アオノソラのレビューコレクション
-
雨にして人を外れ降り続く雨は、いつの間にかこの世を異界に繋げてしまいそうな妖しさに満ちています そんな雰囲気を舞台装置に、美しく秘密めいた先輩と、彼女に惹かれる後輩男子の、甘酸っぱくも怪しい関係が展開されます モノクロの画面が、すでに現世が隠世に侵されつつあることを暗示しているかのよう 読んでいる側も人から外れてしまいそうな、そんな作品でした @ネタバレ開始 こんな先輩なら、たとえ妖でもずっといたいと思いました いつかは破滅が来るとしても @ネタバレ終了
-
ティラノフェス2021オープニング
-
エソラノコト淡麗な色使いのイラストがとても印象的でした。センスの良いデザインと裏腹の、友達の少ない、いない、少しビターな青春が描かれています。 @ネタバレ開始 エソラは果たして幽霊なのか、主人公の想像(妄想?)なのかは判然としませんが、いずれにしろ思春期のひと時だけ交わりうる期間限定の存在であり、別れが運命づけられています。 でもそのような、心を寄せつつも実を結ぶことのない経験は、青春には不可欠です。叶わない恋だったり、夢破れて膝を屈する経験だったり、進むべき道がわからない懊悩だったり、人によって形は違いますが。 作者さんはその一つの姿を、独自の切り口で表現していたと思います。 @ネタバレ終了 少し切ないのに前向きな気持ちになれる、素敵な作品です。
-
逢魔時の家路(リメイク版)逢魔時に出会った二人の関係が最後に明かされ、ぎゅっと胸が締めつけられました。5分くらいの短い物語で、登場人物は二人だけなのに、紡いできた時間や取り巻く人々の情景が心に浮かぶ、巧みな描写が印象的です。切ないピアノ曲の選択もまた素晴らしい。ノベルゲームならではの、音楽と文章、そして丁寧な筆遣いのイラストが織りなす世界に、心を揺さぶられる佳作でした。
-
ひとつだけ願いが叶うなら。初めから結末はなんとなく予想できるので、とりあえず黒魔法からバッドエンド回収に行くか、と多くの人が考えると思います。それで正解です。でも、白魔法を選んでも…。 @ネタバレ開始 他人から与えられた強大な力で自分のほしいままに振る舞っても、たとえそれが他人を傷つけないものだとしても、幸せにはなれない。でも、その力を他人のために使うのなら、世の中はきっと変わっていく。 当たり前のことですけど、とても重要なメッセージだと思います。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございます。
-
夢見た少女のニルヴァーナとても楽しく読ませていただきました 構成要素の一つ一つはフィクションだとしても荒唐無稽すぎないか?となるものも散見されるのですが、物語のテーマが強く、一気に読ませる勢いがありました
-
非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore先輩後輩の気怠くもセンス溢れる会話、軽妙なLofi、都市伝説から社会問題へと急展開するシナリオ、個人の力の限界とそれでも一歩踏み越えるささやかな異議申し立て、これらが織り合わされて実に心地よい物語世界が展開されます 前作「深夜徘徊のための音楽」と同様に、寝る前の布団の中でプレイするのがおすすめ Lofi に脳を揺らされながら、二人と一緒に路地裏で都市伝説を追っかけてる気分になってきます
-
等速運動の君へ一気読みしました! @ネタバレ開始 常に前を行く霧崎に焦りを感じていた武部が、彼女もまた先を歩くが故に傷ついていることに気づき、どこに行こうがその帰りを待つ覚悟を決めたのはかっこよかったです 昔、同じような経験をしたことがあり、感情移入しました (一学年上の彼女が自分を置いて世の中に出ていくのが耐えられず、「ついていけない」と言って傷つけてしまいました 武部のようには待つ覚悟ができず、結局振られてしまいましたけど) @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!