かおりのレビューコレクション
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ぽんこつラーメンラーメン屋の大将が、お店に来た女性のお話を聞いてあげる掌編ノベル。 女性が大将に励まされ、ラーメンを食べて前向きになる様が描かれたお話でした。 (以下、ストーリー内容のネタバレはありませんが畳みます) @ネタバレ開始 が、しかし!!!! それだけで終わらない物語に衝撃を受けました! 嘘やろーーーーー!!!!! あまりに信じられなくて5回くらい読み返しちゃいました。 @ネタバレ終了 作品概要にもタグにも、内容に関する記述が一切ないところに深い意味と意図を感じます。これは絶対ネタバレを知らずにプレイすべき作品だと思いました。 とても面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!
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400円にして返します通勤途中、1人の女性に200円を貸したことから始まる日常系短編ノベル。 200円を倍額400円で返してくれるなんて太っ腹だなーと思いつつも、二人の交流がほのぼのとしていて微笑ましかったです。 @ネタバレ開始 ので、全くオチが読めませんでした!!!! 個人的に今年プレイした中でもトップクラスの衝撃。先読みができないという点では、これまでプレイした中でも一番かもしれないです。 って書くこと自体がネタバレに繋がっちゃう気がするほど、どんでん返しに私がひっくり返りました。嘘だと言ってくれ。 最後までモヤモヤが残るところがまたシュールでやるせなかったです。主人公に何か恨みでもあったんでしょうか…。 @ネタバレ終了 色々な意味で斬新さを感じる作品でとても面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!
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置き去りのビバリウムとても可愛らしいドット絵風のタイトル画面に惹かれてプレイさせていただきました。 予想通りマップもキャラも部屋にあるアイテムなども非常に可愛く、そしてパステル調の優しい色彩が素敵で探索するのがとても楽しかったです。 @ネタバレ開始 が!!!初っ端から不穏!!!! 先生の隣の部屋が木で打ち付けられていたり、奥には鍵のかかった部屋があったり。 その時点でもあれ?と思いましたが、天使ちゃん、ねこ君、ふつう君、みどり君、極めつけはしにたがり君…とキャラに会っていく毎にその不安感は膨れ上がっていきました。 柔らかな雰囲気のグラフィックとは反対のものをそこかしこに感じてどうなってしまうんだろう?!とドキドキしながら、最後に先生に会いに行って…なるほど!と。 考察が当たっているか自信がないのですが、先生も含め全員が管理人の人格だったのかな?と思いました。 だから彼らの話すエピソードや心情は、全て主人格の体験であり本音だったりするのかな?先生の隣の部屋が「僕」の部屋で鍵の部屋は「管理人=本当の僕」(主人格)が閉じこもっているとかだったり?あ、私が見落としてるだけで隣の部屋を開ける方法や鍵の部屋のカギを開ける方法があるんじゃ?! なんて考えあぐね、何周もしてしまいましたが見つからなかった…。(色々間違ってたらすみません!) けど、どうにかして僕の力になりたいと思うほど、引き込まれる作品だと思います。 キャラのセリフも印象的で刺さるものがあり、ドキッとしたりズキズキしたり何度も心を揺さぶられました。特にしにたがり君や天使ちゃんのセリフはグッとくるものが多かったです。 でもそれでも僕くんの気持ちが皆に理解され、そしてゆくゆくは良い方へと実を結ぶ未来があるといいな…と思いました。満身創痍の努力が無駄じゃないと思いたい。 @ネタバレ終了 美しい箱庭の中にたっぷりと切なさの詰まったビバリウムでした。 置き去りにされたのは、ビバリウムの人達なのかビバリウムそのものなのか、それとも僕の方だったりして…? 具体的に明かされずプレイヤーに委ねられている部分が多かったので、受け止め方によっていろいろな考察ができそうな気がします。私も読了後にあれこれ考察しながら、余韻に浸る時間も含めて楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました!
