SHIAのレビューコレクション
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絶望の螺旋TwitterのTLでRTかなにかで「4画面同時プレイのゲームです」とお見かけしたときに「4画面同時とは?」と気になっていましたが、実際に触ってみると、確かに仕様が仕様なのでご紹介の通りに中級者から上級者向けではありますが、大変面白い作品でした! 慣れるまでは特定の人物の画面のアイコンをひたすらポチポチポチポチ押し続けたりするちょっと下手なプレイをしていましたが、特定の重要なシーンでは関連キャラの場所や時間軸を合わせてあげると進めるのね!と気づいてからは、一人一人を進めていく楽しさと、進めることで「このキャラを進めて、あとこのキャラも進めて二人を出会わせて…」という楽しさ両方が味わえました。 物語の構成が4(5)画面ならではで、他のゲームでは絶対にできないことだなと思いました。 ゲーム画面を4(5)画面にしようという作者様のアイディアに脱帽です。 @ネタバレ開始 シナリオに関しては、どこまでもどこまでもそれこそ螺旋を落ちていく千草さんが可哀想でした。 特に2章に入ってすぐの部分はもう本当に「千草さんがー!!」となりました。 左下の画面だけが度々真っ暗になるのはもう心情から仕方ない!とは思っていたのですが…ついに白鳥先生に手をかけたり、勇治さんにまで手をかけたり…と、千草さんがどんどんもう後戻りできないところまで進んでいく様子に戦慄し、ついつい千草さんばかりを進めたくなってしまいました。 左が大変なことになっている時、右では電車から降りた二人の間では「ちょっと電車酔いしたかも」というほのぼのした話が繰り広げられていて「電車酔いしてる場合じゃないのーー!!」となったりしていました。 その後に千草さんが無限飛び降り自殺し始めたあたりで「もうその辺で許してあげて!!」となりました…。 (『ネクロノミコン計画』が明かされた後に学校を再度調べるところでかなりの足止めをくらい、一度詰みかけました…4(5)画面を進める難しさをトコトン味わいました…) ムービーや演出も大変凝られていて、最初に立ち上げたときのタイトルまでのキャラクターたちの出てくるシーンはもちろん、バトルの攻撃エフェクトや相手や自分が攻撃する時のカットイン風の動き…と細かな演出面も素晴らしく、見入りながら進めさせていただきました。 @ネタバレ終了 複数の画面を同時に進めるというゲームをプレイしたのが初めてで、アイディアを実現させる作者様の技術力に感服いたしました。 ストーリーもとても面白かったです! 素敵な作品をありがとうございました!
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ジョーカーの花嫁 フルボイス巨乳好きなためIQ36しかないチキンが通りますよーという冗談は置いておいて、会話などシナリオのテンポの良さがアニメなどに似た非常に滑らかかつ疾走感のある軽快さを持っているので「ノベルゲームで長いのはちょっと…中ダルみしそう…」という及び腰の方にも気軽に遊んでいただけるゲームだと思いました。 即バッドエンドは今まで他の作品たち(主にホラー系)で浴びるように経験してきましたが、まさかの即結婚エンドには驚きました。 世の中には死ではなく幸せにつながる即エンドもあるんだと初めて知りました。 ムービーやグラフィックも大変クオリティが高く素晴らしいと思いましたが、ボイスが際立って素晴らしかったです。 声優様の技量もさることながら、ボイスが小さすぎることがなく、また大小の不揃いやノイズがなく全員の声が均一に聞きやすい大きさで再生されるというのは驚きました。 ノベルゲーム、特にギャルゲーやハイテンションでノリの良い作品が好きな方はハマるゲームだと思います。 ミステリー部分もしっかりミステリーしていて、奥深かったです。 ありがとうございました!
