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天凱彼岸花(テンガイ ヒガンバナ)のレビューコレクション

  • モノクローム・モノローグ
    モノクローム・モノローグ
    感想が大変遅くなりましたが配信にてプレイさせていただきました。 AとB、2つの視点から情報を得ながら脱出を目指すというこれだけで面白そうと思える仕組み。 テレビ企画でも見る逃走ゲームをやってみたら、本物の鬼というべきか暴漢が出てきて命が危ないという状況。 実にスリル満点な状況ですね。 @ネタバレ開始 ◇A まずはAの視点から。 どうやら頭を負傷しており、表面的な出血こそないが腫れから内出血は起こしていそうな状態。 行けるなら早く病院へ…と思うも、そうもいかない状況という事が語られていく。 『ホテル到着直後は、大金を手にした自分を思い描いて胸を高鳴らせていた。それがどうしてこんなことになったんだ!』 この発言からゲーム参加者側だろうと思い込んでいましたが、視点が切り替わるまでの間にも後から考えれば充分おかしいと思える情報はありましたね。 何故、自分を殴った人物の顔をしっかりと見ていたのか。 B視点における情報と矛盾をしていたのに気づくのがかなり遅れたなぁとなりました。 改めて、今回の舞台の説明とばかりにされる振り返り。 ネットで参加者を集うアングラなイベント、知り合い同士の者もいるかもしれないがAの人物は一人で参加していた事。 場所は廃業した廃ホテルであり、ルール上腕時計やスマホは所持が禁止されている事。 隣の部屋からの物音に、誰かがいるのが判明し…勇気を出して壁を叩く場面で視点は切り替わり。 ◇B 一人称からこちらは女性のようですね。 暴漢…殺人鬼がいるのでみんな散り散りに逃げておりそれぞれの部屋に籠城をしていた。 先程Aの視点でもどこかの部屋に隠れていたという事からそこは事実なのだろうと把握。 Aの時には語れていないこのゲームの詳細な部分の説明も入ります。 参加者は一人10万円を持ち寄って、最後まで逃げた人がその賞金を手にできる。 Bをこのゲームに誘った人物からすれば、自分が上手く逃げ切れるかで大金を掴める確率を上げられる分宝くじより良いという見解をしていたようで。 これも今思えば命があってこその前提だったでしょう。 バスルームから出て、ベッドのある部屋に戻れば内装は先程A視点で見たのと似た内容。 部屋がどこかはさておき、ホテルの一室な以上そうなのだろうなとは思いましたが… ここ、気になって感想を書くに辺りセーブ&ロードで再確認をしましたがAとBでは似た一室かつ極めてモノクロに近いながらもBには僅かに色がついていたんですね。 全てを知ると、Aの視点ではモノクロの視野なのに納得はいきましたがB側でも僅かに茶系?が入っているか程度なので初見では違いに気づかなかったのも納得しました。 仕掛けを後で明かすという点でも、ここはかなり丁寧かつ巧い仕組みですね。 Bのモノローグに戻り。 その殺人鬼が参加者と捕獲者どちら側か?すらも不明だったと思えば、どうやら捕獲者側に紛れ込んでいると判明。 某テレビ企画のように、捕獲者の姿は黒ずくめでサングラスに皮手袋と一発で鬼なのがわかるもの。 しかし、この殺人鬼が紛れ込んでいる状況ではそれが全て裏目に出ている…犯行に向いているのが何とも皮肉な所。 Aの時には各自参加者には番号はあるとだけ判明していましたが、Bは「7」というのが確定。 そして、Aの視点と連動するかのように壁を叩く音が聞こえてくる。 壁の向こうから聞こえてきたのは男の声。 だけど、殺人鬼も体格からして男な以上今回は相手が男というだけで犯人の可能性が切れない状況。 とにかく、ここからやり取りを…と相手の番号を聞けば「5」という申告が。 互いの名前を知らない以上ここは番号で識別や自己紹介をするのが筋でしょうが…記憶を辿っても誰が何番なのかは思い出せない。 犯人かどうか?というド直球の質問をすれば状況が進展し、事件があった当時の記憶が回想される。 個人規模のゲームという事で、捕獲者は相手を捕まえた証拠としてカラーボールを相手にぶつける必要がある事。 一度に携帯できるのは1人1個なので、なくなったら補給所まで取りに戻るというルールがあった事。 当初、7番は自分を誘った8番と一緒に隠れていたところ3人の男性参加者と合流し会話をしている中で捕獲者に遭遇した。 前方2人、間に7番が1人、最後尾に2人という並びで逃げる中後ろにいた男性にボールが当たる音がし脱落が決定。 全力疾走に疲れたものの、これがゲームであり捕獲者がボールを補給に行く分余裕もある状況からか健闘をたたえる拍手が自然と起きていた。 本来ならここから捕獲者が一時撤退をするはずなのに、捕まる=命はないとばかりに殴られた蛍光色付きの男性。 凶器を構えた捕獲者を視認し、一斉に逃げ出す流れへ…。 その途中、8番の彼女は捕まってしまい7番はそれを見捨てて逃げるしかなかった。 これに関しては相手が凶器を持った男性という時点で危険しかないですし、仕方ないとはいえなかなかにショッキングでしょう。 回想が終わり、5番が今思えば…という事やその後得た情報を共有してくれる。 どうやら捕獲者全員が殺人鬼ではなく、あの凶器を持った人物の単独犯であろう事。 情報はありがたいものの、結局この自称5番が本当に犯人ではないという確信はない。 番号だって適当に名乗ればいいだけで、それこそ女性が持っている7と8以外なら成立してしまう。 何よりAの視点では番号が配れていたという情報のみで、彼の番号が何だったかは明かされていない。 状況的に、今壁の向こうにいるのはA視点の人物だと思えましたがそれだとせっかく2視点で語られる物語なのに捻りがない…。 確かに状況として類似している部分はあれど、100%と言い切るには無理がある。 物語としてAとBはずっと別行動をしており、部分的に確定情報を与えない事で犯人と合流し騙されるミスリードを狙っている? 真っ先に浮かんだのはこのルートでした。 だけど、誘導尋問は難しい。 となれば姿を確認するのが確実? 記憶によれば、犯人は180センチ以上はあるという日本人にしては珍しい長身である事。 それに途中で遭遇した3人の男性はそんなに長身ではなかった事。 とにかく、明らかに180センチある人物でないなら犯人でない事はほぼ信じられるでしょう。 そこで、相手にこちらのベランダに来てもらい窓越しに確認をする手段を取る事に。 「でも少し時間をください。少し頭がふらついていて……。慎重に行動したいので」 どうやら、自称5番は逃げる時に頭を殴られたらしくまだそのせいで体調がすぐれない様子。 これもA視点であった情報と一致するので、やはりAなのか?と首は傾げ。 ◇A 少し時を巻き戻し、隣にいる誰かへコンタクトを取る場面へ。 どうやらAは5番であるようで、あの番号がまさかこんな時に使う事になるとは…という心境のよう。 そして、やはりベランダ越しに来るように言われ自分の姿を確認したいという流れへ。 まだ頭がクラクラしている…という発言から、やはり先程のB視点であった会話とも一致しているよな?と思いましたが。 なかなか無茶をいう、から始まるモノローグの一番後ろ。 この重い身体を引きずっていけっていうのか。という部分は後の展開を踏まえると…? 少し時間を、からの『僕は重い身体をひきずり始める』 跳躍する事の比喩だろうと思っていた発言ながらも『身体を放り投げる』という部分も… これは、意味が分かると怖い話…!! 嘘はついてない。嘘はないけど真相がわかった途端にぞわっとするのがまさしく意味怖のそれ!! 今回A視点の人物は信用できない語り手である以上、確かに全てを公平に情報として出す必要はなく。 Bとリンクすると思える部分を出しながら、重複する部分はくどくならないよう省略されているのだろうと勝手に脳内補完をしていた事。 …よく見れば、この時点で何故夜景はモノクロだったのか? そこに当初は何の疑問もありませんでしたね。 ◇B 白い影、シルエットから相手の身長が180もない事は確実。 そして合流したのはあの3人のうちの1人だった。 犯人でないと思えただけでも安堵はありますが、顔を知っている味方というのは何とも頼もしいですね! そして会話から、どうやら7番は少しでもカモフラージュができるようにと黒い服に着替えていたようです。 結果的に、犯人が複数犯でない以上無駄だったかもしれないと思っているようですが…この緊急事態の中でなかなか知恵が回っている印象ですね。 武器になる物はないか?という会話から超近距離限定ながら使えるボールペン。 折り畳みの日傘というゾンビサバイバルでも実は使える武器として一部では定評のある物があると判明。 そして、中身が凍ったペットボトルをエコバッグに入れる事で振り回せる鈍器もできあがり。 いざ廊下に出るも、どうやら5番はかなり心身共に良くない状態の様子。 目もなんだか霞んでいるというと、それは情報を視覚から得にくいという点で結構危ないのでは? (恐らく、モノクロの夜景についてもこういう部分から無意識に納得を重ねたのかもしれません) そんな相手に隣のベランダまでジャンプさせるとか結構鬼畜な要望を出したな…? 下へ向かう手段として、エレベーターは動かす事で犯人に情報を与えかねない。 体調に不安のある5番はいても、非常階段を使った方がいいでしょう。 何より、エレベーターがこの階に到着したら中から犯人が出てきたとか笑えませんので。 そして、階段を利用してどんどん下の階へ。 その途中、7番は5番の事を犯人ではなくとも自分を利用しているのではないか?と疑い始め…。 共闘しようなんて嘘で、ただあたしを囮に逃げ延びようと思っているだけ。 いや、正直この状況で緊急手段としてそうなったとしても責められないのではないか? 仲間がいる方が有利というのは7番だって思っていたはず、何より自分が女であり体格の良い犯人相手には勝てないのだから。 実は自分こそが内心ではそう思っている事の裏返しではないのか? 状況が状況だけに、保身も含め疑心暗鬼になる事は仕方がない。 でも、すでに5番は言っているんですよね。 「犯人は、捕獲者だ。逃げても追いつかれる可能性が高い。それこそ誰かが犠牲にならなければ逃げきれないでしょう。さっきのように」 鬼の役をする時点で、ある程度身体能力の高い人物が選ばれている可能性は高い。 その上で、誰かが犠牲になる必要性はすでに階段へ行く前から述べている。 この犠牲というのが、5番と7番のどちらになるのか…はその時にならねばわからないとしても。 何より、事実として彼彼女らは5人で逃走した際に蛍光色の男性を共通で見捨てて逃げた。 7番だって親しかったはずの8番を見捨てて生き延びている。 我が身が可愛いのなんて、今更なのになぁと…。 それでもようやくホール上の階段まで移動は成功。 もうここまでくれば囮も何もない、一気に走り出せば途中で身体に走る衝撃と痛み。 どうやら走った事で結果的に頭を狙われていたけど腹を殴られる結果になった様子。 内臓へのダメージも怖いですが、頭なら一発で気絶か最悪即死なだけマズイながらマシな方を引き当てたというべきか…。 そんなピンチの中、5番がペットボトル鈍器で助けてくれた事により形勢逆転。 これまでの理不尽への怒りと言わんばかりに日傘を使って殴る!殴る! しかし、それでもまだ死んでもなければ気絶もしていない犯人は5番の方へ行き彼を人質としてエレベーターへ…。 5番の事は心配ながらも、まずは外に出て通報しなければならないとここで視点終了。 ◇A ベランダでシルエットの確認をしてから鍵を開けてもらう場面へ。 また随分と巻き戻ったな?と思うも、先程までのB視点がかなり長かった以上仕方ないのかと思えば… 良かった。これでようやく。ようやく仲間を―― ――仕留められる。 ちょっと待って、私の知ってる流れと違う!? 5番は確かにいた。5番はA視点の人物の前に立たされており、手足を縛られ猿ぐつわをされている。 隣の部屋の人間はシルエットからそれを判断材料としたのでどんな状態なのかまで見ずに鍵を開けてしまった。 そして、隣の部屋にいたのは6番…? あいつじゃなければ恐怖はない、という言葉も謎でしたがこれは完全に騙されたというしかない。 最後にニュース画面が映され、どうやら犯人は逮捕されたもののかなりの犠牲者が出た事が判明。 まだ謎が残るものの、それは真相がわかる視点から全て語られるようで…。 ◇B(ビフォー) ここからは犯人視点という事で、明確に今までぼかされていた部分も語れるようですね。 今までの情報通り、犯人は捕獲者としてこのゲームに関わっていた事。 本来なら逃走者として参加をしたかった位に金に困っている状況だった。 が、Bの視点で語れているように賞金は各自で10万ずつ持ち寄り×人数に応じてとなる以上最低でもその金額を出せなければならない。 さらに実は別途事前のエントリー料まで必要という、参加するにはかなりの金額が必要だったという事実が判明。 B視点では友人の紹介という形だったので参加をできただけで、本来なら紹介者がいない場合はまず参加すら困難な倍率だった事。 そして現実の鬼ごっこもですが、やはり鬼の役は人気もなくほぼボランティアのような状態だった分こちらでなら参加は簡単なようで。 「賞金を盗む」そのプランを思いついた事でこの犯人は本来なら断ろうと思った捕獲者としてエントリーをする事に。 やはり、鬼として必要な身体能力はあるようでその条件はクリアしていたようです。 個人のアングラな企画なせいか、大金が絡む割には結構ずさんな管理体制。 犯罪というリスクを取る以上できるだけ身元に繋がる情報は残したくないと思うもこちらへ話しかけてくる他の捕獲者。 前回では10人中8人を捕まえたという武勇伝も合わせ彼にとっては、承認欲求半分の小遣い稼ぎ半分であろう事には同意します。 というか、こういうアングラなゲームを道楽として楽しめている時点で色々察する部分はあり。 まずは隠しておいた武器を手にし、ゲームマスターへと接近を。 嘘の理由から賞金の置いてある13階の一室へ入り、金属バットを振り下ろす。 足がつかないようにする為には、どのみち顔を知っているゲームマスターを口封じする選択しかなかったようですね。 そのまま、冷静に考えれば部屋の鍵をかけておくのが良かったでしょうがそんな余裕もないまま賞金を手に入れる事に成功。 100万円は僕にとって大金だったが「意外に薄い」と感じた。本当に、この薄さに人生を変える力があるんだろうか? ここの一文がなかなか印象的と言えます。 一般的に100万円は大金という認識で良いと思いますし、一部の裕福層でなければ当然の感性でしょう。 しかし、いざ厚みとして認識するとそれを薄いと感じた事。 100万円そのものは大金であっても、正直殺人というリスクを犯してまで人生を変えるだけの力があるかと言えばNOでしょうから。 これが3億円とかなら、まだわかるものの…。 その薄さの為に人生を狂わせる価値は本当にあるのか? そして、やはりというべきか鍵以前にドアが開けっぱなしだったせいで見つかってしまう犯人。 気が焦っていたにしてもあまりに迂闊…! 本来ならスマホという個人情報の塊も証拠になる以上回収しておきたかったと思いながら二人目の犠牲者を出した犯人は逃走へ。 まだ事件の事を知る人物が限られる以上、一旦冷静にゲームにおける振る舞いを演じていれば問題はないはず。 10階を移動していると誰かの話し声が聞こえ、耳をすましてみると…。 …これは完全に、犯人にとっては地雷でしょうね。 というより、大半の貧困及び庶民層を敵に回したな?という感性というべきか。 「賞金ったってたかだ100万だし」 その100万円の為に殺人までした犯人にとってはなかなかキツイ発言でしょう。 そもそも、100万円をたかがと言えるなんて時点でこの金額ははした金と言えるという意味でもあり。 実際に犯人がそうだったように、100万円を喜ぶような貧乏人はそもそもこのゲームに参加しないという事。 だって、エントリー料に自腹である賞金の一部となる10万円を出せる事が前提なのだから。 それができないから仕方なく捕獲者として窃盗をするという事を選択したのに…。 思わず背後の金属バットにのびる手、その為に自分は手を汚したのに世の中にはこのゲームを紳士淑女のゲームだと笑っている奴らがいる。 自分のような貧困層を嘲笑っている奴らへの怒り。 まだこのゲームが安全な物だと思っている逃走者を追いかけ、まずは立ち止まらせる手段としてカラーボールを投げつける。 Bの視点ではこの時に起きた拍手はある種の一体感から生まれた、ゲームを楽しむ物としての事だったのでしょう。 しかし犯人からすればそこに漂うのは生温い空気、今そこにある殺意に気づかない者達へ向けられた感情。 そして8番の女性は襲われどんどんと減っていく逃走者達。 廊下を曲がろうとした際に出会った、同じく捕獲者として雇われた人物に凶器を手にした姿を見つかり仕留めようとするも逃げられる。 それからバットを手に走り続ければ見つけたのは先程の捕獲者でなくバラバラに逃げたのであろう逃走者だった。 逃走者を捕まえもせずに先に逃げるなんてな もうこの時点で鬼から逃げるというゲームは現実となり、そして逆に犯人にとってはゲームとなってしまった事を示唆する文面として秀逸でしょう。 その後、逃走者に殴りかかるも反撃として突き飛ばされポケットから落ちる紙幣。 本来の目的は金を、100万円を手に入れる事。 それを達成したにも関わらず、この場から逃走をせずに、通報をされるかもしれないというリスクを背負いながら感情のままに追いかけている状況。 非常階段から一階を目指すも事情を知らない逃走者10番に二階への扉へ鍵をかけられた事で犯人はエレベーターへ向かう事となる。 後になってみるとB視点でエレベーターが反応をしなかったのもこの時点と交差していたのかもしれませんね。 そしてB視点で謎だった、何故殺人を犯した犯人の方が瞳を濡らしていたのか。 それは7番の形相が彼の母親に酷似していたからだった。 彼のずっといっていた『あいつ』は母親を連想させる7番の事だった事が判明した際、線が一本に繋がる感覚がありました。 やがて物語冒頭のAの視点に続くように事は進み… ◇A(アフター) 物語は5番と呼ばれた男の視点へ。 その正体はフリーライターであり、今回も記事のネタとして潜入取材をしていたという事。 ありもしない「安心安全保証付き」のスリルとサスペンスを求めた結果が現状を生んでしまったという事。 今思うと、そんなゲームに参加する人間の本音を引き出す為に彼は虎の尾を踏む事になってしまったのでしょう。 まだ彼はあちら側の人間でないとわかる描写として、犯人を殴った際に正当防衛とはいえ自分が人の命を奪う可能性にぞっとした事は気に留めておきたい点。 そして事前に語られていたA視点の空白を埋めるように5番の視界を通じて伝えられる状況。 よりにもよって自分と共に貧困層を嘲笑していた6番が自室に戻ってきてしまった。 そしてその物音は犯人の耳にもしっかり届いており、物語の輪郭から内部を埋めていくように語られていく流れ。 ここで犯人は5番を騙り隣のベランダへと移っていく所までありありと想像ができてしまいました。 「窓の下だ。何色が見える?」 そしてこの発言でようやく犯人には色がわからないという事が判明し、タイトルにあるモノクローム(単色)という部分が回収されましたね。 後日談として語られる犯人の素性。 やはり彼は母親から虐待を受けており、7番を怖がっていたのもそれが全てだった。 凶器のチョイスで趣味の野球と誤魔化すつもりだったのもかつて野球部で活躍をしていたから出た発想だったのか。 そうして、殺意とは伝染するのか。 あの時の恐怖を知らない編集長は他人事として今回の潜入調査がいいネタになったと笑っているけれど5番にとってみればそれはあまりにも無神経すぎる言葉だった。 このままではこの場所でも殺人事件が起きてしまうのか?そう思えば開かれたカーテンから見えたのはヘチマの花だった。 もしも犯人の目にも、また色が射していたのなら? それは何かを変える事ができたのかはわからないとしても、色を希望等他の物の比喩とするのなら。 救いはあって欲しかったと思ってしまいますね。 @ネタバレ終了 物語の仕掛けにまんまとやられた事、サスペンスと言える状況の中で語られる現代でも起こるだろう問題。 色々と考えさせられるものがある作品でした。 それでは面白い作品をありがとうございました。

