SHIAのレビューコレクション
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とっ散らかってます。タイトル「とっ散らかっています。」の通り、良い意味でとっ散らかした物語でした。目覚めた瞬間に脈絡もなくいきなりそこにいる名前と姿が一致しない果物たちとの、ぶっ飛んだ面白いお話でした。 @ネタバレ開始 エンドをおそらくすべて回収しましたが、面白かったのは冷蔵庫を開けた瞬間に襲われているレタスに遭遇した時と、部屋の中で随分とシュールな光景でバトッている果物たちを見つけたときでした。 特に後者は後々に画面全体にモザイクを入れておかないといけない惨状になったりしていて、とっ散らかったこの部屋を片付けるのが大変そうだと思いました……シミになって残ったりしないかな(そこか) 彼らはいったい何者だったんだろう(いや野菜ですが)と、ふと疑問に思ったりしますが、たぶんこれは考えてはいけないやつですね。 @ネタバレ終了 果物たちとの、唐突に始まってとっ散らかったまま終わるナイスカオスな物語、堪能させていただきました。 素敵な作品をありがとうございました!
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ネコノネガイ夕暮れの教室で出会った女の子の口から発せられた一つの質問が、彼と彼女の運命を変える……かもしれない、猫の一途で健気な願いを抱いたちょっぴり怖い要素もある物語でした。 初回、何も考えずに選んだ選択肢が悪かったため、すぐにエンドへ直行し猫さんの影も形もない状態で終わりました(オイオイ…) 気を取り直して2周目では無事にネコさんとも合流、初めの記憶に触れた時点で「イジメ、ダメ、ゼッタイ。ギャクタイ、ダメ、ゼッタイ。」という言葉が脳内にピピューン!と浮かんだのですが、その後の記憶たちも合わせるとこれはこうなってしまっても仕方ないと思う悲惨な毎日を感じました。 2周目でGOOD、途中からロードしてTRUEと、エンド到達も難しくなくて物語から意識が離れることなく終えられてよかったです。 @ネタバレ開始 悪魔というとどうしても悪いイメージが付きまといますが、とても親切な悪魔さんもいるんだなぁと思いました。 そして、悪魔と交渉して自分の魂を明け渡してでも音子さんを救わんとしたユウカさんを全力でナデナデしたい気持ちになりました。 誰にも知られないところで主のために一人奮戦していたユウカさん……これからは笑顔いっぱいの音子さんと一緒にいられたのならと思います。 トゥルーエンドをクリアするとタイトル画面が笑っている音子さんになりましたが、その笑顔が見られて本当に本当に良かったです。 今までとても辛い人生を送ってきた分、これからは笑顔溢れる人生を送ってほしいなと思いました。 @ネタバレ終了 ネコの切実で誠実な願いが叶えられるのか否かがプレイヤーの手に委ねられているため、俄然やる気が出てTRUEまでノンストップでプレイさせていただきました。 素敵な作品をありがとうございました!
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誘蛾灯の夜タイトル画面の印象でとてもドロドロしたホラー気味なサイコ系のお話が来るかと思いましたが、現れたのは蜘蛛系ファッションに身を包んだかわいい女の子。しかし、この子の話していることが……なんだか不穏ですね?と思いながら読み進めました。 好きな人にはとことん突き刺さるハードポイズンな物語でした。 リコさんの話していることが結構なストレートカニバルで、それはそれで幸せそうだったのですが……もうお一方、別の方からの視点で見るとまた違った味わいが本作にはありました。 これも一つの家族のカタチかな……と思いつつ、ドロドロとしたものが大好きな人には是非にオススメしたい何とも言えない暗い空気が作品全体に漂っていました。 なんでしょう……古く埃っぽい納屋の中の隅にある蜘蛛の巣に引っかかった小さな蛾を、今まさに蜘蛛が食べようとしている瞬間の映像が頭に浮かびました。 @ネタバレ開始 日和さんは本当にただ巻き込まれただけだと思っていたのですが、あとがきでは「日和は日和でやばい」と書かれていたので、気になります。 @ネタバレ終了 捕食者たちの饗宴という言葉が思い浮かぶインパクトのある物語でした。 素敵な作品をありがとうございました!
