SHIAのレビューコレクション
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鬼語村を代々治める長者一族や村に続く因習など、言葉の印象だけでもう何か一癖二癖もありそうな気配がするものを絶妙な手腕で完璧に料理している大変美味しい物語です。 シナリオの完成度が秀逸で、「物語を読む」ことが好きな人は一気読み間違いなしのレベルで楽しめると思います。 蔵の中の檻にずっと入っている「ざくろ」さんに惹かれ、交流していく主人公との物語は、エンディングによってまったく異なる未来を迎えましたが、個人的には3種類を見た後のエンディングがやはり1番でした。 @ネタバレ開始 現代人の感覚だと「野蛮!」と一言で切って捨てられそうな古い古い村の因習が、本当にゾゾゾと鳥肌ものでした。 なんかいつでも捌け口にできる穴みたいな、そういう酷いことが罷り通っている様子には怒りさえ湧きました。 ちょっとざくろさんへの扱いがあまりにもアレでしたので、ざくろさんをその村という巨大な檻から助けたい気持ちに……。 追加選択肢が出る前のエンディングはいずれもどこか重たいエンドで、ざくろさんに救いがなく、白さんはどこが歪んでいて、桃子さんも他人のいいようにされてしまっていて「ムキーッ!! なに桃子さんに触れてやガルルルル!!」と威嚇したくなるようなもので、ざくろさんと主人公の一心同体もこれがはたして幸せなのかと思うと少し違うかなと……モヤモヤしていました。 4番目の選択肢が現れたときは「キター!!」と思いました。 これがトゥルーエンドだ!と鼻息荒くすぐに周回、無事にざくろさんが救われるエンドへ辿り着けて、ようやく私も安心して眠れます…! @ネタバレ終了 長者一族の家系設定や村という狭い社会で行われてきた因習の描き方が大変お上手で、グイグイ引き込まれました。 素敵な作品をありがとうございました!
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桜の里の錬金乙女(改)非常に自由度の高い・プレイ期間も2年間とボリュームたっぷりの錬金ゲームです。 錬金・採集・戦闘・武器強化と様々なことができるので、一つのゲームをじっくりプレイしたい方には特にオススメしたいゲームです! Live2Dで描かれたキャラクター(モンスター含む)が大変美しく「すごい、みんなすごくきれい…!」と思いました。 これからプレイされる方には、とにかくまず初めに「編成」でパーティー編成することをオススメします。 編成せずに一人で採集に行って瞬く間に全滅というやらかしをしました(笑) 編成することを知った後は、私は凛さん頼りで脳筋プレイをしておりました。 彼がとても硬いのでいつの間にかダメージゼロで一人でも敵を薙ぎ倒していってくれたので、皆のレベルが彼のおかげでいつの間にか10に…! とりあえず皆斬っておけ!とひたすら通常攻撃で薙ぎ倒していました。 @ネタバレ開始 私の初回プレイでは、エンディングまでに採取エリアの開放が森→静音川(1年目の1月1日)解放のみで他のエリアが解放されず採取ができない状態になっていたので、エリア解放のヒントかあるいはエリア解放は必須イベントとしてスルーしないなどがあると嬉しかったです。 錬金したくても、木などが一切採取できないよーという状態に陥っていました…。 お母さまからは忍者しつつ錬金術をしてもいいよと言ってもらえましたが、他にもエンディングがあるのかな?と思いました。 私のプレイでは以下のバグが見られましたので、一応こちらで報告させていただきます。 老婆心を何卒お許しください。 ■バグ報告 ●大きめのヒヨコさん単体との戦い後もヒヨコさんが浮かんで漂い続けるバグがありました。 画面に浮いている状態でパーティーが全滅するまで戦い続け、工房に戻った後もエンドレス浮き続けていましたが、セーブすると消えました。 ↓ 再び日を変えて森へ採集に行き、ヒヨコさん単体戦闘が発生すると、やはりふよふよエンドレス浮き続ける現象が発生。さらに再度ヒヨコさん単体戦闘が発生すると、ついに双子になってふよふよ浮きました。 里へ戻るとキャラクターとの会話パート発生。主人公の背後でずっと漂う双子ヒヨコとなっていました。 その後、「今日は何をしようかな?」画面になると消えていました。 ●個人依頼リストの「納品」ですが、納品したことがない依頼にも「納品済み」マークがついていることがありました。(「健康的な調味料」の種を納品後、他の依頼まで全て納品済みになっているのを確認しましたが、もしかしたらもっと前の段階で納品済みになっていたかもしれません…絶対にここからだったと言えず申し訳ありません) ●「静音川」で青い魚さん単体の戦闘後、魚が画面に漂い続ける現象を確認しました。大きめのヒヨコさんと同じ現象です。 @ネタバレ終了 自由度が高いゆえに「何をしよう~」と迷いつつ、一番初めは井戸水を組み上げて蒸留水を作って売るという荒業で材料を集めるなど、手探りでしたが面白い日々を過ごさせていただきました。 素敵な作品をありがとうございました!