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  • 隣の世界の私のクラス
    隣の世界の私のクラス
    感想を書くのが大変遅くなりましたが配信にてプレイさせていただきました。 都市伝説を通して都市伝説を聞くという珍しい導入に、平行世界ではちょっとずつ違う内容となる馴染みのある都市伝説たち。 果たして良く知る都市伝説もどのような味付けをされてお出しされるのか、それをとても楽しみにしつつプレイさせていただきました。 @ネタバレ開始 まず、導入に関して主人公の美里ちゃんがオカルトマニアという事なのでとても自然な流れで鏡の向こうの自分とコンタクトを取り都市伝説を聞いていくという内容へ。 あらかじめお品書きはわかっていたので果たしてそれぞれの都市伝説が平行世界においてはどんな内容になっているのか? ここは上から順番に聞いていくのが恐らく楽しみやすい方法かな?という事で番号順に。 ◆怪人アンサー 事前にお品書きで名前が出ていた中でも知らない物だった事もあり軽い予習として、どんな怪異なのか調べました。 恐らく元の話が怪異として広まったのはガラケー時代でしょうか。 10人集まって10台の携帯電話で行う降霊術形式のもの。 厄介なのは、参加者のうち9人までは自分が知りたい内容をアンサーに質問しノーリスクで答えてもらえる事。 だけど10人目は逆にアンサーからの質問に答えられなければ体の一部を持っていかれる事。 誰がそんな役目をやりたがるのか?好奇心旺盛なタイプならともかく、確かにこれはいじめられっ子やアンサーについて知らない人に押し付けるのが安牌というのが嫌な所ですね…。 この話でメインになる奥田さんも普段からいじめられており、アンサーの事を知らないまま巻き込まれてしまう事で強制的に10人目の役割をする事になってしまう。 平行世界の美里ちゃんも同じように、一体だれがそんなリスクがあるのに10人目をやりたがるのか?という疑問を持ちながら「それって私個人の考え方なんだよね」 と不穏な方向で、闇のある方向で理解をしてしまうのも何とも生々しいです。 本来ならこういったオカルトネタは肝試し感覚で試しても何も起きないままというのが定石でしょうがそれでは話が進まない訳でして…。 この世界のアンサーは本来の世界と違い10人目が質問に答える事ができると9人が質問に答えてもらえるだけでなく願いを叶えてもらえるというハイリターンな事。 確かに成功した時のメリットこそ大きいですが、10人目が背負うデメリットは据え置きな以上それでも率先してやりたいと思える物ではないでしょう。 というかやろうとしている奴らがいたら力づくで止めたいですね、危険すぎて。 そしてアンサーへと繋がってしまった電話。 ここで2番目の子の質問に対し、自分なら宇宙人の存在の有無というもっと有意義な事を聞くと言っている辺り美里ちゃんはやっぱりオカルトが好きなんだなと。 普段からいじめられている、先生に注意してもらってもかえって状況は悪化してしまった奥田さん。 こんな状況でも自分がアンサーの質問に答えられなければみんなの願いが叶わずどんな目に遭うのかと不安がる奥田さん。 そしてとうとう知ってしまった真相、最悪の場合自分の体の一部を失う生贄に指名されてしまう流れにまでなっていた奥田さん。 どうして、いつも、私ばかりが? 彼女の気持ちを思えば自分の扱いが軽視されている、人権も何もないだけでも大概な訳で黒い感情が溢れるのも当然でしょう。 問題であるアンサーからの質問は何が聞かれるのか事前にわからないので、私も難しい知識が求められたり理不尽な謎かけのような内容かとばかり思っていましたが……。 ここで予想外と言える質問内容だった事がなかなか良いパンチでしたね。 てっきり答える事には成功してもその後みんなの願いを叶える場面で他の参加者を皆★殺★し、にでもしてくれと願う展開はありそうだと思っていたので一手先に持ってきたか!?と。 それと同時にみんなに消えて欲しいと願う奥田さんの気持ちを思うとまたいたたまれないものがあります。 しかもこの願いの恐ろしい所は、殺して欲しいでなく消して欲しいという要望なのでこれは存在が完全消滅して死んでいるのと変わらないのか。 見えていないだけで実はまだ生きているある意味死ぬより辛い状態なのか。 そこもアンサー側の匙加減なので想像の余地があるのがいいです。 そしてアンサーの力とはいえいじめっ子たちを消す事に成功した奥田さんは明らかに歪みを抱えてしまった。 かすかに見えた口角が上がった様子は、学校に到着しクラスにいじめっ子がいない事で『あれは本当だったんだ』と現実味が出た事もあったのかなと。 結果として、奥田さんは生存した。 けど、本当ならこんな方法でなくもっと早く助けてあげるべきだったのではないか。 もう一人の私の後悔を聴き、そして翌日行動に移した主人公とそこから良い方向へ回り始める状況。 もし主人公が止めに行かなかったら、こちらの世界のアンサーは害しかないから奥田さんは犠牲になるだけでいじめっ子たちに制裁もないひたすら後味の悪い終わりになったでしょうね。 主人公がオカルトマニアという設定だからこそ助ける事ができた流れも含めここの救済はとても良かったです。 一枚絵であった奥田さんの笑顔を見ると、これが正解だったんだろうなとなりましたね。 怪人アンサーに関する話としてのまとまりも素敵なのですが、話終わった「私」が語るように平行世界は無数にある事。 次もまた「私」につながる確証はないという事。 ここに刹那的な味わいがあります。 主人公である「私」はずっと同じ私だとしても向こうの世界の「私」は次はいつに会えるのだろうかと。 ◆NNN臨時放送 初手のアンサーが10人目に質問をするまでは同じでも、それに成功した場合メリットがあるという違いがあったので他の都市伝説も何かしら違いはあると思いましたが…。 これが怪異の現代化なのか……。 本来ならテレビで流れるはずの臨時放送はスマホの広告という媒体で目にする怪異となっていた。 それ以外は基本同じ内容という点では、これが平行世界らしい明確な違いとして大きく出たなぁと思える話でしたね。 ただ、深夜のテレビで見る事になる本家と違ってスマホの広告という誰でも手軽にいつでも見る可能性がある場所になってしまった点はかなり極悪になっているというのがやばいの一言。 最初に真穂ちゃんが目撃した際も恐らくは本家と近い時間帯だったのでしょう。 それ以外の時間にスマホを触っていても見る事がなかったという辺りより。 スマホ依存症ともいえる彼女だからこそ遭遇率も高かった、というのも説得力はありますし最初は知らない人の名前だけだったであろう状況からもはや臨時放送を見ても珍しくなくなってきたという弛緩の段階で親戚の名前が出てしまい実際に死を知る流れは恐怖の緩急としてとても良かったです。 そしてスマホを持っていればいつ臨時放送を見る事になるかがわからないのに、元々酷い依存症だったせいで手放す事ができない。 見たくないけど手放せない距離感。 ここが絶妙な生々しさというのか、習慣は簡単に変えられない場面で人間の特徴を良く表現しているなと感心いたしました。 通話をしていれば広告を見る事がないはずとずっと通話をしていても割り込んでくる臨時放送。 そして、やがてスマホを見る事がなくなりマナーモードにより鳴っている事がわかっていても無視をするようになっていく真穂ちゃん。 この間にも彼女の知る相手が次々死んでいくという状況で精神も擦り減って行ったであろう中、ある日休日の2日間臨時放送が流れなかったと嬉しそうに報告を受ける場面へ。 それに今朝も流れなかったらしいのできっともう解放されたのか…これに懲りたらスマホも程々にしておくんだよ?という所へ収束するかと思いきや… “習慣は簡単に変えられない” 喉元過ぎれば熱さを忘れるとばかりに、もう大丈夫だと思ったのであろう彼女はまたスマホをじっと見るようになってしまった。 そして悪い事にその場所は駅で、電車を待つ場面。 …今思うと、彼女の親族等が犠牲になり彼女のスマホがずっと鳴り続けている時点でターゲットにされていたのでしょう。 序盤にあった緩急のように、一度臨時放送が流れないという安心できる状況を与えてからスマホに釘付けにさせるという流れ。 線路に落としたスマホを拾おうと飛び込んだ結果、電車に轢かれてしまい形が残っていたのは彼女のスマホのみ。 そこには真穂ちゃんの名前だけが羅列された臨時放送の画面が…。 現代らしいスマホ依存症という物、そして臨時放送の媒体を平行世界という事でスマホにする事で起きるコンボ。 元になっている怪異そのものはスマホが普及する以前からある内容でも、組み合わせ次第でこういった味付けができるというのはなかなか巧いなと思わせられる内容でした。 そして、こちらの世界では臨時放送はスマホでは流れないとしてもスマホ依存する真穂ちゃんを放置すれば何か悪い事が起きるかもしれない。 揉み合った際に落ちたスマホを拾おうとする真穂ちゃんが、道路に出て車に轢かれるオチがくるか?と警戒をしていましたがまさかの百合?エンドというギャグだけど誰も不幸になってないならいいな!!という〆へ。 基本、平行世界の私は怖い話をしてくれるけどその結果クラスメイトが酷い目にあっているのでこちらの世界ではちゃんと救われるのにほっとしましたね。 ◆猿夢 でも、さすがにこれは元々の話に逃げ道がない以上バッドエンド不可避では? さらにまずは恒例の、こちらの世界での猿夢の内容を説明すればまさかの猿が関係するという部分以外は全く違う内容という流れ? ここにきて流れが読めなくなってきたな?と変化球がきましたね。 どうやら平行世界での猿夢は学校で居眠りをした際に起きる学校の怪談という立ち位置のよう。 基本的に遭遇したら解決策がなさそうなのは本家と同じとは思いましたが、極悪度で言えばこれはこちらの方が圧倒的にえげつない…。 学校で居眠りをした際、黒板の前に立つ猿の頭をした先生。 その先生がクラス委員を決めると宣言し、指名された生徒はその委員に関連した状態でその日に死んでしまう。 確かに猿夢は自分の前に他の乗客が悲惨な死に方をしていくという流れですが、あれはあくまで夢の中だけに存在する登場人物。 実際に誰かが死んではいないはず。 だけどこの猿夢は夢で指名されたクラスメイトが本当に死んでしまうという以上、誰かの居眠りで学級崩壊どころの騒ぎじゃないという大惨事待ったなしの危険度ときた。 当初は猿夢の事を名前程度しか知らなかった真鍋君も最初の犠牲者が出た事からこれが猿夢か?と把握をしても夢の中では何の抵抗もできはしない。 せめて何かをしようと夢で指名されていた生徒に「帰りに気をつけて」と声をかけるのが精いっぱいで、それでも願いは届くはずもなく。 もう対策は居眠りをしない事だと必死に起きようとする真鍋君の流れもまた、人間の習慣とは簡単に変えられないの典型でありその中で足掻くしかない展開として素敵です。 これはやった事がある人ならわかりすぎるのですが、夜型の人間が簡単に生活リズムを変えられる訳がない。 寝なければいけないといくら焦っても睡魔は来ることがなく朝はやってきてしまう。 そして平行世界の主人公に相談をするも解決法を知らない以上助ける事もできぬまま。 ここのオカルトマニアとして内心とても興味深く話を聞いていたであろう私は今思えばある意味相当肝が据わってますね。 クラスメイトである以上、彼の居眠りで自分もいつ死ぬのかわからない対象であると思うと。 やがて猿夢は昼に寝なければいいだけにも関わらず、夢を見る事そのものが怖くなってしまい夜も眠れないまま過ごす事になっていく事へ。 寝なければ大丈夫と必死に起きようとするも気づけば世界は色褪せていた辺りで思わず「あぁ…」と内心察する物はありました。 ラストを見るに、真鍋君はその状態でも自分は起きているつもりだったのでしょう。 しかしいつまでも眠らないでいるなんて実際は不可能な訳で、一見すれば現実のような状態にも関わらず夢と同じようにクラス委員を決めると先生が宣言する状況がきてしまう。 そして呼ばれたのは自分の名前、任されたのは清掃委員。 目の前の先生は猿の頭をしていない。 だけどもう錯乱状態であったろう真鍋君は先生をカッターナイフで殺してしまった。 そして、先生はいなくなったはずなのに出てくる猿の頭をした先生。 再び、今度は猿の頭をした先生から清掃委員に指名をされた真鍋君は自分が汚した床を綺麗にする事に…。 ここから現実の真鍋君は身体は起きているのにまるで意識がないように何も反応を返さない状態になってしまう。 金縛りが頭は起きていても身体だけが眠っているなら、これはその逆の状態なのか。 意識だけは夢の中にあり続けながら生きている…それは猿夢を引き起こした張本人としての代償なのか。 ずっと終わらない夢の中で彼は清掃作業を続けているのでしょうね。 実際には事件が起きていない辺り、やはりカッターナイフを使用したあの時点ですでに夢の中だったのでしょう。 一見すれば普段通りなクラスの様子も、油断させる為の罠だったのか。 そして、話が終わりもう一人の私は真鍋君についてもう一点伝えようとしたところで時間切れへ。 それが何か不明なままだったせいで彼が別の何かに魅入られていないか話しかけようと思うもうまく話せないまま、ここは真鍋君から見れば思わせぶりな状態で授業が始まり。 とりあえずこちらの世界における猿夢があちらと違うとしても、彼が居眠りをするのは妨害した方がいいと気に掛ける流れへ。 ちょうど悪夢を見ていたところだったという言葉に心臓を掴まれるような思いをするのはどこかの世界にいる彼の末路を思えば当然でしょう。 例えこの世界では起こりえないとわかっていても。 結果、どうやら主人公が真鍋君の居眠りを妨害し続けたおかげで睡眠サイクルが治ったようで。 そのお礼として映画のチケットをもらう奇妙な事に。 もう一人の私が言おうとした内容と、話の本筋に入る前の反応から恐らく『真鍋君は美里ちゃんの事が好きである』という予想はできましたが今はまだチケットをプレゼントしても一緒に見に行こうと言えないそんな精一杯な青春エンドはなかなか甘酸っぱさがあり良かったです。 ◆隙間女 変化球の後は歴史の長い妖怪のような怪異のお話へ。 どうやら今度は大筋のテンプレと言える部分に相違はないようで細かい部分に違いがある程度のようですね。 隙間というとベッドの下の男のように、そこにある空間にもしも何かが潜んでいたら?という本能的な恐怖を刺激する部類に思えます。 ある意味珍しいパターンとして、これまで登場した平行世界のクラスメイトはこちらの世界と同じような立ち位置だった中で宇田川さんはクラス委員長かそうでないかの違いがあったという点。 言われてみれば平行世界(似ているけれどどこかが違う世界)な事を思えばここまで特に違いがなかったのが不思議だったのかもしれませんね。 クラス委員長をしてるだけあり真面目で優等生タイプ。 そして、几帳面であり神経質だからこそ隙間女と遭遇してしまったんだなと人物紹介の時点で察する物がありました。 家具の隙間なんて隙間女の出てくるテンプレのスポットですからね。 まず初めて遭遇したのはカーテンの隙間にいたという女の姿。 とはいえカーテンの外はアパートの廊下という事で偶然人が通りがかっただけかもしれない?と思える範囲。 しかし実際に女を見た宇田川さんからすればその女は窓にピッタリ張り付いていたという辺り不気味さは拭えませんね。 さらに後日、今度はロッカーと壁の間というさらに人がいる訳のない場所に女の姿を目撃してしまう。 神経質でつい女の顔がちらついていた宇田川さんにとってはかなりの衝撃だったでしょうね。 しかしここからが本当の恐怖の始まりとばかりに絶対に人がいないと言える場所に出てくる女の姿。 隙間女に一度ターゲットにされた人間がどうなるのか?言われてみれば考えた事も聞いた事もなかったのを思わされました。 この世界においてはどこまでも付きまとわれるという実害があるようですが…それだけで終わるものなのか。 やはりそれだけで終わる事もなく、まるで精神的な病とばかりに認識をされ先生にも学校を休むように促された宇田川さんは失踪してしまった。 だけどただの失踪とするには話が早すぎるというか、不自然な空白があり。 真相を知っているという辻君から聞かされた内容はこれまでのとは種類の違う壮絶さがありました。 すっかり容姿の変わり果てた姿、隙間女対策であろう部屋のあちこちに貼られたテープ。 さらに明らかになる隙間女の実害。 それは次第にこちらへ手を伸ばすようになった事。 