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禁忌を犯した少女見返り美人な眼帯少女がどんな禁忌を犯したのか、気になりつつプレイしました。冒頭から緊迫の雰囲気で、読み終わった後は少し不思議な気持ちになると同時に、胸があたたかくなる物語でした。 冒頭の「お父さん」が亡くなるシーンからタイトルの少女にどう繋がっていくのかと思いましたが、読み進めるうちになるほど!と思いました。 @ネタバレ開始 娘の美月さんがお父さんを助けたいがために、自分の命を懸けてお父さんが生きる道を用意したのですね! 確かに、本来死ぬはずの人間を助けようとする行為は循環から反してしまうので「禁忌」だなと思いました。 片翼で飛べない状態なのが、とても重たい禁忌を犯した感じがよく出ていました。 お父さんとお母さんの子どもとしてお腹の中に宿った美月さんですが、成長するとまた同じようにお父さんと喧嘩をしてお父さんが事故に遭う日が来るのか……それとも、今度は記憶がある状態で成長して今度こそ一家三人で幸せになれるのか。 たとえ記憶がなかったとしても、次こそは家を飛び出す前に思い止まれるのではないかと思いました。 お父さんも嫌な予感がする!と玄関まですぐに追いかけて行きそうな未来が感じられます。 @ネタバレ終了 禁忌を犯した少女とお父さんとの心あたたまる家族の愛情に、あたたかい気持ちになりました。 素敵な作品をありがとうございました!
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堕ちた恒星、朽ちた嶺岸峯岸くんにある種の親近感にも似た感情を抱きながらプレイしました。文章の息遣いが上手く、グイグイと読ませる魅力のある物語でした。少し変わったところがあると見られている峯岸くんの言葉回しが秀逸です。 とても地に足がついた物語で、主人公が淡々と人生を達観したような視点で進められるので物語にピンと張った一のような緊張感が漂っていました。 いわゆる黒歴史とも言えるような過去を抱えた主人公が、自分の過去の轍をそのままなぞろうとしている峯岸くんに対してコンタクトして―――というところから、鈴鹿さんとの会話に戻った後、唯一の選択肢ではどちらにするか本当に悩みました。 ピエロはピエロ同士を笑うことができない、しかしかつてピエロだったものはピエロを笑う……そこに込められた人間の持つ歪みにも似たものが、胸の内にじっとりと迫ってきました。 主人公の最後の一言が胸に刺さり、ピエロの呼吸が今まさに止まった瞬間にも似た得も言われぬ刹那を見ました。 「リアリティ」を感じる素敵な作品をありがとうございました!
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混同仮面今日コウノトリが鼻血で虹を描いているのを見たんだけれどって言ったら、信じてくれる?―――はい、信じてくれる・気になる方は今すぐプレイしましょう!!とオススメしたくなるスピード&パワーの烈しい面白い作品です。 セクシャルな表現が大丈夫だよという方は、是非プレイしてほしいです! 漫画をそのまま読んでいるかのような画面構成と相まって、混同仮面さんたちが口にしているカオスなことがダイレクトに伝わってきます。 最初から最後まで、一気読みでした。とても面白かったです。 作者様の比肩する者のない圧倒的なセンスが凝縮された至高のゲームでした。 次から次に投擲されるハイセンスな狂った展開に、私の腹筋が割れるほど笑わせていただきました! @ネタバレ開始 おまけのベルトで撮影したギャラリーまですべて笑いました。 すっぽんさんは風穴の開いた腹部がイチオシショットみたいになってて、すっぽん鍋とどっちがいいかなと悩ましいところですね(悪魔か) @ネタバレ終了 動きがあり多くのイラスト素材を使用した迫力ある画面と、一つ一つのセクシュアル&時々ヴァイオレンス(真剣)なセリフ回しがとことん面白い、とても素敵な作品でした。 面白すぎる素敵な作品をありがとうございました!