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少女の時空皆既日食かわいい絵柄とは対照的に、主人公の陽介くんの心は毎日が太陽も月も見えない曇天。 心を閉ざして自分を守る日々にメリーと名乗る不思議な女の子が現れて、久しぶりに家の外へと出ることに…。 表示されている陽介くんの顔が常にどんよりしていることが多く、この子が笑える日は来るのだろうかと親心にも似た気持ちで見守りました。 @ネタバレ開始 ゆづきさんが作り笑いをしていることが多かったので「なぜだろう」と思っていたら、ゆづきさんも学校では辛い目に遭っている様子が教科書の件から見えて「イジメ、ダメ、ゼッタイ」という言葉が自然と浮かんできました。 トゥルーエンド?のほうでは、暦くんとゆづきさん、陽介くんの三人の止まった刻が動き出した様子が見られて嬉しかったです。 なにより、陽介くんがまた一歩を踏み出せそうな雰囲気が良かったです。 池の中で3人で抱き合っているスチルが最高でした。 メリーさんの尊大だけどどこかたどたどしい話し方が可愛く、純粋であるがゆえにストレートに伝わる物言いが好きです。 言葉にしないと伝わらないと言われますが、本当にその通りだなと。 大人になるにつれて皆がプライドや恥ずかしさで覆い隠すことが多い本音や正直な気持ちを、メリーさんがズバズバと忖度も何もなく語る様子が心に響きました。 @ネタバレ終了 また皆既日食が話題になる頃、メリーさんは陽介くんたちに会えるのかな……陽介くんが「あの時、メリーが来てくれたから」と笑って話せる日が来るといいなと思います。 素敵な作品をありがとうございました!
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失落園で朝食を(ディープ版)本当にどうしようもない人間でも愛玩するような歪んだ愛おしさがあれば、一生続く鎖で縛りつけておけばいい……頭の中にそんな言葉が浮かんだ、歪みと純粋さとが奇妙に入り混じった物語でした。 当人たち以外から見ると狂気の沙汰と判じられて一蹴されそうな関係でも、二人から見たときにはその狂気性も一種の純真無垢でもあるのだろうと思われました。 ブラッドさんの性格や心などまで加味すると、最終的に今の関係に落ち着いたのも必然であったかもしれないなと思わせる説得力のある心理描写が秀逸です。 歪んでいるはずなのに、その乱反射する光の中には確かに得も言われぬ純粋さがあるような、そんな印象を抱く話でした。 ブラッドさんとクローディアさんの歪な双方向の想い、視点切り替えによるそれぞれの内面が見られるシナリオが面白かったです。 素敵な作品をありがとうございました!
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カンナ 可惜夜の星廻り美しく壮大な宇宙のグラフィックに惹かれてプレイしました。 カンナさんがとある事情から星巡りをしていくこととなり、その過程で自分の心の軸とも向き合いながら成長していくヒューマンドラマでした。 @ネタバレ開始 目の前の一人を助けたい、一人一人の命を大切にしたいと思いながらも現実は見捨てなければならない辛く苦しい時もあり、その辛さを胸にカンナさんが前へと進み続ける姿が、とても胸に響きました。 膨大な知識があったり、特別な能力があるわけではないけれど、それでも自分が歩んできた人生で見てきたもの・触れてきたもの・培ってきたものの中から、譲れないと胸に誓うものがある……そんなカンナさんの意志を貫こうとひた走る姿、あの瞬間の煌めきは星の輝きよりも美しいと感じました。 自分が選んだ行動には必ず結果が待っているのは当たり前のことですが、時として人は自分の行動の結果を「誰かのせい」にしたくなる…けれど、人生とは上手くいかないこともすべて含めて自分が選びだした道なのだと本作を終えたときにしみじみと思いました。 そして、自分自身で選んだからこそどんなに辛くても苦しくても、歯を食いしばってでも進まなければ前へは進めないということも。 アルシャクさんが好きだったので、最後はハティプールさんと言葉を交わすことができてよかったです。 初めは怪しい人だなーとちょっと警戒していたのですが、途中から登場が楽しみでした。 クリア後にすべてのCGが埋まったCG集を見るとまた壮観で、カンナさんとハティさんたちの星巡りを思い出しながら1枚ずつまた眺めさせていただきました。 @ネタバレ終了 星々の大海のグラフィックがとても美しく、深淵にも近いものを秘めた深青のスチルの数々に溜息がもれました。 素敵な作品をありがとうございました!
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儚き魔術師は虚無に棲む次から次に出てくる数学の美しさ、公理や定義にまで触れられている細やかさにもうニヨニヨしっぱなしでした(拝み) 数学が苦手で素数やら積分やらの言葉を見ただけで「うっ、頭が…!」となる方にも読んでほしい、大変面白い物語です。 @ネタバレ開始 ゼロって本当に美しいですよね。 0がないと1は存在できないんだなぁと思うと、0という数字の隠された完全性に惚れ惚れします。 存在していないが存在している、存在しているが存在していないのどちらにも属するものに名前をつけるという発想を5世紀にできたことは人類全体の幸運だと思います。 猫師匠のレッスン、どれも面白かったです。 全エンドを無事に見られたのですが、初回プレイで到達した後継者エンドと猫さんと再会&別れエンドが好きです。 虚無の空間に絶対に棲んでいるだろうなーと思いながら、プレイを終えました。 猫さんがアオさんの首にKissしているスチルがさりげない狂気と愛情に溢れていて好きです。 逃げられないから強制的に「レッスン」も受けなければならない環境とは…! その環境の後でオイラー港の再開の時に「ありがとう」と言えるアオさんのメンタルは確かにルナティックなほどにタフです…!! @ネタバレ終了 数学好きさんも数学苦手さんも数学嫌いさんも、どんな人でも楽しめる物語でしたので、たくさんの方にプレイしてほしいと思いました。 疲れて脳の回転が鈍くなっていると師匠のレッスンが異次元語にしか見えないかもしれませんが、ちょっと腰を据えて数学に触れるぞーと思っている時だとスルスルと頭に入ってくると思います。 素敵な作品をありがとうございました!