一度手を掴まれ、その時は振りほどいたとの事ですがもしそれに失敗した場合どうなっていたのか。 それは話を読み進めるうちに判明してしまいましたね。 郵便物が届き、それを取り出そうとポストに手を伸ばせばそこには『隙間』ができる。 この話をしていた辻君もその際の凄惨な光景を思い出したのでしょう、嘔吐しながらも私の目を見て泣き出し訴えかけてくる。 宇田川はポストに引きずり込まれた。いなくなったんじゃないんだと。 物理的に人間が通れる隙間じゃない場所へ引っ張り込まれればそれはもう原形を留めるのも無理な話で、辻君の言う鉄が折れるような…それはきっと骨が軋んで体の部位が壊されていった音だったのでしょう。 宇田川さんはあちらの世界に連れていかれてしまった。 …気になる点としては、その荷物は偶発的な物だったのか。それともそれすら隙間女の罠だったのか。 もしも辻君が荷物の事を言わずにいれば彼はまだ生存できたのか?連れ去られた宇田川さんだけでなく辻君の視点から考えても別の恐怖や罪悪感がある状況に思えます。 さらに不幸があるとすれば、宇田川さんが連れ去られた現場を見た辻君が次のターゲットにされたであろう事。 隙間女は伝染する呪いのような怪異だったのか? あちらの私はそう解釈しているようで、もしかしたら次は自分が狙われる可能性もあるかもしれないと思っているようで…。 例え平行世界の別人だったとしても自分が襲われるというのは気持ちの良い話とは言えないでしょう。 今までは平行世界はいくつもあるからこそ『次に話せる私は違う私かもしれない』という刹那的良さを持った「また話せるといいね」という部分も命があればという枕詞がつきそうで。 そして6話目のあの分岐を見た後だと「いつ危険な目にあうか、わからないし」というのもごもっともすぎるのが今思えば伏線だったのかなぁとも。 話が終わり朝を迎え、掃除の時間になるまでまるでいつもと同じように流れていく日常。 果たしてこちらの世界の隙間女とあちらの世界の隙間女、そこにどんな違いがあるのだろうか。 ありえた可能性を平行世界というのならこちらにおける隙間女もターゲットにされたが最後、連れ去られるまで付きまとわれる事になるのかもしれない。 そんな中で見てしまった、掃除用具入れとロッカーの隙間にある隙間から見えた女の顔。 もし昨日話した私の言った通りに隙間女が伝染する怪異ならばそれは世界すらも関係がないというのか? 何て思えばまさかのポスター?ギャグオチですと!? まだここで恐怖と共に好奇心も天秤で揺れていた主人公も大概だとは思いましたが、そんな主人公を馬鹿にするように鼻で笑い去っていく宇田川さん。 現実なんて実際はこんなものと思いつつもタイミングが悪すぎる!! そして、その仕返しとばかりに今度はホラー映画のポスタートラップから宇田川さんを驚かせすっかりケンカ相手仲間のようになる流れはこれまで穏便に終わって行ったエンドたちの中でも異色と言えたでしょう。 たまにはこんな終わりもいいよね♪ ◆人面疽 個人的にこのラインナップの中ではどういう話に発展させるのか?が一番想像できなかった怪異ではあります。 しかし、平行世界では『アザの持ち主を乗っ取る怪異』という辺りそうきたか!となりました。 今回の平行世界の犠牲者…もとい、クラスメイトの石倉さんは家庭環境に問題のあるヤンキーという人物。 孤立しているからこそ『それ』にとっても都合の良い相手だったというのが後から読み直してもどうしてもっと早く誰かが寄り添えなかったのか。 心が痛むものがあります。 孤立した人間に、かわいそうだと言いながら『自分だけはお前の味方だ』と言いながら近寄ってくるモノ程怖い物はない。 個人的主観ですが典型的洗脳や詐欺といった手法のような不気味さが人面疽のうごめきよりも勝りました。 そしてこんな状況でも生活指導の先生は石倉さんの事を心配しているようで、話を聞く事で少しでも良い方向に持っていこうとしていた。 けれどもうその声も届かない状況にこれからなってしまうのが、また心の痛む点でしょう。 心配して話しかける先生に対しても「お前がウザいんだ」「先生っていう生き物は皆そうだ」と距離を離すように誘導をかけ、自分にだけ聞こえる声に動揺した石倉さんがその場から逃げ出せば人面疽はすっかり人の顔にまで成っていた。 そしてその顔が、目が、石倉さんを心底心配しているように見えた事で初めて誰かに心配をされたという安堵を感じてしまった…。 そこから石倉さんが抱えていた悩みや感情をアザにだけ打ち明けるようになっていく過程も、とても生々しさがあります。 平行世界の私も言っている通り、これは完全に詐欺や勧誘とか洗脳で見る奴だと。 その単語があった事を忘れていたにも関わらず同じ感想を持ったという辺りで、やはり人面疽の企みはその通りだったのだなと思わせるには充分でした。 人面疽も怪異とはいえアザに、傷にすぎない。 だからこそ、そのタイムリミットの間に狙った人間を乗っ取るように仕向けるのか。 それともあの治りかけて小さくなった姿すら頃合いを見てはかった演技だったのか。 本物の石倉さんはもうこの世にいないのに、同じ姿をした『石倉さん』は存在する事になってしまった。 もしも悩みを打ち明ける相手が違えば、もっと早くに彼が心から味方と思える人がいればこんな結末にはならなかったろうに。 だけど彼は『ぶら下がっていた』自分だけでは生きていけないと選択してしまった。 何より一番やるせないのは、人面疽に乗っ取られた後の方が楽しそうに生きているように見えるという事でしょう。 だからこそ主人公の世界にいる石倉さんが救われていく、主人公が理解者となるという流れには涙腺が熱くなりました。 主人公が伝えたい甘く見てはいけないケガというのは人面疽の一件から出ていると思うのですが、それは同時に心に負った傷の事を示唆しているようである事。 彼は誰からも放っておかれた、彼自身がそう思ってしまったせいで取り返しがつかない事になってしまった。 少なくとも平行世界の石倉さんは。 だけど、ひとりぼっちになる前に…治らなくなる前に手を打たなければいけない。 体も心も、両方のケガだって。 そして、最終的に石倉さんが教室にくるようになり家庭の問題も解決した際に主人公とピースサインをする場面は心底ほっとするものがありました。 男女のこんな友情のエンドもあってもいいものですね、これもまた青春だと思わされました。 ◆丑三つ時の鏡 言われてみれば灯台下暗しと言えるルートでした。 確かにこれまでの怪異が何かが違っているお話だったとすればそれはこの丑三つ時の鏡にも言える事でしょう。 となればその違いを知りたいのは主人公とプレイヤーどちらの心理としても共通といえるのですが… 「きみ、今日の晩ご飯はなんだった?」 鏡の向こうの私はこの怪異とは関係のない事ばかりを質問してくる。 こちらの環境がどうなのか、差異はあるのか、ある種の値踏みをするようにも感じる問答。 そして問いかけられる「今、幸せかな?」という問いかけからよぎったのはここで幸せと答える方が良くない事が起きるだろうという直感でした。 最後は気持ちよくハッピーエンドであろう方を回収したかったのでここはあえて初手に『幸せ』と答えましたね。 そうすれば予想通り、やはりこちらの環境を値踏みしていたのはあちらの世界における丑三つ時の鏡は『鏡の中の自分と入れ替われる』方法だったから。 今の自分が持っている幸せも当たり前もない私、何故同じ自分なのにきみは幸せなのかな?と問いかけ…もはやそれは私への言葉とだけ表現するにも違うような鬼気迫るもので。 このままあちらの世界と入れ替わってしまうなんて絶対に嫌だと何とか危機を脱するも、最後の場面を見るにまだ身の危険は去ったと言えず。 あれは平行世界の私でありながら、幸せになりたいと願い続けたもう一人の私。 関係ないと言い続けられるのもいつまでの事なのか……。 ◇幸せじゃない 日常に不満がないからといって幸せだと言い切れない。 きっと誰もがそんな言語化未満の気持ちを抱えながら生きている。 日常とは幸福と退屈の振り子だったか、そんな言葉をふと思い出しました。 こちらのルートでは丑三つ時の鏡に映るのはもう一人の自分か守護霊という事でしたが、私から見るとこれは先程の選択肢で『幸せ』を選んだ時以外に共通している事なのではないかなと思っています。 私自身を護ってくれる、寄りかかれる守護霊であると同時に私の周囲が少し幸せであるように助言をしてくれるもう一人の私。 それもまた守護霊の形なのかなと思えました。 実際に、もう一人の私から怪異についての話を聞いた結果(宇田川さんはまた別ベクトルでしたが)物事は良い方向へと進んでいった。 そして『私』の語る形が物語として正解なんだと思いつつもきっとそれだけではない何かがあってもいいんだと思っています。 物語で語られている部分に話を戻しまして 私が私の味方である事が何よりも心強いと言ったり、私の隣には必ず私がいるという表現。 これらは日常を生きる上で心に留めておきたい事だったり、優しさを感じる表現なんだなぁと思っております。 ◆感想総括 正直今まで作者様の作品は全て遊んできていたので今回もどんなホラーをどんな味付けで出されるか? どこで刺されるか?と期待8割身構え2割程度でいましたが蓋を開けてみれば本編である『私』から聞く怪異の話こそ恐ろしい物であってもその結末はどこか優しい世界でした。 それは平行世界の私から聞いた事が頭に残った結果引き起こされた、少し変わった未来だったりするのでしょうがその日を作り上げるのもまた守護霊でもある『私』の協力があってこそなのかなと。 話そのものはそれぞれ単発でどこから読んでも面白く読後感も基本ハッピーエンドで終わるので作中で行われているように日に1話を読み進めるも良く。 同時に他の話も気になって一気に読み進めたくなる力のある作品でした。 個人的になかなか刺されたのは怪人アンサーにおける奥田さんのどうして自分がこんな目に?という気持ちが爆発してからのみんなを消したいという願い。 人面疽の詐欺師の甘い言葉のような物であっても抜け出せずにぶら下がってしまった石倉さんの流れですね。 今回は平行世界という設定からここまで楽しめる作品を味わい尽くす事ができてとても満足の限りです。 @ネタバレ終了 今回も面白く、そして素晴らしい作品をありがとうございました。 またいつか『私』と会話をしてみたいと思います。

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  • 両国の漢(オトコ)
    両国の漢(オトコ)
    配信にてプレイさせていただきました。 相撲を題材とするゲームは珍しかったので、どんなゲームなのかとても興味深いというのが第一印象でしたね。 @ネタバレ開始 全体的に優しさしかない、優しさに包まれた世界。 それが総括をするなら欠かせないというのがまず第一の感想です。 >力士の名前が結構独特なので とあったので多少の事では動揺をしないぞ?と思っていましたが、飾光でシャンデリアはさすがに予想できませんでしたw しかし、親が子の将来やどんな風に育って欲しいか祈りを込めるようにこの名前にも親方から主人公の相撲人生に対する願いが込められていたのがわかるので本当に周囲の人に愛されていたという事がわかる良いしこ名だったんだなと思えます。 (問題は、光ちゃんって呼ぶ際に何て読めばいいか困った程度で) 相撲人生最後の日、今まで自分を包み込んでくれたベッドへの感謝や自分を支えてくれた周囲の人々への謙虚とも言える感謝の気持ち。 所々で主人公の人柄が滲み出ていて、確かにこれは沢山の人々に愛されるなぁという納得と今回で最後であるという一抹の寂しさが混じった感情になります。 小さな子供にとって容姿等の事を馬鹿にされるというのはとても心が痛む出来事である中、テレビの中で活躍する力士の姿を見てコンプレックスを好きな部分と言えるようになる。 そうやって自分にとってヒーローのような存在だった力士に憧れ自分も多くの人に感動を与えられるようになりたいと思ったというのは何と純粋で素敵な思いなのだろうと。 プレイ時は中学卒業後すぐという事で私も思わず当時の周囲の人のようにせめて高校は行かなくて大丈夫か?と心配になりましたが、そんな心配もいらない位相撲の稽古を通して心身ともに成長していった主人公を見ていると杞憂だったなぁと思えました。 まだ遊びたい年頃で精神的にも未熟さのある中、やはり四股踏みがいくら効果的な物でも単調できつい物である事から疎かになってしまったり、それでも親方の説教で考えを改め大好きな相撲で強くなる為に頑張る素直さ。 ここでもし叱ってもらえなかったら…と、この先にもたびたび入る回想の周囲への感謝は聴いているこちらの涙腺を刺激する物があります。 その大切さを理解できる人は間違いなく良い人なのですから。 力士といえばあの体型を維持する事、体作りも大切なお仕事ですし先輩たちが小皿に移してくれる具材が多く食べる事が大変だったというのも相撲取りとしてきっと通る道あるあるなのかなぁ…なんて思いながらも、それもまた優しさの一つ。 努力の成果もあり、やがて幕内に入り優勝をできた事を嬉しかった思い出として語る場面に入る頃にはこちらの顔も自然とほころんでしまう位感情移入をしていたと思います。 しかし、相撲の世界も甘い物ではない。安定して勝ち越す事ができずにやがて陥番へ…。 そこから幕内に復帰する事もできないまま引退を決めるというのは苦渋の決断だったのか、とこの時はしんみりした思いもありました。 そこから場面は朝食の香りに気づいてリビングへ向かう所へ。 タイトルにいたお姉さん、まさかの奥さんだったんかい!?という驚きはありましたが話を追って行けば素敵な良妻という事でだったらいいか(?)と微笑ましくなっておりました。 奥さんとの縁を繋いでくれたのもまた相撲であり、真摯に力士の魅力を伝える記事を書く為に努力ができる素敵な人でただ美しいだけじゃない魅力にあふれた人というのも素晴らしいです。 主人公が当時憧れていたというのにも納得ですし、そんな人と夫婦になれたのはとても素晴らしい事だと思わず近所のおばちゃんが子供の成長を見守るようににやにやと見ている気持ちになりました。 とはいえ、デート&告白のタイミングが早すぎるのは重い立ったが吉日とはいえ早いな!?と思わずツッコミを入れてしまいましたがw 主人公がどんな人物なのか、長所をしっかり伝えてくれていた兄弟子がグッジョブすぎたのはそうなのですがこれは主人公も厳しい稽古をしながら勉強をして資格に挑戦するという努力家である事。 当人の美徳もあっての事だと思うと確かに周囲から応援され愛されるよなともう何度目かわからない納得しかありません。 学歴がない代わりに資格を取ろう!と思えるのもとても偉い事ですからねぇ…。 思うだけでなく、実行とまでいくとなかなか両立するのは大変だった事でしょう。 ちゃんこ山盛りの件もですが、主人公は確かに同じ部屋の先輩(兄弟子)達に可愛がられていたのでしょう。 きっと結婚式の時も盛大に祝ってもらえたのかなぁと微笑ましさに目が弧を描きます。 そしていい匂いの正体は主人公の好物であるパエリア!朝から豪勢なご飯ですね!! 奥さんとしても、大事な旦那が主役の日を大好物を食べる所からスタートさせてあげたいという愛情が見えてリア充末永く幸せでいてくれと思うばかりです。 どうやら優勝力士はすでに前日の段階で決まっているようで、となれば後は言い方は悪いですが消化試合と考えるのが妥当。 その中で人が集まるのならそれは主人公の引退試合を見に来てくれる人であるはず。 負け越しこそ確定しているものの、最後は勝って終わりたいと思う主人公。 対して、自分らしさを前面に出した相撲を、後悔のないようであって欲しいと願う奥さん。 そこから、パワーの衰えを感じてからは封印していたという上手投げを久しぶりにやってみるかと考えていたのがあの熱い展開に繋がるとは……。 ‟力士としての”光ちゃんを応援するのはこれで最後でも、これからも光ちゃんの一番の応援団は自分であるという奥さんの言葉はとても心強いです。 本当に良い人を伴侶にもらったなぁ!!と今もゲームを再度プレイし感想を書きながら感情の熱が入るのを感じます。 東京というと都心というイメージがありますが、主人公の住んでいる所には下町のような住宅街もあり人情味にも溢れている。 八百屋の徳さんもですが、きっとこういった優しい人達に囲まれて育ってきたんだろうと思うとまた心が温かくなりますね…。 主人公の相撲をいつも見てて本当に楽しかったという徳さん。 かつて自分がなりたいと思ったような、親方の命名の際の願いにもあったように沢山の勇気と感動を与えられる相撲をできていたのだと思うと本当に引退という事実が惜しまれるものがあります。 そしてこれは徳さんじゃなくても何て良い奴なんだと叫びたくなるでしょう。 国技館に到着すれば黄色い悲鳴に拍手や歓声。 本来ならもう優勝力士も決まって本日の取組は消化試合といえる部分があるにも関わらず。 とすれば答えはもう一つでしたが… 集まった人々が全員主人公の為にこうして声援を送っている事が、相撲取りシャンデリアがどれだけ沢山の人に愛されていたのかがうかがえる場面でしょう。 あの、可能だったら混ざらせて欲しいです。と言ったら駄目ですかね? やはりファンの方々も、今日は主人公の為だけに来たという声やお手製の応援タオルまで用意してくるという熱量の高さ。 先の回想で語られたように、相撲取りであるシャンデリアは確かに幕内で優勝の経験はあれど安定した結果を残せたかと言えば怪しい所はあったでしょう。 当人が言うようにふがいない成績の時も沢山あったかもしれません。それでもこうして応援してくれるファンがいる事のなんとありがたい事か。 プレイヤーは、この最後の一日しか取組を見る事はできませんが改めてその大事な場面はしかとこの目に焼き付けなければならない。 そう思わせるには充分でした。 そして楽屋にての山葵丸との会話も、良い意味で軽口が叩けるのは親友と呼べる間柄だからでしょう。 会話の中で語れる、主人公はこれから力士として衰退期に入るという事実。 その中で衰退期に入っても優勝している力士はいる、まだ努力をしたら勝てる等と本心では主人公の引退を止めたいのであろう山葵丸の言葉。 しかし、不穏とも言える「誰が、いつ、衰退期が原因で辞めるって言った?」 この台詞を見た際にはまさか病気をしているのか?それとも現役を続けるのが難しい怪我とか?と不安になりましたが理由が学芸員になりたいという新たな夢ができたからという前向きな物で心底ほっとしました。 