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安直に百合という概念を当てはめたくない貴方へメイン登場人物の「無」という空気ポジから見守る小生と無仲間によるカップリング論争から始まり、最後はプレイヤーの自分まで巻き込んだ一大スペクタクル百合物語でした。 百合好きな方には是非にオススメの物語です。 それにしても無なる存在…無仲間が多いですね! そして無ゆえの特殊能力でシナリオが飛ばせるため、一切無駄のない展開で、テンポのキレがとても良かったです。 @ネタバレ開始 バッドエンド祭りを見た後からスタートで再び始めたら、そこからが怒涛の選択肢の嵐で、ダンプカーをやり過ごした後に今度はバイクが突っ込んできて笑いました。 小生は意地でも負けない…!! 無事に二人は急展開の仲となり、小生さんも大満足の結果へと導きましたが…もし「やだ」を選び続けると壊れて「あばばばばば」の塊となってエンドレスあばばばになるのは笑いました。 小生どの、気を確かに! @ネタバレ終了 バッドエンドを見た後からがクライマックスでしたので、これからプレイされる方には是非バッドエンドからの大逆転を見てほしいです。 素敵な作品をありがとうございました!
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Lost USB Memory先生が「なくした!教師人生オワタレベルでやばいかも!」と慌てるUSBメモリを探すため集められた5人の生徒たちの軽快かつ大変面白い学園ストーリーでした。 終始明るい雰囲気で進み、最後にちょっぴりしんみりする話もありつつ、全体としてはエネルギッシュな若々しさ全開でした。 5人の生徒さんたちがどの子も個性的で、特に小田切くんのキャラ性は良い意味で頭一つ飛びぬけていました。 @ネタバレ開始 藤森くんが自分のあの時の10円やお尻タッチのことなんじゃないかと考えすぎだったり、想像力が逞しい萩野さんが人面犬を想像してみたり、小田切くんが最終美少女兵器ミスティーマリーのことを熱く語ったり…と、それぞれの個性が際立ちつつ進められたUSB探索が実は律子先生が把握済みの紛失だったのは驚きました。 そりゃ職員用トイレなんぞ探してもないよー(涙) 小田切くんがとにかく面白く、USB封印解除時の怒れる小田切くんは本作ピカ一の面白さだったかと思います(笑) 彼のメガネが曇った瞬間「これは…来るぞ!」と思いました。 @ネタバレ終了 キャラクター同士の掛け合いが面白く、いつの間にかどの子も好きになっていました。 今回の事件をきっかけに今まで仲良くもなかった子が友だちになったりもして、こういうのが学園生活の醍醐味だよなと感じました。 さあ、ミスティーマリーの放送が始まる前に帰らなきゃ!! 素敵な作品をありがとうございました!
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四次元堂奇譚 二冊目 時戻りの時計~愛と執着憧れのお姉さんではなく、一人の男として好きになってもらいたい。そう願った「俺」の気持ちと未来はどこへと向かうのか……不思議な四次元堂がどう絡んでくるのかも見応え十分な物語でした。 ヒロインであるショーコさんがからっとしていてやり取りが気持ちよく、また無理に飾った文章などがないのでとても読みやすかったです。 @ネタバレ開始 途中で出てきた怪しい男の謎が解けたときは「なるほどね!」と思わず膝を打ちたくなりました。 ショーコさんがなぜその男について行くのか、男がショーコさんと消えるときに叫んだセリフは何だったのかと思っていたら、まさかの未来の自分だったとは。 一度だけある選択肢は、初回は迷わずショーコさんへの想いを貫きました。 未来へと一緒に来てくれたショーコさんが、主人公と幸せになれそうで本当に良かったです。 ■2021年12月27日現在、以下のトラブルがあるようです。 ・ダウンロード版がダウンロードできない。 素敵な物語だったので、ダウンロードして遊びたい人が遊べないのは残念だなと感じました。 @ネタバレ終了 二冊目ということで、また次の三冊目もあるのかな?と続編が気になりました。 素敵な作品をありがとうございました!
