いた文章だと思います。 BGMはさわかやなものと、シリアスなピアノ曲がありました。 どちらも好きです。 最後に気になった点として、 漢字とそれ以外でフォントが違うみたいですね。 おそらく、明朝とゴシックが混ざっているので、 読みにくいと感じる方もいるかもしれません。 (win版をDLしてプレイしました) サムネイルではそうなっていないので、 私の環境のせいかもしれません。 いろいろ書きましたがおすすめです。 砂糖菓子のように甘く、そしてほろ苦い 人間模様を読みたい方はぜひプレイしてみてください。
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キズアトモヨウ実際の双子や姉妹・兄弟も、こういうことを 考えたり、生きづらさを抱えているのかな と考えさせられました。 最後の「終章リノン」の仕掛けは驚きました。 さすがですね。 ノが赤いのも理由があったんですね。 (最後の演出を見る前は、ただのひぐらしオマージュ だと思っていました) 蓮二が主人公ではありますが、 私は理音と凛のための物語であるように思いました。 姉妹の絆を一番書きたかったのだと思います。 お互いを思いやる姉妹っていいですね。 一つだけ難点を書くとするならば 理音と凛のキャラは立っていたのですが 蓮二が薄いというか、目立ってないように感じました。 ただ、私はこの物語は姉妹の物語だと思うので そこまで不満には思いません。 過去の回想が何回か出てきますが、 かくれんぼの入れ替わりのエピソードが好きですね。 切ない……。 いろいろ書きましたが、おすすめです。 ぜひ、理音と凛の関係性やタイトルの意味に 注目しながら読み進めてみてください。
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せめて、笑ってくれたなら。一人の少女の自殺を巡る、様々な登場人物のお話です。 この物語では多くの登場人物の想いが交錯します。 主要登場人物全員、優しく善人なんですよね。 ですが世界は時に残酷で、そういった人たちの 心を折るようなひどい仕打ちをしてきます。 それでも生きていく。 遺された人は向こう側に行ってしまった人の 想いを継いでいく。 今までそういった命のリレーが脈々と繋がってきました。 どうかこの物語に触れて、生きることについて真剣に考えて欲しいです。 そしてつらいときは、この物語を思い出して欲しいです。 この作品では、様々な専門知識が出てきます。 作者の方が時間を掛け、緻密に調べ上げたのが伝わってきました。 確かな知識に裏付けされた物語です。 BGMはピアノメインのものが多いです。 好きなBGMは 恋歌 ふわりと甘い休息 泡沫、幸福の残像~Ver.piano 2時間46分咲く白銀の華~ピアノソロヴァージョン~ 人狼のための子守唄 旅立ち 未来の話 流れ星に祈りの詩を~ピアノソロバージョン~ 想いが形づくるモノ Ocean Blue この10曲です。 作者の方がピアノにこだわりがあるのは、 BGMの選曲もそうですが、シナリオ全体 特に奏恵編を読んでいて伝わってきました。 登場人物の様々な設定が出てきたり 時系列が過去や現在に行ったり来たりするので ぜひメモを取りながらプレイしてください。 非常に良い作品ですが……。 さよなら世界、さよなら私。編で 1ページ分の文章がクリック待ちではなく ウェイトで表示されるので 自分のペースで読めません。 選択肢があるので、スキップで再読しても 所々ウェイトが挟まります。 この演出も短い間だけ使うならありだと思いますが さよなら世界、さよなら私。編だけで30分くらいあるので ストレスを感じました。 ノベルゲームはテレビや映画と違い、 自分のペースで進められるのが利点だと思います。 いろいろと書きましたが、私が今回のティラノフェスで プレイした作品の中で一番良かった作品です。 最優秀賞を取って欲しいです!
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片思いの幼なじみとクリスマスデートすることになったんだが2~30分ほどで読み終わりました。 いい話でした。 大きく驚いたりするような展開はありませんが 心にじんわりと染み入るような話だと思います。 ネタバレになるので詳しく書けませんが 由香里が自分のことを嘆いておらず、 「俺」のことを心配していたのは 胸を打たれました。 強くて良い子なんだなあと思いましたね。 室内と外で服装が変わるのが細かくて良かったと思います。 絵も可愛いですし、BGMも良かったです。 不満点というか、改善したほうがいいなあ と思う点は テキストウィンドウの透明度が若干高いので 背景が黒っぽいと文字が 読みにくいところがいくつかありました。 (文字の縁取りもないので) あと、「俺」に名前をあげてもいいいんじゃないかと 思いましたね。 そして由香里にあだ名で呼ばせると 幼馴染み感がアップするように思います。 まあこのへんは好みの問題ですが。 それと終わり方があっさりだったので スタッフロールを流したり何か欲しかったですね。 いろいろ書きましたが、この作品好きです。 次回作などあれば期待しています。
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嘘のように、赤い空の下で真相がわかったとき、ユイがどうするか 少しハラハラしながら読み進めましたが 良い終わり方だったと思います。 場所は学校ではありませんが 二人が過ごした時間は 二人にとって本当の青春だったのだと思います。 伏線の回収は他の作品同様驚きました。 また、トリックだけでなく 一つ一つのセリフなどにも気を配って 丁寧に作られていることが伝わってきました。 BGMの選曲も好きです。
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ある日、男の娘に告白されたら男の娘は特別好きではないですが、 絵に惹かれてプレイしました。 全てのエンディングを見終えて、 男の娘というものについて考えさせられました。 ヒロインである雨宮いおんはいわゆるトランスジェンダーであり、 mtf(male to female)というくくりになると思いますが いおんの性別や性的指向に対する苦悩がよく描けていたと思います。 男の娘という、漫画的表現を使いつつも 「同性婚は日本では認められていない」という一文や 性別適合手術を行ったり、トランスジェンダーの方の 恋愛に関して現実的な問題として扱っているように感じました。 主人公である優も、展開によっては 「いくら好きでも自分の気持ちを押しつけるだけでは駄目」と 諭したりして、ただ惚れられたラッキーなモブではなく 人間としてしっかりとした考えを持っているように感じました。 私と同じように絵に惹かれてプレイする方や 男の娘というワードで惹かれてプレイする方が多いと思いますが 心は女性なのに体は男性として生まれた苦しみや、 普通に恋愛できない苦悩などに着目して読んでいって欲しいです。 シナリオ、グラフィック共に良かったです。 もし次回作・新作などがあれば、期待しています。