いや、寿命が一瞬で3年位縮んだかもしれない。もうすっかり感情移入していた分下手なホラーより寿命に悪いかもしれない…? 学芸員になるには大学か短大を卒業している必要があるという事で相撲との両立が難しい事。 力士としてやり切った以上、次のステップに行くというならそれは寂しさはあれど祝うべき門出なのでしょうね。 奥さんが今後も一番の応援団だと言っていたのも、ここから高校卒業の資格をとる事やその後の大学or短大という道を進む事への応援だというので納得しました。 何にしても周囲の理解があるというのは良い事ですね。 楽屋から去る前に、主人公や奥さんの未来がより良い方向に向かう事を祈れる山葵丸もとても良い奴だよ!!このゲーム善人しかいないな!? と心が浄化されていく一方です。 言われてみると確かに土俵脇に置いてある塩ってどこが産地なんでしょうね? 等と思いつついよいよ見せ場となる取組。 ここは読み進めながらとても熱い展開に胸が高鳴りました。 宣言通り勝ちにぶつかってくる山葵丸。 持ち前のパワーを活かされ土俵際まで追いつめられるシャンデリア。 ここで挟まれる今日は『上手投げを久しぶりにやってみるか』という回想シーン。 全盛期よりパワーは落ちようともこれが最後。くるか!? そう思えばやはり付き合いの長さや定石を読み取られたのか先程以上に強引に土俵外へ主人公を追い出そうと短期戦に持ち込む構え。 しかしその焦りから生まれた隙を活かし綺麗に決まる上手投げ。 相撲を良く知らない私でも、十両がそこまで高い位でない事は知っております。 が、それでもお客さんたちは沸き立ちスタンディングをしてくれる人までいる。 負けた山葵丸も拍手をしており誰もが力士であるシャンデリアを祝福していた。 最後の土俵に向かって一礼をする際の思いを込めた心の声。 ちゃんと勝ち越しで終わる事ができて、沢山の人達に愛されて終わりを迎えた相撲人生。 それでもまだまだ人生は続く。 まずは高卒認定試験に大学or短大…その先に待つ学芸員という次の夢に向かって、歩みは止まらない。 そんな、この先の道に幸があるように。 これは本日引退する力士の、最後の一日を描いた物語だから先を語られる事はないのだろうけど、きっとまた沢山の人に愛され感謝の気持ちを持ちながら幸せな人生を過ごしてくれるのだろうなと思わせてくれて素敵な読み物を終えた気分となりました。 @ネタバレ終了 相撲は昔、祖母がテレビで見ていたのを一緒に見ていた程度でしたがこのゲームを通していつか生で相撲観戦に行きたいなと思わせられました。 同時に、誰にでも物語という物が存在しそれを取り上げる。 優しさに満ちた世界や物の捉え方でこんなにも幸せを享受する事ができる。 今作にはそれが詰まっており、またふと手をのばして読みたくなる本のような一作として心に刻まれました。 それでは、素敵な作品をありがとうございました。

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  • 本当にあった怖い話の真相を暴いてしまう話
    本当にあった怖い話の真相を暴いてしまう話
    配信にてプレイさせていただきました。 怖い話のゲームは数あれど、それを暴くというゲームはなかなか見られないという点で始まりの時点からとてもワクワクする題材ですね。 @ネタバレ開始 ゲームシステムとしては状況要素や他の人物の発言を何度も聞ける事や、真相解明パートでも間違った選択肢を選んだ場合にもやり直しが有効だったり文字入力パートでも間違った場合にヒントがもらえて再挑戦できる親切な仕様という点で謎解きがストレスにならず遊べて良かったです。 ◆正義の執行人 まずは初手に拾った謎の音、から謎の老人にホラーでは定番のホラースポットで動かなくなる車と体験した怖い話として良い導入だな!と思いました。 後ろから迫りくる足音と車体を叩く音で相撲取りでも走ってきたのか!?と一瞬連想したのはさておき… 真相解明における謎解きも基本は3択から選んでいく形式なのですんなりと進み、Have a nice day…と微笑むおじいさんに思わず4人と同じく「おじいさーん!?」と叫んでいました。 同時に時速の計算がガチかと思いきやの流れだったのもあり、もしやこういうギャグで粉砕していくのか…!?と見事な洗礼を受けましたね(誉め言葉) 私自身初心者マークは磁石のタイプしか知らなかったのでこれは盲点でした。 ラストで自分が堕ちぶれた人間になった事を悲しむレオン君にそっちかーい!?ともなりつつ。良い話だったのかな…?きっと。おそらく。と自分を納得させながら。 ◆ある寒い冬のこと 今度は人が死んでいる話という事でこれまた本格的ホラーか!?と思いきや怖い話では見かける展開「私(の亡骸)を探して」がきた!とある種期待通りとも言えるスタートでした。 しかし、いざ教えてもらった場所で発見された遺体は若い男…?どういう事だろうとわからないまま情報を集めつつそれでも推理は固まらないまま真相究明へ。 とりあえずこの選択肢なら窓の一択、次も演出以外は理由がなさそうですが何故彼女が自分を死んだ人間と偽装したのかはわからず。 その次にフラッシュモブ以外字面だけでは見た事がないと白癬を選んだら「それ水虫です」と手痛いツッコミと腹筋へのダメージを受けました。 多分何かしら血色が悪くなる病気だと思ったのだと供述しつつ、その次の選択肢で核心に迫るもまだ理由がわからないまま容疑者しかないよね…?でもどうして?と正解しつつ悩みました。 逮捕された夫婦の妻の方だという事で、もしや旦那が人殺しをしてそれを告発したいけど自分がやったとばれたら身の危険がある為遠回りな演技をした「告発者」なのか!?と思いきや詐欺師だったという結末に私の良心がぁー!となりました。 しかし、正体判明後の彼女の顔が完全に黒のそれだったのでこれならやっててもおかしくない。と納得しました。 そして情報収集の際にあった「その他」の情報が医大を目指す人だからという繋がりだったのかと頭の中で繋がりなるほど!と。 これは結果的にすぐ行動して被害者にならず良かった、というのはその通りだなぁという話でしたね。人間怖い。 ◆不思議なオウム ガチの金持ちのエピソードだー!と思いきや突然のキバタン登場!? しかも第一声があまりに個性的だった為、何が起きたのかと理解するまで一瞬頭が硬直しましたw それ以降も個性的なワードを話すキバタンに振り回されるエミリオ君の構図が実に愉快です。 しかし、突然何もないだろう場所をみて「生きとるがな!」は何が起きたのか…。 そしててっきりキバタンに対しスーちゃん可愛いよ♪という意味で呼びかけていたから名前なんだろうと思えばまさかのアバッキオだったという予想外の本名判明。 喋っていたワード的に確かに元の飼い主さんはオタクなんだろうなぁというのは薄々透けてましたが、後から見るとスーちゃんの意味を聞かれた時にスタッフさんの顔が曇ったのはオタバレしたくないという気持ちだったんだろうなぁというのが怖い話へと余計に拗らせる原因になったと思うとオタクの者としてはあぁー…と共感の声が出ました。 どのみち、スタッフさんが元飼い主さんの同人誌のファンという点でじゃあオタ仲間では…?とばれるのも時間の問題だった気はしないでもないですが。 最初にキバタンの名前がアバッキオと聞いてここでまさかのジョジョ!?となりましたが、考えてみると‟誰かの残した言葉を繰り返す”というのはジョジョネタだった場合彼のスタンド能力と合わせるとこれ以上とない組み合わせだと深く感銘を受けました。 相棒として可愛がられていたアバッキオもかつては飼い主さんと推し活をしていて、今もその時の言葉を覚えていると思うととても心が温かくなります。 そしてオカメインコたちの写真が可愛くてわかりやすい解説であると同時に癒し要素でした。 それにカメムシを見ていた事が判明した後の周囲を見る時はピンボケにするように目を細めていた図で思わずむせる位に笑わせていただきました。 確かに虫が嫌いならしょうがないしこれは見えなくても当然だね!!と。 謎に笑い、そして最終的には心がほっこりと温かくなるような素敵なお話でした。 ◆蘇る血の伯爵夫人 ホラー現象よりもその方が速いという理屈で二階にのぼった方がある意味怖い話だな!?となりつつ。 後からこれって序盤の部分を飛ばしたらどうなるのかと裏で確認プレイをした所絶対飛ばせないようになっていたのに結果は収束するのかぁ…となりました。 血のバスタブに関する話は確かに聞いた事がありますし、管理人さんの若さはどうなっているのかは確かに謎だったのでそこはだったとしたら?という真実味を感じましたね。 ちょいちょい挟まれる解説画面でのネタのセンスも素敵で、地球に対し「母なる地球(テラ)」とルビがあったり人物に「お前」とあるのが好きです。 そして結局序盤の段階でケーキを食べた事を証拠隠滅したという盛大な嘘があり、しかし血が降ってきたところからは本当の話という事でバスタブの謎は残ったまま。 ここでの回答入力で間違える程ヒントが増えるというのでこれまた裏にてどこまでヒントが増えるのか?を試しましたが確かにここまでヒントが増えたらまず正解するだろうところまで出してもらえたのとその過程の台詞が良いコメディでした。 そして外来種が野放しになってる公園がとち狂っているという感想はやっぱり正常だったよね!?とかマリアちゃんが時速60kmで走れるとか数多のツッコミをしつつ、多分これ任せたら全速力のせいでケーキが危ないだろうなと初手はみんなで無事にケーキを食べられるエンドを選べました。 もう片方のエンドも汚い夢扱いに最後まで楽しく遊ばせていただきました。 @ネタバレ終了 こうして怖い話は見事に解明されていった…いや、それでいいんだ?というツッコミも添えて…。 という事で推理で頭を使った事もありプレイ後には甘い物が食べたくなる作品でした。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 怪異判定アドベンチャー「奇天烈相談ダイヤル」
    怪異判定アドベンチャー「奇天烈相談ダイヤル」
    感想が大変遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 怪異を判断するというオカルト好きにとってこれ以上とない興味を惹かれる題材。 ゲーム起動から最初のメニューが表示されるまでに入るレトロな画面とマッチした女性のボイス。 作中における舞台である1994年を彷彿とさせる雰囲気もですが、収録されている怪異の数やその分類等とホラーやオカルトが好きならば遊ぶべきといえる程の作品と思いました。 @ネタバレ開始 ゲームをスタートした際に流れるOPが相談室のCMという事でプレイヤーのやる業務がどんな内容なのかイメージを膨らませつつ実際に相談室へ訪れた所から始まるという綺麗な導入。 未経験の内容という事でたくさんのマニュアル等を押し付けられますが、発見されている怪異の数だけでも1000体という百鬼夜行どころではない数字。 新人にはなかなかハードルが高そうですが、その中でも出現頻度の高い怪異をオーモリさんがピックアップしてくださっているという事で1000という膨大な数字からいきなり100までハードルが下がるという先輩の有難さ。 手厚いってどころの話じゃないよ!?となったところでまずはノブ子さんから最初という事で簡単な内容を振ってもらうという説明を受けつついざ実践へ! 特殊な仕事でもありますし、最初はマニュアルに目を通す所から手を付けましたがここでも『はじめに』の項目から何故この相談室が存在するのか等世界観の表現がされており、ただマニュアルの内容全てに目を通すだけでワクワクが止まらずたっぷり一時間は楽しめます。 怪異についての資料にも全て先に目を通しておきたかったですが、出没時間や外見的特徴等と多数の項目とそれに該当する怪異の数が多かった為ここは実際にプレイをしながら覚えていく事に。 ここはやはり何周プレイをしても特徴の見分けが難しかった為、何度も資料のお世話となりました。 初手は怪異の名前も判明しているという事で、資料に書かれた項目と相談者の話が一致するのかを調べつつ取り組む事に。 「ひとりかくれんぼ」というメジャーな内容で儀式の内容自体も知ってはいる物でしたが、私の知っている内容とこの世界におけるひとりかくれんぼの内容が一致するか初見という事もあり慎重に判断。 結果、ちゃんと判定も成功しクリアすると怪異図鑑が増えるというコレクション要素もあってこれを100項目埋めるのが当面の目標になるのだろうと把握しました。 元々都市伝説等といった話は好きなので当然のように正解してやるぞと意気込んでおりましたが、3件目にきた「さとるくん」で初めての失敗。 オプションで何を間違えたのか教えてくれるヒントをオンにしていなかったので、何が違ったのかは不明ながらも次こそはリベンジしようと誓いつつ合計5件を済ませて1日目が終了。 業務が終わるとノブ子さんとの会話があり、相談室で使用されているテレビ電話って凄いという話題に。 いつかスマホにあたる物もできるのかな?という会話があるのも94年なんだよなぁと時代を感じる部分ですね。 オーモリさんとの会話ではまさかの参考文献を書いた人物の名前が自分だったという私はそっちの界隈で有名人だった…?という衝撃を受けながらおやすみを選択。 2日目は基本の流れこそ同じでも今度は名前がわかっていない怪異の判定に取り組む事に。 聞き出した情報から怪異資料を再確認し、該当する怪異を検索できるかが重要という事を把握しつついざ相談へ。 1件目はやはり序盤という事もあり、メジャーであり声の特徴で特定のできる「八尺様」で正解。 2件目はどう考えてもメリーさんでしょう?と首を傾げていましたが、このゲーム内における名称が「メリーさんの電話」という事で自分の知識とゲーム内における名称の差異も注意事項であると学び。 正式名称の把握が遅れた事で後手になってしまい、今回の回答がメリーさんの電話に似た偽物だったと答える事に失敗。 3件目は話は聞いたことがある…これってキジマさんだったっけと問題なくクリア。 4件目は赤いワンピースの奴…何を間違えたんだろうだろう?と不正解になったり名前がわからないという事でハードルも程よく上がっておりました。 3日目はここまで名前がわかる場合と不明の場合をやったという事でその混合をやる流れへ。 段階を踏みながら着実に難易度が上がっていくのにワクワクします。 最初は名前がわかっている事で「赤いちゃんちゃんこ」で判定に成功しましたが、何故相談者当人が遭遇したのかという構図から別の事案の香りがしましたね…。 そして次も40代女性が何故「トイレの花子さん」を試しに行こうとしているのか…という判定に成功はしても謎の残る流れに別の意味で困惑。 3件目はその意味ではやっとまともな内容でしたが結果は偽物という判定に。 今日はカオス回な日なのかな…と思っていれば次にきたのはツチノコを発見したので確認を急ぐ女性が登場。 出現場所がツチノコの条件と違っていましたが、それはそれで何を目撃したのだろうという謎が残ったという点ではやはりカオス回…。 ラストはみんな大好き「猿夢」という個人的にテンションの上がる怪異が。 アナウンスの内容が違うので偽物と判断しましたが、これは本物だった場合の方が厄介なので結果的に平和で良かったのかなぁと思いつつお仕事完了。 オーモリさんとお話をした際に教えてもらう「コインロッカーベイビー」の話は知っていましたが、流行語にもなっていたというのはなかなか悲しい物ですね。 そして、翌日の新聞で怪異の判定結果について出るのを眺めているとツチノコについて相談した人がいなかった!! 4日目も前日と同じ流れという事で慎重に対処をする方針で挑戦。 初手は無事に本物だとわかったので正解するも、2件目でこれの名前って『エンジェルさん』じゃないのかと思えば「キューピッドさん」というまたもや認識している名前との差異が発生。 どうやらキューピッドさんはエンジェルさんの人数違い+性別指定があるバージョンっぽいと資料から理解。 似たような儀式怪異にも結構派生があるという事が判明したのはなかなか興味深い部分でした。 こっくりさんの派生と分類できる物だけでもまだまだ知らない物があるという辺り、オカルト探求心が刺激されます。 次はまた相談者が何故その場所にいるのか…事案の香りがする相談内容でしたが、高校教師なら見回りという可能性もあるしセーフなのかな?という内容も。 相談者自身が怪異と遭遇した場合、対象が怪異か偽物かに関わらず別の意味で事件というか事案になる物があるのも地味に笑える要素として好きです。 そして、4件目にはどうやら7日目のラストにくる事が多いとされる「がらくた屋」の相談が。 とりあえずしっかり情報を確認すれば偽物と判明しましたが、何故この相談者ががらくた屋にやたら執着しているのかこの当時は謎でした。 後に別作品からのゲストとして参加してるので元々因縁があったという事を知り、是非そちらの方も遊んでみたいと思いましたね。 ラストの相談は電波が悪いのか相手の姿がわからず、どうやら「きさらぎ駅」にいるという緊急事態な相談が。 判定に失敗したようですが、どうやら聞き取る情報の中で「聞いたこと」の部分に触れなかった結果偽物であるにも関わらず本物と言ってしまったのが原因のようでした。 もし太鼓の音を聞いていたのか確認すれば正解したかもしれないと思うとなかなか悔しいミスですね。 5日目になると、今度は何と怪異から相談室に電話がかかってくるという事も起きるように。 そっちがその気ならこっちもやってやらぁ!と気合を入れて始めれば開幕から怪異からの電話だったというのには笑うしかありませんでした。 とりあえずイタズラ電話のようなのでそれを指摘して解決はしましたが、どうやら私の想定していた怪異とは別の物だったとコメントで指摘をされたおまけ付のオチも含めて。 次は人間からの相談という点でまともな相談かと思えば、やはり何故小学校のトイレにいるはずのない人物が…という案件が。 この辺りまでくると慣れもあり、仕事開始から45分で3件をこなすというペースになってきました。 次は「化神魔サマ」という『カシマ』派生であろう怪異の相談が。 カシマさん自体がヤバイ物なのに何で派生させているんだろうなぁ…という気持ちも持ちつつ、本物とわかったので相談者の無事を祈りつつ判定成功。 さらに「時空うば」というこれまたババサレの派生といった元々がヤバイんだから増やすんじゃありません!