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アカイロマンション〜ホラー編〜素敵な物件を見つけて念願のお引越し~♪なんてニコニコしていられるのもわずかな時間でした…とんでもない物件に引っ越してしまいました。 マンションの住人の方々がかなり個性的で、中にはすわ暴君かと思うような方もいらっしゃり、これからこの人たちとやっていけるのかなぁ…と思っていたら、やっていけるとかやっていけないとかではなく「殺られる」一択な事態になり、あわあわと選択肢を選びながら「死にたくなーい!!」と逃げ回ることとなりました。 @ネタバレ開始 勝ってうれしい~花いちもんめ♪ 勝って……むしろ、狩ってか???と思うような狩って狩られ具合で、マンションそのものが巨大かつ呪われた殺人現場と化していて、選択肢を選ぶたび「大丈夫か、主人公?」と自分で選んでおきながら主人公が死なないか不安になりつつ、読み進めると「あーーー!!」という女性の叫び声がいきなり入り「あーーー!!」と画面の前の私も驚いて町内中に響き渡るような悲鳴を(近所迷惑) ガチホラーが苦手なので、途中で目やら頭部やらがドバーン!!と出てきたりするところでは心臓が口から飛び出て、押し込むのに必至でした……視覚も聴覚も怖い!! 無理、マンションから退去します!!今は閉じ込められててできないんだった!!うわあああああ!!ともう呪いも桜も15年前の事件も放り出してしまいたい気持ちに(涙) それでも何度も何度もバッドエンドに辿り着きながらちょっとずつ進めることで、白い背景のエンドにも辿り着けるようになりました。 全エンドコンプはなかなかに難しかったですが、全エンドコンプすることで様々な伏線を回収できたので、最後まで頑張って本当に良かったです。 全部で5時間近くずっともちょもちょと死んでは立ち上がり、時々生き延び~を繰り返していたと思います。 朝から始めて気づけばお昼ご飯を忘れていた…!だったので、時間を忘れて遊んでいました。 余談ですが、PCを調べるシーンでティラノビルダーのくだりが出てきた時は「おおっ!」となりました。 作者様の遊び心にうふふ♪と楽しい気持ちになりました。 @ネタバレ終了 ボリューム満点、やりごたえも満点の大変面白い素敵な作品でした! ありがとうございました!
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この部活に入れてください(第一話~最終話)廃れてしまい部員は主人公一人となってしまった部活「弁論部」に巨大パッケージのお菓子を抱えた女の子がやって来た!から始まるハートフルな学園ラブコメでした。 優明さんがビジュアル・声ともにとても可愛らしく、こんなかわいい後輩が存在する世界なんてある?と思うほどかわいい後輩さんでした。 優明さんのSNSの無防備さに主人公と一緒になって「なんてメディアリテラシーのなさ!」と心配になったり、毎日のゲーム対戦で実はかなりの負けず嫌いなところもあったり……最初から最後まで次から次に溢れ出す彼女の魅力に一気読みでした。 「最初から」が終わった後のその2、その3やオマケなどもボリュームたっぷりで、話の途中から気分はすっかり部員3人目として2人のやり取りを見ているような、そこにいるような気分になりました。 それくらい物語に入っていました。 @ネタバレ開始 テストの赤点=二人とも活動停止確定のくだりで「先輩が赤点だと自分も活動停止に…」と心配する優明さんに盛大に笑いました。 心配するところは自分の点数ではなく、そっちなんだ!と(笑) 主人公と一緒になって思わずツッコミをせずにはいられませんでした……。 主人公は、誤解から生じたものがいつの間にか話が尾ひれをつけて広がり、まったく異なる話が形成されて伝わっているのが不憫でした。特別高圧的だとか暴力的だとかそういうところもなく、むしろ天使のような無垢で純粋な優明さんを心配してアレコレ構ってあげるとてもやさしい人だと感じ、やっぱり百聞は一見に如かずだなと痛感しました。 おまけのサイドストーリーに至るまでに既にお腹いっぱい、それでもまだデザートは別腹で、優明さんの魅力がどんどん伝わってきました。 やっぱり「こんなかわいい後輩が存在する世界なんてある?」でした! @ネタバレ終了 とてもかわいい後輩の優明さんとたっぷり過ごせる部活動(活動実態はまあ置いておくとして)、毎日楽しく活動させていただきました! 素敵な作品をありがとうございました!!