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藍円寺昼威のカルテ~縁~作品概要の文章に何とも言えない味わいと、なんとなく面白そうという予感めいたものを覚えプレイさせていただきました。 これが予感的中!!とっても面白かったです!!! 実家が寺で視える家系に生まれてしまった主人公の日常から派生する様々な事象を通じ、彼とその周囲の人たちの生きざまを味わえる作品ですが… @ネタバレ開始 最初に面白いと感じたのが、心霊現象が常態化している土地柄と主人公の立ち位置。 主人公がなぜ産婦人科でなく精神科クリニックを開業したのか、そして訪れる患者さんたちが何を求めているのか…が土地柄の設定と上手く融合していて、序盤にその説明が入った時点で一気に引き込まれました。よく考えられていて凄い!! その後にもさまざま出てくる、主人公やその他のキャラクターの描写の細やかさ。食べ物や生活面での趣味趣向や価値観などの設定エピソードがそっと挿入されていくので、どのキャラも頭の中でどんどん造形が出来上がり、読み終える頃にはこんな感じなのかな?と具現化されるほどになっていました。さり気ない誘導が本当に素晴らしい!!そのおかげでどのキャラにも愛着が沸きまくり、読み終えた今は喪失感に襲われています。会えない時間が寂しくて仕方ない。 (主要キャラ全員好きでしたが、中でも主人公の昼威さんは特に魅力的だったな~と思います。普段はアンニュイな感じがするけど、面倒ごとを放っておけないお人好しで情に厚いというギャップにやられました!多くの人が昼威さんに心許したり心絆されたりするのも納得な素敵キャラでした!) @ネタバレ終了 立ち絵なし、背景等も特筆すべき特徴があるわけではない…のに場面場面が目の前に浮かぶような文章の豊かさに、心を惹きつけられました。 主人公の性格をはじめ全体的に落ち着いたトーンでありながらも、少しクスッと笑えるコミカル要素があったり、日常シーンにはリアリティがあったり…ウィットに富んでいる表現が多いところも好みです。 何よりキャラクター同士の会話が本当に魅力的!読み進める手が止まりませんでした。キャラは多めで名前が難しかったりするんですが、一人一人の個性が際立っているので混同することもなく。逆にどのキャラにも思い入れが深まってしまい、読み終えてしまった今は「是非とも続きを!!」という気持ちでいっぱいです。 @ネタバレ開始 そして特にそういった直接描写があるわけではないのですが、そこはかとなくブロマンスを感じるところもとてもいい…。 心配するあまり過保護気味な昼威さんと享夜さんの関係性とか、昼威さんと侑眞さんとの言葉にせずとも伝わるツーカーな関係性とか、朝儀さんと昼威さん・朝儀さんと彼方さんの家族愛・友愛を超えた何かや、彼方さんと享夜さんの他の人には理解されにくい関係性とかとか。玲瓏院家の面々と藍円寺との関係性も気になる! など挙げだしたら止まらないんですが、どれも本当に仄かにかおる程度なんです。でもその微妙さがいい!!絶妙なラインの「意味ありげ」な関係に終始ドキドキしてしまいました。最高でした。 @ネタバレ終了 霊とのトラブル解決といった題材こそホラーであるものの、内容的には人間ドラマと感じる部分が多かったので、ホラーが苦手な方も問題なく楽しめるのではないかと思います。 目視できない心霊現象を通じ目に見えない縁というものを描く…二つのテーマの親和性も高くハイレベルだなと感じました。 色々ツボ過ぎて言葉にし尽くしがたく…語彙が吹き飛んでしまってますが、とにかく本っっっ当に面白かったです! 味わい深い文章で紡がれる物語と、キャラ造形・キャラ描写、どれをとっても物凄く好みな作品でした! シリーズ化してくれると期待して、今後の展開をお待ちしています!
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十避行素敵な絵柄のサムネイル画像と、十避行という印象的なタイトルと「素性を知らない他人同士の十日間の旅」という設定に惹かれ、プレイさせていただきました。 結果、号泣でした…!!! @ネタバレ開始 一見凪いだ海のように穏やかでありながら、その奥底に夜の海のような深く暗い闇を孕んでいる物語に、胸が痛んで仕方なかったです。とにかく切ない…! 十避行の目的は早い段階で判明したものの、好きなことを満喫したり美味しいものを食べたりする様があまりに楽しそうで、何度もその目的を忘れるほどでした。特に食べることは生きることと感じているため、食事のシーンがありありと書かれているところに生命力を感じたりもしたのですが、目的を忘れそうになる度に彼らの言動で現実に引き戻され、ああやっぱり気持ちは変わっていないんだと打ちのめされるという。そんな感情のジェットコースターを繰り返す物語は一瞬たりとも目が離せず、続きが気になってクリックする手が止まりませんでした。 そしてどうなってしまうのだろうとドキドキで迎えた彼らの行く末は、当初の目的から外れない結末で…。 旅の途中での新たな出会いやお互いの過去を吐露する時間を経て、もしかしたら思いとどまってくれるのではないか?