という怪異の相談がきましたがこちらは猶予が一ヶ月という事で偽物とわかりまだ結果的に良かった方なのかな?とクリア。 この日にオーモリさんから教えてもらえる怪異については哲学的な部分も含めた内容で考えさせられましたね。 幸せの絶頂で死ねるというのは良い事なのかどうか。 この業務後に聞けるオーモリさんのお話も楽しみの一つですね。 6日目になると、もうここまでやったパターンの全部乗せという事で名前がわかるかどうか以前に怪異からも挑戦がくるという難易度に。 とはいえこちらもこの時点までプレイをしていればさらに慣れてきた事もあり検索するのにも手馴れてきました。 鏡に関する怪異が多いという印象を受ける日でしたが、ちゃんとその中でも詳細を詰めれば特徴が違うのでクリアする事もできました。 「くずれ女」らしき怪異の相談も受けましたが、結果は偽物であってもどのみち不審者だったり治安も心配になったりしますね。 ここで新パターンとして怪異が村であるケースも出てきましたが、資料の項目で村というのがあるのに気づかず名前を調べる事ができない痛恨のミスをするものの『地図に名前のない村』と候補が絞れているなら答えはあれだ! 汝は「杉沢村」とギリギリ間に合い正解する事もありました。 そして、怪異からの挑戦状として あなたは(キュルキュル)ですか→キュルキュル?(怪異名の方) と思いつつさらにもう少し話を聞くと赤というワードが…「赤い部屋」だと判断し資料を見れば電話を切れという一言しか載っていない。 さすがの相談室でもどうしようもない怪異があるんだなぁ…と新パターンにニヤリとする場面でしたね。 そのまま次の電話にかかれば再び あなたは(キュルキュル)ですかという電話がまさかの連続でくるという流れに。 何で連続できたんだよぉぉぉぉ!?と混乱も興奮も絶頂というおいしすぎる流れの中、思わず対処法にあった「いいえ」と返答するという選択をして失敗へ。 オーモリさんから注意をされましたが、この時は文字通り私の頭の中がキュルキュルしていたんや…となりましたね。 そんなこんなで7日目へ。 前日怪異電話に連続遭遇したせいで人間の姿が相談者として見えているだけでもはや安心感が生まれるという状態でした。 怪異というか、神様に関する内容も扱うようで過去に何度も相談をしているという事らしくこれは難しい内容かなと警戒して挑戦。 丁寧に情報を集めて検証した結果成功しましたが、どうやらこの話も過去作からの挑戦者枠のようなので今はそちらも気になりますね。 そして館そのものが怪異なのか、館に住む怪異なのか? という頭の悪さを発揮しつつ「首狩り貴族」に似た偽物の判定に成功。 次はどんな怪異なのかを聞いた時点で察しましたが、持ちものを聞けばもう確定だと「ひきこさん」の判定に成功。 しかし、その次がなかなか苦戦をするというか今までにないパターンという意味で強敵でした。 情報を集めれば集める程それと一致する怪異が存在しない? 男子トイレに出てくる自分が綺麗かを質問して、さらに六本足に注射器とかもう属性をどれだけ盛れば気が済むんだという状態に…。 どうやらこれがたまにある「該当なし」の場合だとここで学習しました。 そして最後の相談もやはり情報がちぐはぐしており先程と同様に該当する怪異が存在しない為、早速勉強の成果だとばかりに「該当なし」で判断に成功。 これで仕事も終わりオーモリさんに話しかけてみれば、最後の怪異のお話を聞くには99は目指そうと言われました。 なかなか先が長くなりそうですが、まだ見ぬ怪異もたくさんありますしそれだけたっぷり遊べるというのは良い事ですね。 という事で初プレイはBランクでクリアをし、エンディングに入るのかなと思えば…ここでオーモリさんに教えてもらっていたNNN臨時放送で締めくくるというあの時の会話がオチにくるのかという結末へ。 読み上げられた名前はきっと相談者の皆さんなんだろうな…と、どのみち助からない事を悟りながら今回のプレイでの感触を参考にもっといいスコアを目指すべくどういう設定にするかを考えました。 同時に、今回のプレイ結果からエンドレスモードが解禁されたのでそちらも気になるな?とやり込み要素の深さが見え隠れします。 本来なら週1で通常のモードをプレイするつもりでしたが、あまりにゲーム内容が面白かった為速攻でその決まりを無視してエンドレスモードを遊んでいた位にはのめり込んでいました。 @ネタバレ終了 作中に存在する怪異だけでなく他にもダミーとしていくつもの怪異の情報を表記されている事。 怪異を特定するにも特徴に類似性があったり、慣れてきているからこそ起こしやすい間違い。 そして、実績というモードが追加された事でやり込み要素もたっぷりと楽しめました。 題材として怪異判定を選んでいるだけあり、ゲームとしての面白さはもちろんオカルトが好きな視点としても思わずニヤリとしてしまう濃度の満足度。 これだけの怪異を出せるという引き出しの広さと深さには脱帽です。 素敵な作品を遊ばせていただき本当にありがとうございました。

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  • 箱庭推理『桃太郎』
    箱庭推理『桃太郎』
    感想が大変遅くなりましたが配信にてプレイさせていただきました。 誰もが知っている昔話の桃太郎。 それをベースとした推理ゲームという、面白そうな設定に惹かれました。 @ネタバレ開始 箱庭推理というジャンルも初めてだったのですが 今回で言うと探偵ちゃんがGMをしているPLが1人用のTRPG…として推理ゲームをするという事で把握しました。 主人公は物語の後日談に桃太郎の家に来た客人という設定。 まずはおじいさんとおばあさんに挨拶をして、家来たちはどうなっているのだろうと思えば… 「犬です」 どうみても人間ですよね!? 「猿だ」 手品師みたいな衣装だし仮面もつけてるが!? 「キジです。家事を担当してます」 一気に格好が民族衣装っぽい感じというか…ここは日本なのだろうか? ここまででも充分ツッコミどころの連続でしたが 「鬼だ」 お前もおるんかーーーーい!? というか、鬼というよりただの見た目が怖いおっさん…のような。 とついつい芸人魂的にツッコミをせずにはいられない流れでしたが、推理作品において本来は動物である家来たちと鬼を人間にしておいた方が容疑者候補の調整という意味では合理的ですね。 じゃないと、動物がどうやって犯行をやったのか?この痕跡は…どの動物の特徴なのか?という話になってしまいますし。 そして、完全にイメージと違うただの若者である桃太郎も登場。 どうやら物語の後日談としてはすっかり堕落をしたというか、駄目人間っぽい感じになっているようですね…。 まずは舞台の把握も兼ねてでしょう。 犬の案内で舞台となる家を確認し、彼が庭師もしている事や庭から見た時の間取りが見える条件が出ました。 重要な点は文字が強調されているので意識しやすいですね。 そして、人間の姿なのに犬小屋暮らしをしている犬…。 本来なら間違いではないでしょうが、この姿だと人権がないというか違和感がありますね。 さらにもっと酷いと思えるのが、台所に置かれた椅子に座って寝る事になっているキジでしょうか…。 せめて横になろう!? 次は広場へ、先程自己紹介の時に言われた通りにそこでは猿が演技をしているようですね。 確かに当初は3人家族だったと思えば、今の家来+鬼で4人増えた状態は大家族と言えるでしょう。 猿がこうして仕事をして不足分を賄っているというのはわかりましたが、仕事熱心だなぁと感心します。 時間が進み夕飯の時間へ。 どうやらシナリオとしては主人公が自分の事を話題として語りつつ楽しんでいるようですね。 そして現在ここに不在である犬は後から小屋で残り物をいただくようで…。 キジは持ち場である台所で椅子に腰をかけつつ食べているのでしょう。 正直、改心したとはいえ家来でもなかった鬼が部屋をもらっているのにしっかり働いた家来のうち2人がまともな部屋をもらっていないのはどうなのか…。 ここで間取り図が出てきた事で各部屋の繋がりもわかったのでこれが後に推理をする際重要となるのでしょう。 昼の間にわかった情報も含め、その際にはしっかり考えたいですね。 そして、解散から各自は自由行動へ。 鬼が文字の練習本の事を猿に教えてもらい楽しみにしているようですが、やはりこの時代だと識字率が高くないでしょうかね? もしくはそういった事も含め事情に困るような環境にいる者が今回でいう鬼の立ち位置となったのか。 (鬼ヶ島も、実際はそういった人の溜まり場という認識だったのか) この世界の事情等も気になりながら風呂はおじいさんが一番、そこから順番で入っていくという流れへ。 おばあさんは見た感じではまだ若そうにも見えますが腰を悪くしているという事でキジと一緒に入るようですね。 そして時刻は22時となり何事もなく明日になるのかと思えば響き渡る悲鳴。 桃太郎が殺害されており、全員を起こして床の間へ集合といういよいよ本編と言える展開に! 外部からの侵入者に気づけるであろう犬とキジに確認すれば特に不審者はおらず犯人がこの中にいるという状況に。 ここで、アリバイを確認しようとしたところチェックポイントで発生する推理選択肢が発生。 確認したところ、チェックポイントの選択肢は正解かどうかに関わらず物語としては進行するようですね。 単独犯の場合、というのが引っかかりますが犯行可能だったのは犬か鬼の二択。 桃太郎の家来に悪い奴がいるはずがないという発言等もあり疑いの目は鬼へ向かう流れへ…。 本来なら、悪事を犯した者は隣町の役人に引き渡す必要があり殺人鬼と同じ家で眠れるか!論で鬼は物置へ閉じ込められる流れになった時点で何とも嫌な予感はしました。 こういう推理物って、最初に容疑が集まった人が次のターゲットにされる事ってそれなりにあるよね…と。 家来が増えてからはおじいさんとおばあさんの習慣である柴刈りや洗濯に家来も一緒につくようになっていたようで、2人ずつに別れ主人公は犬と一緒に村長の所へ向かうのが決定。 とはいえ、まだ証拠も不十分なので家を出る前に質問をするターンがあるのは助かりました。 やはり堕落していたのもあって桃太郎はそれなりに恨みを買う人物だった事が判明。 この作品では家来が人の姿なので、キジとの縁談を断った際に「人間ではないから」と言っていたというのもそういえばそうだったな…となりましたね。 凶器は鬼退治の時に桃太郎が使っていた刀、そして重要そうな事としてこの家とは別に財宝をしまっている蔵の存在も出てきます。 桃太郎が部屋で眠っている事を知っていて、何かしら人目を回避する手段があれば凶器は予め用意するでも現場調達でも可能ですし犯行そのものは難しくない点が悩ましいですね。 主人公が触れているように、殺される前の桃太郎は特別疲れていた様子でもない以上深い眠りに入っていたとは限らない。 ならば誰かが部屋に入った際に目が覚めてもおかしくないのに、何故暗殺されたようだと思える程あっさりやられてしまったのか。 そして、聞き込みをしていく程鬼がとても悪人ではないだろうと思えるのがこう…余計フラグめいてきたと思いましたね。 桃太郎のせいで一家が村から腫れ物を扱うような対応をされた際、率先して信用回復に動いたのは猿と鬼だった。 鬼が桃太郎の事をよく思ってないという部分も、そもそも桃太郎側の落ち度を人としてどうかと思うという話だと思えば別に筋は通っているでしょう。 鬼なのに…鬼なのに…人の道?という部分に軽い混乱はしつつも。 まとめてみれば家来たちは酷い扱いを受けており、おじいさんとおばあさんは桃太郎の更生を諦めている。 おじいさんのみ鬼が犯人だと言わなかった点を問われたのも重要ポイントとなるのか? とか思っていたら鬼のいる物置から火が!? そんな予感はあったものの、鬼が次の犠牲者となってしまった上にこれは下手をすると犯人が自殺をしたと無理に決着をつけられそうな気がします。 アリバイとしてはおじいさんとおばあさんはそれぞれ目撃情報が足りてない、猿は間の時間で犯行が可能。 しかしその場合、おじいさんと猿orおばあさんとキジのどちらかが共犯であり抜け出していても問題がなかったという前提が必要になってくる…。 気持ちとしては猿が犯人というのはあまり考えたくない部分はありますが…どうなのか? さらにトドメの証拠とばかりに出てきた鬼の遺書ですが、鬼は確か猿から文字の練習本を受け取っていたはずなので『字を読む事はできても書けるのはおかしい』はずなのに何故か鬼の筆跡という証言が? 改めて読むと、遺書に漢字が使われている辺り余計にありえないと思えますね。 そうしてここからはようやく全てが明かされるパートへ。 結論としては一家が全員犯人だったというオチでしたか…。 しかし、鬼が犯人でない場合は自動的に犬が嘘をついている事が確定。 その犬は翌日主人公と行動をするので物置に放火する事はできない。 さらに桃太郎が熟睡する為に薬を飲ませる用意等も含めればこれは全員が共犯だったという方が納得しました。 @ネタバレ終了 真犯人を綺麗に当てる事には失敗しましたが、このような形式で推理を進行するゲームもあるのだなという点でとても楽しめました。 それでは素敵な作品をありがとうございました。

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  • Struggles/Unities ~cutty sark~
    Struggles/Unities ~cutty sark~
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 初手のOPから映画の導入のように引き込まれ、断片的に与えられる本編に出ている情報達。 概要の時点で主人公であるアイリーンが自分が死ぬという宣告を受けている以上、波乱万丈な展開が起きる事は想像できますが良い感じに期待を煽って来る演出として好きです。 @ネタバレ開始 広大な敷地に館。 身なりも含め高貴な身の上である事がわかるので、てっきりアイリーンが世の中という物を知らないというのも最初はよくある箱入り娘という物かな?程度に捉えていました。 それにしても、館の規模を考えると普段家にいるのがアイリーンだけとしてもメイドが一人だけで回るのか? 母親が居ない事、父親の名前からまず血の繋がりもない事。 それらの事に対して、何の疑問を持つ事のないアイリーン…さすがにただの世間知らずで済ませるには違和感もあるような。 不思議な夢を見るようになった事から、自分がいつの間にか毒草を口にしていたのかと疑問に思うもその可能性も否定される。 そして、出かける父親を見送る際の会話に出てきた重要ワードであろう『魔法』 後の展開を思えば、ここで魔法のように自由自在な~と話題に出した事でアルパチオは自ら崩壊へのトリガーを引いたんだなぁという部分ですね。 アイリーンの反応としては子供のように、もしも魔法が使えたら面白そうという反応でしたが…。 ここまで疑問を持たせず騙し通せたとはいえ、そろそろ限界が近かったのか。 それとも、ユメを認識した事で変化をもたらす前兆が来ていたのか。 最近同じ事ばかりしてて何か新しい事が欲しいと思った時点で、アイリーンが変化を望んでいたのは違いないでしょう。 うたたねをした事で、普段なら夜にしか接触をする事のなかったユメと初めて会話をする流れ。 アイリーンの見る夢の世界に対し「作りは歪だけど」と表現されたのは彼女の現状がかなり特殊な事にあるのでしょうね。 何者かと問われ、敢えて言うなら死神と返答をするユメ。 自称死神に「貴女は死ぬのよ」と言われ、ほぼ即断で右ストレートをいれるアイリーンは箱入り娘にしてはなかなかお転婆だな!?と驚きましたね。 そしてもはやそれは武士の発言だよ?となっているアイリーン。 (推定)知識の提供元であるラトゥが一体どんな事を教えていたのかが気になる部分でもあります。 要約すれば、今目の前にいる自称死神に殺される事はない。 だけど、アイリーンが死ぬ運命にある事そのものは嘘ではない。 そして再び重要ワードとして出てくる『魔法』 魔法を信じなさいという忠告。 本来ならいるはずであるラトゥの気配が感じられないという時点で、すでに固定されていたはずの世界に何かは起きていた。 そう言わんばかりに、ふと思いついた『こんな魔法があったら?』という出来事が目の前で起き。 隣の部屋に逃げ込んでも、そこには勝手にゲームを行うチェス盤が。 不可思議な現象に侵食されていく日常、それを見てしまった事で窓の外にあるのも自然に存在する空ではない事にも気づいてしまう。 ラトゥを探しながら自室の方角へ逃げていき、ようやく目的の人物を発見したと思うもそれはメイド服を被った人形だった。 ポルターガイストも真っ青な怪現象だけでなく、見知った数少ない人物まで人間ではない?そんな様を目撃すればもはや発狂寸前に陥るのは当然でしょう。 部屋の中に飛び込み震える中、異変に気付いたのか何故か出かけたはずの父親が扉を開け立っている。 そこで意味深に聞こえる魔力回路の暴走というアイリーンもプレイヤーも理解ができない言葉。 その意味を問い質すよりも前に、大火災の発生している室内の天井は焼け落ちたのか下敷きとなってしまった父親。 再び姿を現す自称死神にこれは貴女の仕業かと問うも全てはアイリーンがやっている事と返されてしまい…。 とにかく、この狂った現状から生き延びる為に魔法を信じると誓いようやく終わった長い夢。 繰り返される、時間の概念もなければ疑問すら生じさせなかった世界は全て結界の中で見ていた仮想空間と言える場所での出来事だった。 それもアイリーンがまだ物心つく前から、意図的に知識的な成長を遅らせていった結果成立させていた極めて歪な世界。 死神でなく、夢魔であるユメとしては今回のケースは珍しい事例であり好奇心からアイリーンを観察していただけにすぎない。 とはいえ、それがこの世界を崩壊させるきっかけの一つでもある以上関わった責任がないとは言い切れないですよね…。 結果的に、アイリーンの事を悪用しようとした相手は概念の空間にも関わらず物理的な死を迎える事となり彼女は自由の身になった。 そういえば大火災になっているのに、全く熱さがないという点で本当に意図せず暴走した結果大炎上しただけなんだなぁと(全然‟だけ”という言葉で済ませてはいけないと思いながらも) ここまでの展開が早く、何故アイリーンが不思議な生活に疑問を持っていなかったのか。 しかしいつかその世界にも終わりがくるとなってからの怒涛の展開はなかなかの物です。 