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モモタロウさん、モモタロウさんモモタロウが故郷に錦を飾り幸せになった、その後の物語……皆を脅かす鬼を無事に退治して皆から称賛されたモモタロウが歳月を経てどんな人になったかが垣間見られるダークな物語でした。 @ネタバレ開始 かつての英雄、歳月を経て悪に落ち自ら鬼となる。完!! 完全に闇落ちしているモモタロウさんでしたが、タイトル画面の黒い笑みから大体は御察しでもあったので「そ、そんなまさかっ!」という驚きはありませんでしたが、鬼の子がひたすらに可哀想でした。 親御さんは村人を苦しめたかもしれませんが、子どもの鬼さんは何も悪いことをしていないのにモモタロウさんに利用されそうになっているなんて……モモタロウさんが雲隠れするか仇討エンドだと生き残ってくれますが、大儲けエンドだと亡くなってしまうので、個人的には前者のエンド2つが好きでした。 ブラックモモタロウさんがどこまでも黒い話でしたが、ある意味で権力だったり成功して富や名声を得たりした人の堕ちる道として確かにこれはありうるなーと思った物語でした。 @ネタバレ終了 モモタロウさんにはホワイトモモタロウさんのままでいてほしかった、ブラックモモタロウさんのきび団子もブラック仕様なブラックすぎる面を堪能できる物語でした。 素敵な作品をありがとうございました!
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ポケしょたといっしょ!8bit系の音楽に合わせてドット絵のショタくんを育成≒愛でるゲーム……と思いきや、そこからさらに一捻り。クッキーをもらったりしてニコニコできるだけのゲームではありませんでした。 @ネタバレ開始 今は大量娯楽消費社会で、飽きたら次、飽きたら次といくらでも次があるのも事実ですが、最後の展開を見て「ゲームだって捨てられたくないよね……いや、意思を持っている時点でそれはそれで怖いんだけれど!」と思いました。 ポケしょたのお子さんが最後にホラー転換したのはインパクトがとても強かったです。 あの可愛さがどこかへ消し飛んでしまわれた…(笑) もうどこへ行ってもどれだけ捨てようとしても絶対に戻ってくるイメージがあります、オーマイゴッド。 @ネタバレ終了 タイトルや初めの雰囲気からは想像できない終わり方がとても面白かったです。 素敵な作品をありがとうございました!
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糖分アイスフロート「I live you」の言葉の意味を知らない主人公ウイちゃんが、本当の意味でその言葉の本質を知るまでの物語でした。誰かを好きになる、誰かを愛するって当たり前のようでいて奇跡的なことでもありますね。 同性を好きになるウイちゃんが自分は特別だと感じていたり、自己肯定感が低かったり、人と深いところで付き合う距離感が分からなかったりと……見ていてハラハラするところも多かったですが、エンド1では無事に「人を愛するとは」の本質をきちんと自分の中で消化できてよかったです。 ソーダちゃんの言うことがその通りすぎて首がもげそうなほど頷いていました。 @ネタバレ開始 エンド2、エンド3では選ばれなかった相手がヤンデレ感を滲ませながら選んだ相手を抹殺しに来るところに「糖分どこいった!」という思いと「そりゃこうなりますよね、こんな宙ぶらりんで喜ぶ人なんていないよね……気がつかぬは主人公ばかりで、主人公にだけ都合がいい世界になっちゃってるもの……」という思いとで、ある意味で納得できるエンドでした。 誰かを好きになることや愛することを、自分は人と違うんだよとか自分の自己肯定感のためとか、そういう余計なもののために使っているうちは好きや愛とは違うんだろうな……など、色々なことを考えた物語でした。 エンド1では3人とも自分の人生をしっかりと歩いて良かったです。 特に主人公のウイちゃんが2人に依存せず、自分の人生を自分の足で歩いている姿が好きです。 @ネタバレ終了 かわいい絵柄からは想像ができないくらいしっかりとした物語でした。 誰がどんな性別の、どんな性的嗜好の人を好きになろうと、それは何もおかしいことでも特別なことでもないということの意味を改めて考えました。 素敵な作品をありがとうございました!
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予命アンドロイドシリーズ?3つ目のプレイです。4話どれも独立した短編で、今回もアンドロイドの女の子たちと人間の少し悲しい物語が綴られていました。 どのお話もハッピーエンドではありませんが、アンドロイドのいる日常からふとどこかの誰かの話を切り取ったような4つの断片が、どれも心に静かに入ってきました。 クィルルさんのお話が個人的に一番悲しかったです……やはり人間とアンドロイドでは絶対に超えてはいけないとされる壁に阻まれるものなのでしょうか……。 今までプレイさせていただきました作品すべて、アンドロイドさんたちのデザインや表情など素敵なイラストの数々が大好きです。 今回もとても素敵な作品をありがとうございました!