とどこかで期待していたので、正直二人の決断がとても悲しかったです。ただ彼らが抱えるものは十日間で覆せるほどではなかったし、それほどの覚悟で臨んだ十避行だったのだと改めて感じ、より一層胸を締めつけられました。もしも二人がもっと早くに出会えていたらと思わずにいられません。 ですが、たとえ間違っていたとしても、その行動を「祝福」と呼び結末を「ハッピーエンド」だと言う彼らを責める気にはとてもなれませんでした。 唯一の救いは、目的を共にするのが「初めて痛みを共有できる相手だった」ことなのかな、と。そして疲れ果て終わりを思い描くだけだった二人の心に「その先の未来」を夢見る気持ちが芽生えたのも、二人が出会えたからこそなのだろうとも思います。 運命を変えるには遅すぎたけれど、意味のある出会いと特別な十日間だった。そう思える最期でした。 と言いつつもやはり二人を見送ってしんみりしていたので、その後の展開が非常に嬉しかったです!! 二人の最期の願いとお城のキーホルダーが引き寄せたであろう、奇跡の再会に心が震えました。本当によかった!感涙でした…!! 十一日目から始めた二人の新たな旅路が今度こそ、本来の祝福である「生」の下で末永く続きますように。 @ネタバレ終了 難しく重いテーマが主題で、読み終えた後自分の人生について色々考えさせられました。 ただテーマ性こそ重厚ですが、二人のやり取りは時折コミカルさもあって暗くなりすぎず、心にスッと入ってくる物語だと感じます。 また終始穏やかな文章の運びにより、最後まで落ち着いて二人を見守ることができたのも良かったです。 とても繊細な描写で丁寧に「心」を綴り上げた、深く染み入るような物語でした。素敵な作品をありがとうございました。
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mellow fellow【リメイク】親友から女子力の欠如について指摘された主人公が、女子力向上を目指したり目指さなかったりする作品で、とても面白かったです。 短編ながらもエンド数が豊富にあり、それぞれの結末できちんと二人の心情に変化を感じられるのが凄いと思いました。 そして何より友情・恋愛どちらに転んでも美味しい二人の関係性が最高に尊かったです!! @ネタバレ開始 実は男勝りで少年みのある主人公にこそ秘密があるのかなと思いながら読んでいたので、そっちだったかー!と真相を知った時は驚きました。 顔立ちが変わったわけではないのに、表情が違うだけで別人のように見えるのが凄かったです。描き分けが素晴らしいと感じました! 恋愛エンドはもちろん最上の結末だったのですが、百合を感じさせる友情エンドもどれも素敵だったな、と思います。中でも甘と切なさが押し寄せる「幼馴染エンド」がめちゃくちゃ好みで刺さりまくりました!手を取り合う二人の姿最高です! それに主人公ちゃんも魅力的ですよね。サバサバしていながらも可愛くて、ついつい甘やかしたくなってしまうような存在だなと思いました。 が、結構ナチュラルに殺し文句(「光だけにしかしない」など)を放つので、恋人になっても光さんの心配は絶えないのかも…などと思ったり。光さん頑張れ(笑) @ネタバレ終了 出番の少ないサブキャラまでもが魅力的でしたし(特にお姉さん)、 おまけで見られる設定集やおまけストーリーも含め、プレイ時間以上の満足度を得られる素敵な作品でした。 楽しい時間をありがとうございました!
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東京オディエットアモ 尾瀬露春日編4編に渡って紡がれてきた東京オディエットアモの最終章、そして今作のお相手「春日さん」がSNSでラスボスなどの異名を冠していたこともあり、どんな手ごわい相手なのだろう?と読むのをかねてより非常に楽しみにしていました。が、予想していた以上の展開が待ち受けていて驚愕!そしてとても面白かったです。 たくさん素敵だなと感じるポイントがありましたが、特に好きだったのは主人公ジュリさんと春日さんとの距離感です。近しいのに、誰よりも遠いような切なさがあり胸を締めつけられました。でも最大の萌えポイントは、 @ネタバレ開始 ジュリさんが「お兄ちゃん」と呼ぶのに対し春日さんが「あなた」と呼ぶところや、あれだけジュリさんに執着しているのに触れることすらできないという春日さんの裏腹な態度!肌に触れずに身体をなぞっていくシーンは切なさと色気の極みで、たまらなく情緒をかき乱されました!! そしてそれら全てが伏線とも感じられる、Soiréeエンドでの真相は鳥肌モノ! 二人に終始漂う「いけないことをしている」感の正体はなるほど、と納得するとともに予想をはるかに超えてきた!と衝撃でした。 愛と同等の憎しみを抱えつつも、どうせ罪からは逃れられないのだから共に過ごす間は互いに溺れようとせんばかりの二人は、タイトル「オディエットアモ」を体現しているかのようですね。最後のスチルは背徳感いっぱいでゾクゾクしてしまいました。二人の覚悟に天晴です。 