プレイヤーとしてはユメの独白からここまでの展開を理解できても、当事者でありまだ精神的にも幼いアイリーンには理解しろというのが無理な状況でしょう。 自分が魔法を本当に使える、魔女の血を引いている事も知らない。 今まで父親と思っていた相手は自分を利用するつもりだった悪人で、育ててくれたメイドも人形でしかなかった。 自分の育ってきた環境全てが作り物の世界でしかなかったなんて。 体そのものは成人女性に近い程に成長していても、中身はまだまだ幼い子供そのもの。 あまりにも無垢とも言えるし、見た目とはアンバランスさがあってもそれが今の彼女の状態である事。 本来、ユメにアイリーンの面倒を見るまでの責任はないとしてもそんな様子を見ていてはさすがに放っておけない気持ちも出てしまったのか。 当然のように今まで生きてきた中で子育ての経験なんてないユメも、しばらくは…事が落ち着くまではアイリーンの面倒を見る事を誓う。 その為に必要な契約は、実質は彼女と長い付き合いになる事を意味している辺り本気なのが窺えます。 アイリーンを助けて生活をする為にユメは彼女と契約をしなければならない。 それは、不死であるユメと生きていく事を意味している。 魔女の血を引いているとはいえ人間であるという今の輪廻から外れ不老不死の存在に成るという事。 きっとその意味を全て理解できていない事は予想できても、それを受け入れるアイリーン。 こうして結ばれた奇妙な生活の始まり。 朝の訪れを告げるような明るいBGMと共に、まずは食料の場所についての記憶をユメから与えらえる。 不安もかなり大きいと思える中、ここでアイリーンが現状についての言葉を思い出し前向きに考えているのが印象的ですね。 それは何でも出来るという事。 自由というのは何にも縛られない代わりに、何でもできる事を意味している。 だから新しい環境の中を、知らない外の世界を探索しに出かけて行く。 見た事のなかった光景、綺麗に整った花壇に感動をして無邪気に駆け回る様はまさに自分で歩み始めた子供のようで。 自分の年齢はいくつだと思っているか尋ねられれば表情を曇らせながら10歳だと返すアイリーン。 肉体の年齢はユメの言う通り、恐らく18歳位に思えますが…精神的には下手をすると10歳よりも幼いような気もしますね。 だけど、不安そうなアイリーンに対しそのうち自分が大人の女性にしてあげると告げるユメ。 この時はそうなるのは一体何年先になる事か…と思っていました。 街へ行き、近場のパブに入って食事の時間へ。 外の世界…それも自分以外の人間が暮らしている場所そのものがアイリーンにとっては刺激的でたまらないでしょう。 そして、あの世界にいる間は食事は全てラトゥが用意してくれた以上飲食店という概念も物珍しくて仕方ない。 足をジタバタさせてはしゃぐ様子は初めての体験を楽しむ子供そのもので、連れてきてもらえて良かったなぁとほっこりします。 余興として行われる演奏も、それにあわせて思いのままに踊っている人々の様子も全てが新鮮で輝いている世界。 一時は本当にどうなる事かと思いながらも、こうやってアイリーンが楽しみながら社会を学んでいく様子は本当に見ているこちらの頬も緩むものです。 変化もなく、ただ繰り返させるだけだった日常はある意味不自由のない安全な箱庭だったのかもしれない。 先程自由という事に対し、何者にも縛られないと表現をしましたがそれは同時に守ってくれる相手がいない以上全てを自分で切り開かなければならない。 何の庇護も持たないという事であります。 今はユメが保護者をしている分、ある程度の安全は想定できても時に厳しい現実とも隣り合わせである事。 それでも彼女には自分の意思でこれからどう生きるのかを選んで様々な事を学んで欲しい想いになります。 街へ向かう際に利用した愛馬もやはりあの世界が全て作り物だった以上、実際はアイリーンの記憶から再現した存在に過ぎなかった。 実は運良く見つける事が出来てね。なんて、優しい嘘を添えながら。 それと同じように、ユメが表に姿を現せない時間の間アイリーンの傍にいる付添人としてラトゥが再びユメの力で現実世界へと受肉をされた。 ここは守れる対象が居た方がいいという面でも合理的でありながら、それがアイリーンにとって唯一無二であるラトゥであるというのがなかなか粋な部分ですね。 理屈はどうあれ、大切な存在であるラトゥが戻ってきた事。 確かにラトゥはかつて目の前でただの人形となり家は燃えてしまった。 その際に父親も失った。 しかし、まともに触れ合う時間の少なさもあったのかその父親の顔を思い出せなくなっていたというのは結果としてアイリーンにとっては幸せな事なのでしょう。 君を監禁して利用しようとしていた相手を覚えておく必要なんてないからな!! これからもっと楽しい思い出を作ってさっぱり忘れちまおうぜ!というところですからね。 自分にとって素敵と思った事を共有するように、ラトゥを昨日の花壇へ連れて行くアイリーン。 考えてみると、手入れはされているとありますが実際ここは誰の庭だったのか? 疑問は残るもののアイリーンの物という事に決定! そして、自分の物である以上そうなれば次は花の世話という問題が出てくる。 こうやって自分の物は自分が管理をしなければならない、そんな当たり前の事もラトゥの手ほどきを受けながら初めて自分の為に学ぶという行為に挑戦していく。 今まで学習機会を与えられなかったアイリーンが、自分の為に勉学に勤しむという記念すべき思い出が刻まれたんだなぁと思うと本当に微笑ましいです。 そして、ユメの視点と商売についての場面へ。 お客様第一号が来たものの、魔力強化に来た目的というのが全く褒められたものでもなく…。 OPにあったユメの不穏な表情はここだったのかと納得した部分もありました。 精魂もアレならば目的もつまらない物。 なのでユメが荒療法と前置きをしながら手段があると提示した事や、その結末は…。 アイリーンの保護者という世話焼きで優しい面を見ていると忘れてしまいそうになりますが、本来ユメは人間がどうなっても問題ないと思っていた夢魔である事。 守るべき対象やアイリーンが生活をする上で関わる人間に意味もなく危害を及ぼす事はなくとも、本来は人外である事を忘れてはいけない。 そんな面が見えるパートですね。 ここまではアイリーン達を中心とした視点で物語が進んでいましたが、外の世界に出て生きるという事はその中に関り揉まれていく事も意味をする。 先日パブで料理を振る舞ってくれたナーティーの視点で語られる、最近世の情勢が良くない方向に流れているという情報。 自分が好む、いつもの平和な酒宴を楽しんでいた常連たちも政府役人の過激な演説に共感していく。 まるで、今まで見てきたみんなが変わってしまったような不安。 地図を背景に語らえる、この世界の歴史と情勢。 どの世界でも、国同士の争いというのか、きな臭い問題は起きるというのか…。 所詮、平和と言うのは戦争と戦争の間でしかないと思ってしまう。 争いもなく生きていけるのが一番良いと思いながらも、1人の国民でしかないナーティーにはただ何事もないのを祈るしかない。 そして地図を見るに下方にある森林の周囲がアイリーンが現在住む家なのでしょう。 国境に近いのもあり、もしこれから戦争でも始まれば何の影響も受けないとは猶更思えないのが不安な所です。 実際は、国規模の争い以前にもっと根本的な部分からの脅威が迫っている事となりましたが。 アイリーンが何故あの場所で監禁とも言える生活をしていたのか。 その黒幕であるフランデルの登場。 さらっと重要な存在であるアイリーンを任せておきながら、アルパチオそのものは数多いる名もなき魔術師の傘下だった事もあり忘れているのはいっそ忘れたままでいて欲しかったなぁという面もありますね。 パトロンがいるのなら、人との繋がりがあるのならいつかはアルパチオが死んだという事もばれるでしょう。 そうなればいつまでも今の家にいるというのは危険でもあった。 だから引っ越しを考えていた矢先という最悪のタイミングなのが……。 私が築こうとしていた平和な日々が崩れていく音がする。 先にあったナーティーが情勢から日常の崩壊を察知していたように。 それよりも先にユメにそれが訪れてしまった。 そして互いに探り合うようなやり取りをするも、もはや戦いは回避不可能…からの、家がーーーーー!? 確かに少し距離を取ったとしても家の近くで戦闘をしていればこうなる事も予想はできたでしょう。 さらにタイミングが悪すぎる事に調査の為にだけきた花円だけでなくフランデルまでこの場にやってきてしまった。 今まで存在も忘れていたのに、自分の娘だと言いアイリーンを自分の手元に置こうとするフランデル。 ここで、OPであったあの台詞がくるのか…、と思ったところでここからはとにかくアイリーンを逃がす為の戦闘が始まる。 ユメが時間を稼いでいる間にラトゥと共に逃げようとするアイリーン。 しかしここで花円が追いついた際は終わったか…?と思いましたが、まさかの味方になってくれる展開!? どうやら本当に花円はフランデルが何をしていたのか把握していた訳ではなく、さすがに外道が過ぎるので見限った。 捕まえるまで戻ってくるな=捕まえなければいつまでも戻らなくて良い、というのはその通りでもこの子もなかなか面白い発想をするねぇ?というのが初見印象でした。 残されたユメについては、ただの夢魔がこんな戦闘能力が高くてたまるかと言わんばかりの強さを発揮。 ぼんやりした予想ですが、嘘はついてないけどまだユメの正体に関して隠されている情報があるのではないか? 本来ならば勝てる者はいないのであろうフランデルの黒魔術もユメ相手には全く効果がない。 死体を自身の影に食べさせている描写は商売の場面でもありましたが、その気になれば喰らう対象は実質制限がない? ユメが自身を表現する際に‟概念”という言葉を使っていたのは記憶にありますが、彼女の台詞から推測するに夢魔と表現するのが一番伝わりやすいだけにすぎない。 時間切れとなりトドメとまではいかずとも、時間稼ぎは充分に果たした所で戦闘は終わり。 正直これはどうあがいても倒せない存在を目の当たりにしたという点で、フランデルにとってはなかなかエッグイトラウマになりそうですね。 視点がアイリーン達の方へと切り替わり。 こうなってしまうと、前もってラトゥを受肉させていたのは正解だったなぁとなりますね。 守ってくれる人がいる事の心強さ、いくら移動手段として馬があったとしてもアイリーンだけでは限界があった以上。 そして合流した花円も事情を説明した事で受け入れる流れとなり、朝になった頃には夢の中でお茶会をしていたというすっかり打ち解けた関係に。 明確に敵対者がいる以上、仲間が増える事も頼もしいですし新しい家を手に入れる事にもなったのは幸いというべきか。 街に到着したという事で以前立ち寄った店に向かうも閉まっている様子。 治安の悪化、実際はこれから起きるであろう戦争の為と思うと何とも痛ましいものがあります。 それでも料理を振る舞ってもらい、ナーティーが新たな家族となったのはまた良い縁が切れずに良かったと言える部分ですね。 料理長に任命!という事でこれでラトゥも家事の負担は減りそうですし。 状況は決していいとは言いきれないながらも、新居で始まる共同生活。 そして、子供はいつまでも幼いだけではない。 知らない間に思った以上に成長していくものなんだ。 そう思わされるアイリーンの心境の変化。 守られるだけではない、自分にも何かができないものかという葛藤。 武術の本を見つける事で、強くなりたいという意志をみんなに伝える事ができた場面。 ユメはまだ、アイリーンの事を守られる子供であると思っているのかもしれませんが本来であれば彼女は推定18歳の大人に近い存在。 今まで散々遅らされていた精神的な発育が一気に刺激を受けたというのか。 自我を持った事で学ぶ事を覚えた少女はいつしか大人への階段を駆け上がっていく。 この作品をプレイしていて特に胸が熱くなったといいましょうか、アイリーンの事を見守っていたプレイヤーとしては自分の子供の事のようにその成長が本当に嬉しく思えます。 武術を学ぶに辺り、ラトゥと協力して互いに強くなっていく…というのも素晴らしいの一言。 元より人形だったラトゥに感情と呼べる物があるのか不確かな部分はあるので、存在意義やそこから生じる使命感と表現をした方が近いのかもしれませんが彼女もまた自分が強くなる事がアイリーンの為になると手札を増やそうとした。 変化があったのはアイリーンだけではなく、その周囲も良い意味で変わろうとしていく。 今、みんなが前を向いて進もうとしている。 こんな日々がいつまでも続いて欲しい。それはとても共感できる一文でした。 しかし、その裏で戦争の気配がある事等不穏な要素があるのもまた事実。 ユメ程の脅威はフランデルとしても想定外であり、簡単に対処ができない以上手を進めたくとも進められない現状。 そんな時に、現状を大きくひっくり返す事となる出来事の発生。 すでに噂という形で、近々戦争の気配はありましたがまさかフランデルの元へ大王が直々に資金提供を頼みに来るという展開を誰が予想できただろうか? ここがこの世界の情勢や登場人物達を組み合わせた上でとても巧く描写されていると思った部分でした。 何かしらユメへの対抗手段を見つけたフランデルが再びアイリーンの所へ行くというのが今後として一番可能性の高い展開だったでしょう。 朝方になればユメが姿を消した事から、時間制限はあれどその間なら何かしら策にかける事も不可能ではなかったはず。 それこそ財力があるのなら、偵察を送り情報を集める部分から入ればより有効な事への手がかりも掴めたでしょうし。 そこを、戦争が近いという事やフランデルが資金の出所はさておけば金持ちでそれまでの描写からパトロンになっても配下に対する関心が薄い位に金銭そのものに大きく執着を見せていない事。 これらを回収しつつ、彼がいくら富を得ても得られなかった公爵の爵位という…まさかの王から直々に名実共に貴族という地位を手に入れる事。 【身分上最高位にいるであろう存在が自分に頭を下げているという事実】 持たざる者として、果たしてこれ程己を満たす物が存在するのか? 罠等の危惧以上にこれを断る理由がない事への説得力として充分すぎました。 この先の大惨事を思うと文字通り悪魔の契約ではありますが、同時にフレンデルという人物を象徴する好きなシーンでもあります。 そしてとうとう始まってしまった戦争。 潤沢な資金はそれだけ兵力を強化する事へ繋がる以上、ここからアレキ帝国軍が勝利をするというのは予定調和だったのでしょう。 本来ならば開発費は当然として、量産にも大幅な資金がかかるであろう最新鋭の戦車部隊を十分な数まで用意できたのは悪魔の契約のもたらした力か。 さらにルリア側としても余計な刺激を与えるのを避けた結果、国境に要塞を予め築く事ができなかったのも悪い方向へ出てしまった。 いくら後方に軍事国ヒッシリアの支援をちらつかせているとしても、自国の地が戦場としては不向きである以上踏み込まれれば不利な結果になるという状況。 アレキ軍としても、相手の得意分野である海戦より地上から速やかに攻め込むつもりでいた事。 情報が武器である事を思い知らされる描写や、少ない兵力で敵の主力と言える海軍を沈めた事等…ここは完全に準備の段階から仕掛けに行ったアレキ軍が勝利するのも当然だったでしょう。 本当に、後は資金的な問題さえ解決すれば戦争で勝てるだけの策そのものは存在していた。 悪魔の契約による最後の一押しによって、それまであった平和は崩れ去ってしまった…。 ここまでだけでももう勝敗は決した…といえる位だった上に、そういえばヒッシリアはどう動くつもりなのか?と思えば。 運も全てがアレキ軍に味方をしていたと言わんばかりのタイミングでヒッシリアの国王が病に伏せっていた事。 その後継者がたった8歳の娘という、とても政治的な問題を任せて良いと言えない年齢であった事。 元より、軍事力があった事も自衛の意味が強く率先して戦争をしたいという方針でなかったとあれば参戦ができなかったのも納得しかありません。 敗戦国において、怒りの矛先がどこへ向けられるのか?その後どんな事が起きてしまうのか。 船頭を欠いた船が真っ当に進めるはずがないように、いくら反乱軍が結成されたとしてもかえって悲惨な結果を生み出すだけにすぎない。 そんな相手に力を貸したいと思える者がいる訳がないというのも当然な心理。 ルリアを挟んで存在する両国の思惑、東西に分断される国。 あまりにリアルすぎる描写の連続ですね…。 結果として、戦争そのものは主にルリア国を舞台とした結果国境アレキの付近にはそこまで大きな損害もなかったのでしょう。 元の家よりは多少国境より遠ざかっていたとしても、場合によっては戦争の影響を大きく受ける可能性もあったアイリーン達の現在。 かつては砂漠の都として親しまれていた町並みも往事の面影はなく無残な照度と化した故郷だけが残されたのであった。 この一文が全てと言うのか、戦争が終わったとしても敵国へ流れていった者にはもう帰る場所が存在しない事実。 せめてヒッシリア側へ逃れていたならまだ慈悲はあったかもしれませんが、わざわざ敵対国に逃れたという以上前提として国境付近に住んでいたという事でしょうから…。 アイリーンとしても、身近に存在する難民の存在を知れば何かがしたいと思うのは自然でしょう。 しかし、個人ができる事には限度もある。 それこそ莫大な富でもない限り、多くを救う為に何かを施す事だって難しい。 ユメの懸念するように、治安の意味合いでも厄介事に巻き込まれる可能性を回避する意味で関わらないのが良いのは違いないでしょう。 それに、声を荒げたように助けたいと思ってもアイリーンは何も持っていないという事実。 気持ちだけでは救えない問題があるという事を認めなければならない。 いくら以前よりアイリーンが成長をしたと言っても、これは酷な話ですね…。 目の前にいる少女に自身の境遇を重ね助けたいと思う。 しかし、実際は目の届かない所にも似たような境遇の子供達は沢山いるという事実。 圧倒的に、救える数の方が少ない事。 1年が経過した事で、アイリーンも以前のような子供らしさが消えてようやく年相応かそれに近い程になったのでしょう。 だとしても、今目の前にある問題はその年頃の人間でもあまりに難題といえる物。 ユメがいくら説得しようにも、アイリーンは反論をするという形で譲ろうとしない。 これが本来あるべきだった、紆余曲折はあれどようやく作られたアイリーンの自我なのだと思うと感慨深いものはあります。 そして、かつて何もわからずに泣く事しかできなかった少女は母となる事を選んだ。 本当に…当初はいきなり家がなくなるし身内もいないし、おなかがすいた!とユメを困らせ本能だけで生きている子供かな…?という状態だったあのアイリーンが次は自分が誰かの親代わりになる事を選ぶようになろうとは…。 子供の成長とは本当にあっという間というべきか…。 新しい家族、ラルも加わりこれからどんな生活が始まるのか。 まだまだ次の戦争の気配が見え隠れする状況ながらも、その中にひとつの希望も同居している良い締めくくりでした。 @ネタバレ終了 最初はファンタジー色が強く怒涛の展開の中、この先がどうなるのか?とハラハラをし。 まさかの展開や現実でも起こりうる要素を交えた話の作りにすっかり引き込まれていきました。 この作品の魅力はやはりアイリーンの成長にあると思うので、子を見守る親のような目線で楽しめました。 続編の方も近いうちに遊ばせていただく予定です。 それでは、素敵な作品をありがとうございました。