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片付けられない女タイトルから怖い物語だったらどうしようと怖じ気づいていましたが、怖いというよりも謎解きに近かったので、楽しめました。 初回ではアルパカエンドと呼べるエンドへ行きました。 捨てても捨てても増えていくので、アルパカVS私状態となりました……とてもキュートなのに捨ててごめん。 @ネタバレ開始 1-3のエンド後、再度周回して真実を見てクリアするとタイトル画面が切り替わり、ほのかさんの見えている世界が変わったのだなと分かって良かったです。 ほのかさんが一人で背負うにはその事情(親友が度々死にたがっていたこと)は重すぎた気もしますし、最悪の結果に至ったこともほのかさん一人のせいではないと思うので、ほのかさんが自分をそこまで罰しなくても…と思いましたが、自分のせいだと思い至るのも分かるので、やるせない気持ちになりました。 @ネタバレ終了 謎解きが苦手な人でもサクサクとクリアできる難易度で、捨てるものをプレイヤーに選ばせることで少しずつ謎が解けていく仕様も面白かったです。 素敵な作品をありがとうございました!
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※※※夏のコミケの灼熱地獄の最中にいた主人公ヒサメさんの意識は落ちて暗転、次に目覚めたときはファンタジーな異世界にいて…と、「え、何それ、私もそれなら行きたい(ファンタジーが酸素)」と羨ましくなる事態から始まるハイテンションな物語でした。 異世界でもBL漫画書いていたら宗教上の理由ウンタラカンタラみたいな理由で大変なことになっていく過程が「いやまあ、いつかはこうなるよね」と予想できていたものだったのですが、ここからがまた地獄でした。 @ネタバレ開始 「朗読させてもらう!!!」 嘘だろう!!? そんなことされたら来世の分まで即死だわ!!!!と、創作者の一人として、自分の作品が公衆の面前(Not オタクたちの前)で本人に朗読なんぞされたら、内側からプルトニウムを光の速さで生成した上で新星の爆発にも似た威力で爆発できる自信があるんですけれど!?となりました。 ヒサメさんも出せる汁を全部出している感じで「ああ、その気持ち分かるー!!」となりながら読みました。 その後もエナジードレイン使っているあたりでは大いに笑わせていただき、城での決戦ではもしかしたら出てくるかなと思っていた同郷の人が出てきてなぜかサークルの配置が出てきたりと、これはコミケを知る者たちにとっては完全にご褒美なゲームでした。 @ネタバレ終了 最初から最後までハイテンションかつスピーディーに進む展開に、一気読みさせていただきました。 異世界のキャラクターたちも面白く魅力的な方たちばかりで、帰る方法が分かってももう少しここにいてもいいかも~と思う楽しい世界でした。 素敵な作品をありがとうございました!
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white*out今の季節に読むのにちょうどいい、しんしんと雪降る光景にしか見られない静寂の空気に似た雰囲気と、ひとのぬくもりに似た熱を持つ物語でした。 @ネタバレ開始 途中からイマジナリーフレンドの話なのかな?と思っていたら、そのようだったので、セッタさんが彼女との別れを受け入れて明日へと目を向けている終わり方がとても胸に響きました。 真白さんに支えられるところまでは必要なことだったと思い、けれども真白さんだけでいいと思ってしまったところは逆にセッタさんの未来の幅を奪ってしまう要因になってしまっているので、物語がどう転ぶのかハラハラしていました。 物語の中でセッタさんの苦しみと同時に晃さんの苦しみも描かれていたのが、とても良かったです。 セッタさんだけが苦しんでいるのではなく周囲の人もセッタさんを支えたいと思いながらも、真白さんの存在が分からずにどうすれば一番いいのかが分からないでいる。 その部分が描かれていたことで、多角的な視点から物語を見つめることができました。 自分と違う異質なものを排除しがちな日本において、晃さんがセッタさんを絶対に見捨てなかったところに「セッタさん、晃さんみたいな人を大事にしてね!」と思います。 「そのあと」の物語で「母に愛されたかった」と吐露していた部分へのお返事のようにお手紙で母の想いに触れて、また一つ過去の枷を失ったセッタさんが見られて良かったです。 @ネタバレ終了 周囲から見ると、セッタさんの言動は確かに理解しづらかったかもしれない。 けれど、セッタさんがこの人間社会を生きるために幼少期からずっと頑張ってきたこと、今まさに未来への一歩を踏み出したことに、私からもスケッチブックを贈りたい気持ちになりました。 素敵な作品をありがとうございました!