ジュリさんと彼女を取り巻く男性たちはこれからも地獄のような花園で生きていくのだろう…と考えると胸がざわつきますが、その先が語られず終幕したところが非常にニクくもあり、素晴らしい幕引きだったのではないかと思いました。今はただ、先の未来を想像してあれこれ空想しドキドキハラハラするという、贅沢な余韻の時間を楽しんでいます。 憎いほど愛しているという言葉がピッタリの、 @ネタバレ終了 非常に濃密な物語でとても面白かったです。何より最後の最後にこんな素敵な置き土産をいただけるとは…!本当に、東京オディエットアモの世界に触れられて幸せでした。ありがとうございました。 まだシリーズ未プレイの方へ 個人的には、何も知らないまま代沢ロミオ編から順にプレイしてほしい…。 今作も単独で楽しめる仕様ではありますが、衝撃の真相は過去作履修済みであるとより楽しめます。それに全編プレイしているとわかる小ネタも多いですし、「代沢ロミオ編」から「尾瀬露春日編」までの4編を通して起承転結となる一つの物語とも感じられますので、順を追って読まれるのがオススメです!(勝手な推薦)
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アイテムさがし最初にシルエットで提示されたアイテムを、記憶を頼りに絵の中から探し出す…という間違い探しとは似て非なるパズルゲーム風の作品で、とても面白かったです。時間を忘れて夢中になりました。 アイテムを探すだけのシンプルな作りですが、手描きの美麗なイラストの中を探索できるのが楽しいだけでなく、ひとつひとつのアイテムが可愛かったり、2名の方によるイラストの違いなども楽しめ、10ステージがあっという間!また、一部にはゲームならではの仕掛けが施されている等、演出面も凝っていて素敵でした。 @ネタバレ開始 特にステージ7とステージ9はアイテムをクリックした際の演出に感動!これは紙面ではできない演出でトキメキました! それに加えてアイテム一覧で読めるアイテムの詳細は、フレーバーテキストとして非常に興味深かったです。ステージ3のゴミ捨て場アイテムの意味深さにドキドキしてしまいました。 @ネタバレ終了 絵に込められた物語は作中で明言されないため、絵を見たりアイテム一覧を見ることで想像するしかありませんが、その意味を空想する時間も楽しかったです。 記憶を消してまた一からプレイしたいと思う作品でした。とっても面白かったです。ありがとうございました!
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タバコ屋乙女と小話でもタバコ屋の店番をする女性アカヨさんのお話を聞く、まったりとした雰囲気が素敵な作品でした。 @ネタバレ開始 小気味よいテンポで語られる小話は、案外世の無情を投影した内容でもあり確かに!と共感する部分が多かったです。ただアカヨさんはその無情さを憂うのではなくさらりと受け流しているように感じましたし、終始明るい口調で話してくれるため最後まで心地よく耳を傾けることができました。 @ネタバレ終了 それぞれのお話は短く、ただ耳を傾けるだけで推理要素もないということでしたが、作品の締めくくりにはしっかりとしたオチがついていてさすが!です。 @ネタバレ開始 話し相手の正体がわかった後で色々なところに散りばめられた伏線にニヤニヤしながら読み返しましたが、一番最初の画面にまで伏線が張られていたのには驚きました。足跡…! はじまりのはなしで見られる虎太郎さんの顔(表情)も最高でしたし、飼い主さんの最後のセリフも素敵でした。 @ネタバレ終了 掌編ながら味わい深くとても面白かったです。素敵な時間をありがとうございました!
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六畳一間から出られない!なぜか閉じ込められてしまった部屋からの脱出を図る、探索型ADVノベルです。 ドット絵が印象的な脱出ゲームで、私自身もグラフィックや脱出ゲームという点に魅かれてプレイ開始したのですが、終えてみれば一番印象に残ったのはそのストーリーでした。 情報が断片的に提示されるので、途中までは考察系のお話かなと思いながら進めていたのですが、真相に辿り着いた時には思わず涙。切ない愛の物語でした。 特に、 @ネタバレ開始 トゥルーエンドと思われる結末が「badend」となっていたのにはグッときました。主人公にとって本懐を遂げられなかったあの最後は、ある意味バッドエンドでしかなかったのかもしれないですね。ただそれでも、好きな人の願いに応えることを選んだ主人公の決断に深い愛を感じます。感動でした。 @ネタバレ終了 緻密なドット絵で描かれるスチルやマップなどグラフィック面での美しさだけでなく、脱出ゲームとしての面白さもありつつ、なにより基盤となっているストーリーが素晴らしかったです。心を鷲掴みにされました。 ストーリーの関連性はないとのことですが、シリーズ第二弾も公開されているようなので、ぜひそちらもプレイさせていただきたいと思います。素敵な感動作をありがとうございました。