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  • Choice&Roll ~冒険者の選択~
    Choice&Roll ~冒険者の選択~
    大変感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 まず、選択次第で善にも悪にもなれるという事でどんなRPをするかも含めて楽しめそう!という点が魅力的に感じました。 レトロゲームブック風という事で、基本はどこか懐かしさを感じるTRPGのような雰囲気や背景としてある世界観。 攻略の本筋とは関係なくとも盛り上げてくれる要素がある作品ですね。 @ネタバレ開始 まずはキャラメイクからスタートという事でここは好みを前面に出しつつ 軍事大国の戦士→人々を魔物から守るため→屈強な剣闘士→ドラゴンを討伐した→最後まで倒れない忍耐 冒険者になった理由にさらっと「犯罪の過去の隠すため」という不穏な選択肢があるのは好きです。 選択肢次第で善にも悪にもなれるというのがここから仕込めるという点やRP設定の幅が広がりそうという点で。 ここを決めていくにあたって今回冒険をする自分はどんな設定の人物なのか? ゲームには反映されない設定も選択肢の内容から膨らませていけるのは考えていて楽しかったです。 結果的に攻撃(6)と防御(7)しか上がっていないという能力値となり >>竜殺しのヒガン(脳筋)爆誕<< いざ受ける依頼を決めたところで、まずは基本といえば情報収集という事で話を聞いたり所持金全てをぶっこんで回復薬を購入したりと準備も万端。 フレデリックから聞けるこの世界の歴史に関する話は世界観を知る上で重要ですし、初見ではロザリンドの操作説明も必須ですしやはり情報は武器…。 亡国から見つかった魔法の杖という時点で、これはそれを盗んだと言われているキャリバンも杖に操られている予感がしますね。 能力値的に、技量が初期値の為アイテムを探すには不向きと思いスライム避けという選択肢は捨てて倒して経験値にしよう方針で進行。 戦闘に勝利すれば迷わず攻撃を上げる攻撃と防御で全てを解決する形へ。 戦いの音?という事で近づいてみれば酒場で名前が出ていたヘレナさんが苦戦しているのを発見。 ここで加勢をするか見捨てるか、善悪に関する部分も出てたなぁ!とワクワクするものがありました。 基本は善人プレイで行くつもりだったのでここは加勢を選択。 そもそも魔物も女戦士に気を取られているなら、別に逃げなくても後ろから奇襲ができるのでは? と思いましたが騎士道精神なのか女戦士の隣にわざわざ行く主人公。 奇襲で片方は倒しておきたかったなぁと思いつつ、どちらの魔物を相手にするか選べるようなので自分の能力値と相性がいいのはどちらかを迷いましたが恐らく大きな魔物の方がダメージは大きそうだけど脳筋戦法でやりあうにはいい相手か?と選択。 苦戦はしましたが何とか回避を潜り抜け必殺を当てられた事もあり勝利。 同行者としてヘレナさんも加わり舞台は森へ。 無事に目的地に到着したところでどこかで名前を見た気がするシャイロックさんと遭遇。 遺跡の調査にきた、プレイヤーにとっては行商人も兼ねた人かな?と思えば…選択肢の真ん中が悪人プレイをするなら選んでくださいと言わんばかりの物が。 善人プレイをすると決めた以上、殺害して道具を奪うのはなしで。 というか、同行者がいるのにここで殺生をしたらどう思われるかも怖い物がありますね…。 幸い先に進む程売却レートが上がっているという訳でもなさそうなので先程の戦闘で消耗した回復薬を全額投資をして補充。 魔法の矢も欲しいところですが、このプレイスタイルだと回復薬を切らさない事が生命線になりそうという判断より。 探索中に見つけた書物から、これは杖に操られていたのではなく元々野心家だったパターンかな?と推理をしながら家探しは冒険者の特権と回復薬をゲット。 反対の通路にいけば鍵を持った魔物を発見、これは敏捷が高ければ余計な戦闘を回避できたのかなと思うも不意打ちから仕掛ける事に。 プレイヤーの方針によっては悪人プレイもですが、こういう場面で器用さを利用して立ち回るプレイングもできるというのはいいですね。 入口から右も探索すれば先客がいたようで、宝箱の鍵を開ければ横取りをされる展開へ。 100リアを払おうにも50リアしか持っていない上にこの宝玉は恐らく重要アイテムの予感がしてならない。 …という訳で私から奪ったお前が悪い!とここで初めての人間相手の戦闘へ。 みねうち程度で済ませるつもりでしたがどうやら死体になってしまったか…と思いつつやはり宝玉の名前からほぼ必須アイテムだったのを再認識。 これで寄り道も終わったと正面の扉へ行けばそこには先に旅立ったと言われていたロレンスさんが! キャリバンに呪われたせいで操られているという事で、ここは先程ころしてでもうばいとるをしてきた宝玉が早速使える場面だと使用すれば同行者も増えて最終決戦への準備も整ってきました。 再び入口に戻って回復薬もしっかり購入。 最奥に到達し、使い魔を物理で殴る!上げられる能力値はここまできたら攻撃だと上げる! 連戦として魔神キャリバン戦へといきましたが、ここで今までに見捨てたり殺害した人間の数に応じて敵の強さが上がる仕様ときましたか…。 初回だし、と善人プレイをしていた事を正解と思う瞬間でした。 それでもなかなか敵の火力が痛い分、苦戦はしましたが実は魔法の矢が優秀だったのが最後の最後で判明したのと同時に撃破成功。 危険物である杖は結果として破壊されたのもあり世界の危機を回避する事にも成功となりましたね。 同行者であったヘレナさんとロレンスさんも今後も一緒に冒険をするという事でグッドエンドとなりました。 @ネタバレ終了 プレイヤーによって、能力値の振り方やRPの方針から展開される物語が変わるというのは良かったです。 力こそ正義とばかりに遊んでいきましたが、それ故に選べなかった選択肢もまたどんな展開になるのか? こういった方式のゲーム故の楽しみ方が堪能できると言えましょう。 それでは、素敵な作品をありがとうございました。

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  • ファンタジー世界であった怖い話
    ファンタジー世界であった怖い話
    大変感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 怖い話に関するゲームは数あれど‟ファンタジー世界で”というのはなかなか斬新な設定と目を引きました。 内容としては先輩冒険者から経験談としてこれまでに体験した怖い冒険についての話を聞く、この世界においては隣り合わせにある怖い話という視点。 プレイヤーにとっては別世界の怖い話という事もあって不思議な話のような感覚で読み進める事ができますが、もし自分もこんな世界にいたら? 少し視点を変える事でまた感じ方が違う題材と言えましょう。 @ネタバレ開始 最初は酒場で先輩冒険者達から旅の心得を聞いていたはずが、各自の直面した危険な体験談へ。 実際ありえる想定として本題に入る前にシヴィルさんが言っているような死の危険も存在するでしょうが、実際死んだらどんな経験だったか知れませんからね。 ここで話を本題として持って行くにあたって確かにと思えたのがバジルさんの発言でしょうか。 「ほかの冒険者から聞く話は、たいてい武勇伝や成功譚ばかりだからな」 それも誇張されたホラ話が多いとなれば確かに先輩方でもそういった他者の話を聞くのはあまりない機会なのかもしれません。 ◆人ならざるもの こういう時は左から順番かな、とまずはバジルさんの話から。 駆け出しである主人公に目線を合わせてくれたというべきか、バジルさんにとって最初の冒険のお話という事ですね。 若さ故というのか、まだ世界の広さも知らないし自分が強いと疑わない故の無謀さというのか。 本来冒険者なら夜間の行動は控えるべきという原則を無視した行動をし依頼のあった村へ到着したバジルさん。 どうやら人間に化ける魔物を退治して欲しいという事でバジルさん自身もその魔物に関する噂は聞いたことがある様子。 いざ、村の近くにある森へ向かい魔物が潜んでいそうな洞窟を発見。 しかしいくら進んでも何も出てこない…と思いきや、違和感を覚え何故自分の影は前へとのびているのか。 後ろに光源がある可能性と共に流れる不吉なBGM…。 とっさに背後へ向かって斬りかかるとそこにはこちらの攻撃が当たったであろう、負傷した女性が。 この人がもしや人に化けるという魔物のウーズ? しかし、何やら引っかかる発言もしているのが気になる…。 ここでバジルさんがどうしたかを選択できるようですが… もし相手が魔物であれ一撃は入れている以上こちらの方が有利。 かつ、引っかかる事がある以上話を聞く一択でしょう。 こちらが有利であるというのはバジルさんも同じ認識のようで、話を聞いてみれば彼女はウーズについての知識があるようでした。 ウーズは熱に弱い、予想以上に数が多く村一つを丸ごと皆殺しにして成り代っている。 この場面で村人とのやり取りの際に松明を怖がっていた描写が思い出されますね。 確かにリザさんの話が本当であればそれも説明がつきます。 確認の為にリザさんと村へ戻れば背後からの殺気。 後ろへと剣を振るえばそこにはさっきの村人が。 一見すれば人を斬ってしまった状況ですが、リザさんの言葉通りに松明を近づけると村人はウーズの姿へ…! さらに周囲からもう擬態する必要はないとばかりにウーズが群れを成して出てきた事でリザさんの話が本当だった事は証明されましたね。 一歩間違えれば魔物に利用されるところだったという危機。 ギルドへ出されている依頼ですら、実は人間が出した物とは限らないのが何ともトラップすぎるでしょう。 人間が出していても100%信用できると限らないのに…。 結果的にはそこからバジルさんはリザさんと旅をする事になりめでたく結婚したという事でオーライではあれど。 もう片方の場合も気になったのでそのまま攻撃したらどうなるかも試しました。 すでに結末を知っている以上この行動が何をもたらすのかわかっているだけに心は痛みましたが…結果女性は死んでしまう事に。 ここでようやくバジルさんも想定するべきだった可能性が恐ろしくなったようで。 人間に化けたウーズが死んだら、死体は人間の姿のままなのか? …確かに何かに化ける魔物というのはファンタジーにおいて多々あれど、大抵は本来の姿に戻るイメージがあります。 しかし、その嫌な予感を振り払うように村へ戻ってみればそこには水の入った桶を持っている村人が。 最初に接触した際、松明を怖がっていた以上やはり用済みになればそれを消す用意をしていたのでしょう。 火が消えた途端、そこにはウーズの姿がありかろうじてまぐれ当たりで倒せたものの村はすでにウーズに乗っ取られていた…。 そして村から逃走し、ギルドに結果を報告したところ討伐隊が組まれはしたけれどすでに村はもぬけの殻に。 残っているのは犠牲者の遺品であろう物だけ。 あの洞窟にいた女性もウーズだったのか確認しようとした所、洞窟に死体は残っていなかった為真相は闇の中…… なんて事はなく、ウーズの弱点である熱源だった松明を持っていた彼女は確実に人間だった事を知る事に。 ただ力が強いだけでは駄目な事だってある。 知恵というものがどれだけ大事なのか、もしこれが明るい時間であればまた何か違ったのか。 人を殺め、魔物を取り逃がしたという結果だけが残る後味の悪さを残した体験談となりましたね。 ◆血塗られた宝石 冒険者の仕事と言えば何を思い浮かべるか? やっぱり定番は魔物退治、それもドラゴンとか?なんて想像してしまいますがシヴィルさんが挙げているように実際は様々な物がありますね。 どうやらシヴィルさんが一番好きなのは宝探しのようで、その際に経験したお話のようです。 ファンタジー世界らしい職業の一つとも言える探索屋をするエリックさんから遺跡の情報を入手。 情報料として宝の分け前を要求するというのはこういった世界観ならではですね。 いざ現地に到着してみれば、シヴィルさんの勘も「当たり」だと思えるような場所のよう。 しかしいざ地下へと入ってみれば本能的に危機を察知するような場所でもあり、お宝はあるとしても相応か釣り合わない危険が待っているのでしょう。 それでも宝探しに危険は付き物と進めば案外あっさりと最深部まで到着し、一個の赤い宝石を発見。 見ていると心臓を鷲掴みにされるような、説明しようのない怪しさがあった。 …まさか呪われた宝石?ブルーダイヤ辺りが有名でしょうか。 現実でもそういった話はよくある以上この宝石もその類なのかという予感がひしひしとします。 直感的に宝石から視線を逸らして対策をしたシヴィルさんと違い、そういった勘が働かなかったのかエリックさんは魅入られてしまったようで。 口からこぼれる台詞も完全にそういう時に発するであろう内容ですね…。 そしてやはりというべきか、宝石に魅了されてしまったという展開へ。 さらに悪い事は重なるというのか、宝石をとった事で本来の持ち主であろう骸骨が出てくるという事態に。 ここで選択肢ですが、これは骸骨もまずいしエリックさんを放置するのも嫌な予感しかしない。 宝石がトリガーになっているなら台座へ戻せば助かるのではないか? 窃盗が許されない場面におけるトラップとして王道でしょう。 そういう意味でもまずはエリックさんを正気に戻す事を優先しました。 荒療治とはいえ殴ってしまえばそのショックで宝石を手放した事もありエリックさんは正気に戻り。 宝石は床にあるので元に戻せないですがこうなればもう逃げるしかないのは仕方ないでしょう。 というか、骸骨としては宝石に触れた時点で手放してもアウト判定だったらしく攻撃をされる流れへ。 執念がそのまま強さに反映されているかのように重たい一撃。 こんな奴を一体相手にしているだけでも厳しいというのに増援として出てきた骸骨達までいるとは!? と、思いきや骸骨兵の目的はこちらへ敵対する為の増援ではなく宝石の様子…? さらにこちらが相手をしていた骸骨も参戦して宝石の争奪戦が開幕するという展開へ。 幸いこちらを狙っている訳ではない事もあり、その隙に脱出すれば宝石についての詳細が後日判明。 宝石が好きな公爵の略奪品、その中でもひときわ美しいとされた赤い宝石が存在していた事。 あまりの美しさのせいか、宝石を巡って館の中で殺し合いが発生し公爵や兵士はおろか召使いたちまで武器を持って斬り合うという事が起きたという話。 エリックさんの反応の時点で予想はできましたが、やはり人を魅了する呪いの宝石だったのでしょうね。 館で起きた惨劇のせいで血を浴びた宝石がますます妖しく輝くようになったというのがまさしくその魔性を示しています。 死後も宝石の奪い合いは続いており、自分が死んだ事にすら気づいていない…。 宝石の魔力と人間の欲深さ、どちらも恐ろしいと言えますがこれはまず欲深さがないと成立しない式と思えば…。 でも、それを利用する存在も大概と言えましょう。 やはり選ばなかった方も気になり、骸骨に攻撃を仕掛ければ持っていた盾に防がれてしまいダメージは通らず。 それどころかさらに他にも兵士風の骸骨が複数出てくるという窮地へ。 狙いはエリックさんのようでこちらが逃げるように叫んでも全く気付く様子はない。 宝石に魅入られた時点で他者の声なんて届かなくなってしまったのでしょうが…。 何本もの剣に突き刺され死んでしまうエリックさん。 次はこちらが狙われるのか?と思えばどうやら骸骨兵の狙いは最初から宝石のようでシヴィルさんと交戦していた骸骨も含め宝石を巡って争いだす展開に。 バジルさんの時同様、話の本筋が変わらないのならやはり優先事項を間違えたIFルートという事なのでしょうね。 そしてさらに後日談として、他の冒険者が例の遺跡に入った際の目撃談が予想はできてもなかなかでした。 一人だけいる、肉の身体を持ったアンデッド。 全身を切り刻まれても宝石を手に取ろうとし続け、肉が削げ落ちていき白い骨が露出していく様は最終的にあの骸骨兵と同様になる事を示唆している。 死後も虜になってしまう呪いの宝石がある。 犠牲者が出ているという点ではバッドなのでしょうが、こちらの方が後日談も含めより宝石の魔力を感じる内容として好みでした。 ◆ローズの墓 最後はヘンリーさんという事で、彼としては怖い話という事でこれしかないと決めていた様子。 今までの体験談が危険と隣り合わせの冒険という内容だったので、やはり失敗すれば死者も出る。 そして、その亡骸を丁重に葬る事もまた必要な事である。 他の二人と違い僧侶でもあるという視点が活かされた内容ですね。 今回は若くして亡くなった冒険者であるローズさんを、彼女の生前の願い通り緑豊かな場所へ眠らせてあげるようです。 恋人であり共に冒険をしていたセドリックさんは酷く落ち込んでいるようでしたがこれも冒険者であればあり得た結末でしょう。 ヘンリーさんの言う通り、後は時間が解決してくれるのを待つしかないと思えば聞こえてくる奇妙な噂。 すっかり酒場に姿を見せなくなったセドリックさんの様子がおかしい。 しかも毎晩どこかへ向かっている? この状況で向かう場所といえばローズさんが眠る墓の一択と思えますが、それにしても尋常ではない様子というのは気になります。 何故昼間でなく真夜中に向かうのか…ヘンリーさんの疑問もごもっとも。 なんて思っていれば、さらに奇妙な目撃情報が…。 手から血の雫を落としながら戻ってくるセドリックさんを目撃した…? 理由をきけば、死んだはずのローズさんが自分の血を欲しがっているからと答えたというのも変と言えましょう。 毎晩彼が出かけるのも理由として裏は取れましたが、まるで死んだ彼女がまだ生きているかのような口ぶりというのが奇妙ではあります。 幻聴を聞いた…にしても違和感は拭えません。 そして、夜に出かけるセドリックさんを尾行する流れとなり何が起きているのかを確認すれば… 死んだはずのローズさんが呼びかけに応じて姿を見せた? さらに今日の分の血を要求する彼女に何の疑問も持たず与えるセドリックさん。 こうすればまた生き返る事ができる。そして二人で幸せに暮らしましょうと甘い言葉を囁くローズさんは何者なのか。 きっちり弔いの儀式をした以上、アンデッドではない。 ふと、奇妙な事に気づき視線を彼女を埋葬した木の方へ向ければ…これ完全にモンスターだ!?という姿が。 こうなれば対処するしかないと選択肢が出ましたが、やはり片方は不幸な結果となるのは予想ができます。 吸血樹そのものをどうにかするのも重要ですが、まずは目の前にある幻を消すのが先でしょう。 こちらがその為に呪文の詠唱を始めればセドリックさんも吸血樹もヘンリーさんに気づいた様子。 すぐにヘンリーさんを殺すように叫ぶローズさんの幻、けれどあまりに突然すぎるその言葉にセドリックさんもさすがに戸惑っている。 その間に詠唱が終わり幻を消し去れば、本体は露わとなりもはやこちらを騙そうにも声の真似すらもできない吸血樹。 結果、彼女の姿で騙し続けた報いというべきか…セドリックさんの詠唱した魔法により吸血樹が燃やされたというのは迎えるべき形だったと言えましょう。 後日談としても徐々にセドリックさんもローズさんの死から立ち直り冒険者として復帰したようで一安心。 興味深いのが、本来の彼は理性のしっかりした人物であり平常時であればこんな偽物に騙される事もありえないはずだった。 けれど、そんな人物の精神を弱らせてしまう程死別という物は測り知れない悲しみがある。 ありえないはずなのに、自分の血によって彼女が生き返るかもしれないという希望にすがってしまった事も。 人を騙すという意味ではウーズの時もそうでしたが、弱った心の隙間に付け込む…そんな魔物も存在するというのは恐ろしい物です。 個人的にはこっちの方が悪質と思えますね…。 バジルさんの話が肉体や戦いという意味の強さを持った冒険者でも駄目な場合があるケースでしたが、こちらは心身共に屈強であっても必ず人には弱点はあるというのもあわせ。 こうなると嫌な予感しかしませんが、もし幻を放置したまま樹を攻撃すればどうなるのか。 僧侶であるヘンリーさんが攻撃呪文を使える訳がなく、杖を持って駆け出す事しかできない。 となれば、その攻撃対象が何なのか誤解がされるのも仕方ないでしょう。 「いや!セドリック助けて!」 幻も放置している以上、セドリックさんからすれば攻撃対象がその背後にある吸血樹でなくローズさんの幻だと思えるのも当然。 彼はまず何が起きているのかを理解していないのだから…。 結果、やはりのやはり出てしまった犠牲者。 背後から伸びた枝に心臓を貫かれ、幻である彼女が本性を見せても事態を把握できないセドリックさん。 ようやく自分が騙されていた事を悟れば、せめてヘンリーさんを助ける為にと息も絶え絶えの中で呪文を詠唱し最後の力で吸血樹を燃やす事に成功。 …しかし、彼は胸を貫かれたままその身体は自らが放った炎に包まれてしまった。 そして、あのまま死んだと思われた彼はあの時点ではまだ生きており…亡骸はローズさんの墓の近くへ這いずるような形で倒れていた。 恋人のそばで逝けた事を唯一の救いと見るべきか。 もう一つの選択肢の先を知っていると何とも言えない気持ちもありますね…。 ◆魔王の予言 全ての話が終わったかと思えば魔法使いであろう風貌の女性、ノーラさんが登場。 どうやら大魔女と呼ばれるような人物らしく、知恵者のよう。 彼女が話すのは魔法文明時代の古文書によく出る文章とされる『魔王の予言』についてのお話。 予言によれば遠い未来に現れ世界を滅ぼすとされているものの、力が強すぎるあまり人間界に現れる事ができないという存在のよう。 それでも、魔界に留まりながらもこの世界を侵略する機会を狙っておりこちらとあちらを繋ぐ『門』の完成を待っている。 千年前の古文書には、門が完成するのは千年後と書かれていた。 これの意味する事は…十中八九近々恐ろしい事が起きるという内容でしょう。 魔王が現れたらこの世界に何が起きるのか、想像したら面白いと思わない?と締めくくるノーラさん。 冒険譚ではないですが、あくまで話したい事を話しただけのようですね。 そして、魔王とくればやはり勇者というカギになる存在もいるようで。 勇者が何者なのかはわからない。 お開きとなり、自身の部屋で眠ろうとするも先程の話が気になっていればその後に見た夢は… 夢の中でこちらに語り掛けてくる魔王。 そんな予感はありましたが、どうやら主人公こそが勇者当人だったようで…。 世界の半分をやろう…ではありませんが、取引を持ちかけられる流れに。 もしも魔王の邪魔をするならば殺すけれど、右腕となりその力を魔王の為に使うのなら見逃される? ここは選択肢として「いいえ」の一択でしょう。 この感想文を書くにあたり「はい」も試しましたがですよねー…というか、だれうまというか…でしたね。 そして「いいえ」を選べば自覚を持った事で力が覚醒したのか、激しい光に包まれる主人公。 撃退に成功するも、あくまでこれは夢の中。真の決着は持ち越しのようですね。 …こっちが握り潰される分には死ぬのに理不尽だな? 無事に朝を迎えれば、昨日話を聞かせてくれた4人が主人公最初の冒険についてきてくれるという展開に。 ここから勇者一行による冒険が始まる…希望のある締めくくりでした。 @ネタバレ終了 各話につき1箇所ある選択肢。 それにより違う展開も楽しめる為セーブも活用しつつ全ての展開を楽しませていただきました。 ファンタジー世界の住人にとっては隣り合わせの日常でもある冒険譚。 最終話からの展開もまさにタイトルに相応しい流れで良かったです。 それでは、素敵な作品をありがとうございました。

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  • 現代都市怪奇録
    現代都市怪奇録
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 タイトルの通り、現代においてありえるだろう状況から始まる短編5本の物語。 選択肢もあるので分岐による展開の違いも楽しめますが、どれも手軽に読み切れるのでサクっと怖い話を楽しみたいという時に最適だと思いました。 @ネタバレ開始 ◆第一話 初めての引っ越しと新生活という時期的にもよくある状況。 選択肢があるという事で確認できるルートを全て読ませていただきました。 引っ越し先がまさかの事故物件だったというこれもまた実際にあり得そうな展開。 説明がなかった辺り、多分間に誰かしらが1度入居したので説明義務がなくなっていたのかな…?等と推測をしつつ。 現代では珍しいかもしれないですが、やはり隣人位には引っ越しの挨拶をするのが当然かなと選択肢を選べば不穏な情報を聞く事に。 これは余計な事をせず知らない方が幸せな展開だったのかな…と思いましたが、次の選択肢で勇気を持って振り返ればちゃんと人違いというのが判明して生存しほっとしました。 そして、もし振り返らなかったら?とこちらも試してみれば…隣人が見間違えたという事は後ろ姿だけでは死んだ彼女からも違いがわからなかったのでしょうね。 恐怖心から動けない人が多そうですが、勇気を持って行動すれば助かったのに…というのを知っているとやらかしたなぁという感は強くなりました。 次に、挨拶をしないルートの場合もやはり部屋の中にある『ユルサナイ』と書かれたメモ用紙。 後の展開を見るに、これは隣人の話を聞いておいた方が結果的には生存率があがるヒントになったんだろうな…となりました。 どちらにしても、生還しても彼女は成仏していない以上この主人公がここを出て行ったらまた次の人が…という余韻を残しながら。 ◆第二話 うっかり肝臓の限界値を見誤った結果入院になってしまうというやはり日常にありそうな導入。 タイトルの『現代都市怪奇録』の通り、生きていれば思わずあるあると言いたくなるところからホラーな展開に入るというのが良いですね。 大部屋に入院のはずが満室になっていた為、個室を大部屋と同じ料金で使用できるという一見すればありがたい展開。 しかし病院あるあるというべきか、やはり何かいわくつきであろう会話からすでに嫌な予感が止まりません。 噂の内容を質問できる選択肢があれば聞かない手はないでしょう。 内容としては誰も悪人がいないのに悲しい結果になり今も成仏できないでいる心臓外科医の先生に関するお話が判明。 本来、担当するはずだった患者さんの手術日の前後になると目撃情報があるというのも完全にこの後の展開を察してしまったというべきか…。 その気持ちを代弁するように主人公が確認すれば、その日はまさしく本日であるという絶対に何も起きないとは思えない事実が判明。 そして夜中になれば死んだ先生によってストレッチャーで運ばれていくという展開へ…! 叫ぼうにも声は出ない、だから当然と言えば当然だったのかもしれませんが助かろうと叫ぶ選択肢を選べば手術室のランプがつくのを見送りつつ終幕へ…。 仮に死んだ先生の腕が良くても、代わりに入れる人工心臓なんて用意がされていないと思える以上これはどうあがいても駄目だった流れでしょうね。 暴れてみればストレッチャーから落下するも無事生還へ。 院長らしき人から口止め料であろう迷惑料としてのお金や入院料が不要という説明をされた辺り、話の最初に出てきた先生のように信じていない人もいるのでしょうが実質公然の秘密だったのでしょう。 むしろ、質問をしようにもやたら遮られたという一文があった点を考慮すると、表向きは信じてないというスタンスで黙認をしていたのか。 病院という心霊現象の起きやすい場所らしい怖い話でした。 ◆第三話 忙しい社会人ならきっとあるある、終電を逃すところからの始まり。 走って向かったにも関わらず無慈悲にも出発していく電車、徒労感。 思わず、お疲れ様です…。と心の中で思っていれば先程出た電車が最終のはずなのにやってきた次の電車。 こういったお話で終電の次にくる電車というともうそれだけであの世へ直送されるんだろうな!と恐怖とワクワクが尽きない状況ですね。 自分以外誰もいない無人の車両。あまりにも静かすぎるという違和感。 それを意識すれば他にも乗客がいたようで、それは中学時代の恩師のようでした。 そこでの会話自体は久々の再会という懐かしさや「どいつも中学の時のまんまだ。若造だよ」という教師らしい発言に微笑ましくなりますが…絶対それだけで終わらせてくれるはずがなかった。 やはりというか、先生はすでに故人でありよく見れば顔色も死人のよう。 そして、どこか不明ながらも駅に到着しこのまま死人である先生と一緒にいる状況に危機感を持ちながら降りようとすればこちらの肩を掴む冷たい手。 正直、これはどっちも生還できないという直感がしますが終点があの世である場合は降りた方が賢明でしょう。 しかし外へ出てみればそこは何もない奈落であり、地獄だというアナウンスが…。 現実でも主人公は翌日死体として発見され、事故死として処理されるも直前に味わった恐怖からその表情は…という終わりへ。 次は嫌な予感がしつつも先生の忠告に従い立ち止まれば場面は駅のホームへ。 どうやら主人公はずっと終電を見送った後もこの場に留まっていたようですね。 確かに、もう一方のエンドではホームから転落した死体として発見されていると考えればそちらとも繋がります。 主人公の思うように、もし先生が助けてくれたというなら怖いながらも良い話だなぁという締めくくりなのが好きです。 ◆第四話 罰当たりというワードの時点でこれはどうあがいてもバッドエンドでは…?という期待が満載。 再生数目的に、心霊スポット凸動画を上げるという時点でやってはいけない事をしている感がありますね。 巻き込まれたのであろう寺西は「時代遅れ」という理由から反対していたようですが、こういう場所に面白半分で近づく事自体がもう禁忌と言えるのが。 まだ、昼に来ている分あまり恐怖心もそそられない状況ながら目的地である呪われた祠へ到着。 この祠に対し罰当たりな事をするというのが次の目的になりそうですが、一見すると呪われている感じがしないという辺り状態は綺麗だったのでしょうか。 例として「落書き」をすると高熱や病にかかるとあるのならその痕跡がありそうだなという意味でも。 (もしかすると、誰かが定期的に手入れをしているかもしれないながら心霊的な力で自浄作用があるのでは?と推測ができるのは良いですね) 問題の罰当たりな行動はどうするのかと思えばまさかの鉄パイプが登場!? それは二重の意味で死ぬからやめておけ!炎上商法で社会的に死ぬのと祟りで死ぬの両面という意味で!! しかし、祠は破壊され急な降雨が。 ついでに、結果解き放たれたのであろう何か?がこちらを見ているという何も起きない訳がない流れへ…。 そして帰宅後も林の中で見た視線の事を思っていれば、かかってきた電話から祠を破壊した主人公でなく同行していた寺西の方で何かが起きた様子で「そっち!?」という怒涛の展開が。 選択肢が出てきましたが、これはここまでの行いの時点でどちらにしろ主人公は助からないのが予想できました。 イタズラだろうと思えば、スマホがいつの間にか血濡れになっているという展開へ。 部屋の外から響くノック音。 ドアポストからこちらを見る何かの目、破裂音。 結果として、因果応報というべきか火災により亡くなった主人公。 寺西もあの電話の後、すぐに亡くなっていたのだろうなと思わせるニュースのアナウンスから「だから言わんこっちゃない」という結末ですね。 良心に従い寺西を助けに行く方を選ぶと、反応から思ったより友情に熱い主人公だった?と思わせてからの「動画が100万回再生されるような大スターになるという俺のビッグドリームも遠ざかる」と理由はそこかーい!という動機にある意味安心をしたというべきか。 何かが自分の所へ迫っているという内容の電話だったのもあり、すでに何者かによってぶち破られていたドア。 それをさらに蹴破るというドアへのオーバーキルを入れつつ到着すれば、どうやら間に合った様子。 さらに出てきた選択肢はこれまでの行いを考えれば下がまだ生存できそうなルートか?と必死に謝れば神様は伝えたい事を残しその場から去ってくれる流れへ。 後日、しっかり破壊した祠を修繕すれば無事に生還はできたようで一安心……と思わせてからの林の奥に光る目。 悪い事をすれば、神様はそれをちゃんと見ているという教訓と考えるのがいいのでしょうね。 殴りかかればやはり爆発オチならぬ火災オチという辺り、罰当たりな事をしたのは前提であれ反省は重要だったという事なのでしょう。 ◆第五話 生粋の怪談好きな友人との話という、これも好奇心旺盛な学生ならどこかでありそうな光景ですね。 個人的に、現代だからこそ怪談なり心霊なりとある種の無知が生み出す神秘のある話は存在が薄れていると思うので彩葉ちゃんの文句はくすっとしましたね。 でも、確かに近年オカルトブームは去った分そういうのが好きな者には物足りないのも事実。 そして、怪談がないなら作ればいいと自作の話を生み出す展開へ。 怪談をあくまでフィクションの娯楽と割り切っている辺り、彩葉ちゃんはまだちゃんと棲み分けができている印象ですね。 本題の怪談製作については、完全な作り話でなく本当の事も混ぜる事で信じてもらえるような内容にする方針へ。 選ばれた真実の成分は、以前田奈川添いの道路で交通事故があったという事。 実際に彩葉ちゃんが体験し、現にこうして彼女は生還しているけれど創作としてはその被害者が死んだという形で取り入れる。 地元の人間なら詳細まで知らずとも確かにそんな事故があったような、と思えるというのは良いチョイスでしょう。 いざ噂を流してみれば、さらに尾ひれのついた状態となった怪談は『顔無しさん』という話として広がる事に。 彩葉ちゃんとしては目的が達成でき、予想外の尾ひれもついた事に満足げですがここで止めるべきか否かの選択肢が。 元が作り話だったとしても、人々が噂を広める事により言霊から新たな怪異は生み出される。 その概念がここでも通用するなら止めるのが正解なのでしょう。 その後も、顔無しさんには新たな設定が追加されていき最初の話にはなかった狂暴性も付与されていく…。 そしてとうとう目撃者まで出てきてその人は入院するという事態に。 さすがにこれは怪談を作った責任もあるという事で犯人を捜しに現場へ向かう展開へ……絶対目撃するんだろうなぁという予感を伴いながら。 現場で時間になるのを待てば、突如現れた彩葉ちゃんにそっくりな誰かの人影。 主人公の違和感も尤もな事で、元になった体験談が彩葉ちゃんのものだとみんな知らないはずなのにどうして彼女そっくりに変装をしているのか? 肝心の彩葉ちゃんはその違和感より怒りが先行しているようですが、これはつまり…ドッペルゲンガーではないのか。 「ミツケタ……ミツケタ……ホンモノ……ミツケタ……」 恐ろしくも、どこか悲痛な響きを含んだ声で事実事故を経験していた彩葉ちゃんに近付く顔無しさん。 何とかその場から逃げ出し、それからも怪談に設定は増えていくもやがてみんなは顔無しさんの噂に飽きたのか忘れられていった。 しかし一度具現化してしまった怪異は、人々が噂をせずともきっと存在し続けているのだろうなという意味で最後の言葉が沁みました。 人でなし!なのを覚悟で見捨てる方も見て見れば、これは成り代わってしまったのか? 恐らく顔無しさんに皮を剥がされ悲鳴をあげていたのだろう彩葉ちゃんは昨日の事を知らないというように振る舞っている。 全ては作り話で、本当にあったはずがない、そう思いたい主人公。 だからこそ…彩葉ちゃんの顔にうっすらとある傷跡がその可能性を否定しているのにも気づかないふりをするというのが後味の悪さも含めて良い味を出してますね。 @ネタバレ終了 どの題材も日常的に想像がしやすい分、もしもそこでこんな展開が起きたら? という思わず想像できてしまう恐怖が魅力的でした。 個人的に、選択肢とそこから分岐する展開を含め一番好きなのは第三話でしたね。 それでは面白い作品をありがとうございました。

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