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クラヴィーア機械帝国に自分の共和国を滅ぼされ、すべてを失った少女が打倒帝国のためにかつて侍らせていた異能持つ女性たちに声をかけるのだが……SF風の異能バトルもので、異能を含めて個性的な子ばかり。 終盤になると異能を使ったバトルが繰り広げられますが、異能の特徴によって戦い方が違うので読みごたえも抜群でした。 選択肢は冒頭の一箇所のみで、どの女性に声をかけるかだけでルートへ進めるので、全ルート到達しやすいのも遊びやすかったです。 @ネタバレ開始 個人的に一番好きなルートは女優さんルートでした。 女優さんがニコニコしながら敵を追い詰めていく様子が大変格好良く、肉弾戦に頼らずとも内側から崩壊させていく姿に痺れました。 ボスとの恋の駆け引きにも似たやり取りも最高でした。 @ネタバレ終了 異能バトルものが好きな方にもライトなSFが好きな方にもオススメしたい作品です。 素敵な作品をありがとうございました!
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凪ノ恋海の恵み豊かな農村で暮らすスイリンさんと、女性が剣を握ることが珍しい世で凛と剣を握るサハナさんとの物語、とても面白く感動的でした。 「そういうことかー!!」と、とある地点で度肝を抜かれました。 サハナさんの凛々しさとクールに見えて激情を秘めているところ、実は並々ならぬ想いを秘めているところなど、サハナさんの魅力に終始ドキドキさせられたギャルゲーでした。 世界観がしっかりと練られている&キャラクターとのやり取りや関係、双方の気持ちなどが丁寧に少しずつ変化していくシナリオが秀逸で、最後まで楽しませていただきました。 @ネタバレ開始 サハナさんの外見がとても好みだったので勢い余ってサハナさんのストーリーから始めました。 その後でスイリンさんのストーリーを読みました。 お祭りで腕を取るサハナさんが可愛すぎて失神しかけましたが、その後の彼岸花の髪飾りを経て、相思相愛であることを知った二人の夫婦生活が……サハナさんのデレデレぶりが、心臓がいくつあっても足りませんでした……!! かわいすぎる、この新妻っ!! そんな新妻サハナさんをニコニコ眺めていたら、アオイさんの嫁ぎ先の話を挟み、そのまま出立した先で物語終了……え、これはいったいどういう……???と慌ててスイリンさんのストーリーを読むことにしました。 スイリンさんのストーリーは屈託のない笑顔がかわいいなーと終始ニコニコでした。 記憶喪失のカイさんが村の皆に受け入れられてよかったーと思っていたら、ずっと助けてくれたラオさんが亡くなってしまって寂しくなりました。 スイリンさんの物語は場所が移動したり国や家同士の政治的なアレコレがない代わりに家族に重点が置かれていて、その分、会話がとても楽しかったです。 そして、そんな楽しさだったからこそ、ラオさんが亡くなられたことが寂しかったのにスイリンさんまで蝕斑に罹ってしまって、もう「ああああ……!」と画面の前で頭を抱えていました。 しかも薬草を手に入れた途端にカイさん、落ちるし……というわけで、タイトルが変わってすぐに時化編に進んだら―――とんでもない事実が待っていました。 なるほど、そういう……しゅ、主人公ーーーー!!!!!! マサヒデさんが記憶を失ってカイさんとして暮らしていたのか……と驚愕でした。 先が気になりすぎてノンストップで進めていたら、本作で唯一の選択肢と呼べる「どっち選ぶ~?」が出てきて「どちらも選べない!!」と悶絶しました。 2人とものストーリーを堪能し、お腹いっぱいになりました。 プレイ中ずっと、サハナさんが涙する度に「泣かないでー!」と画面の前でオロオロしていました(笑) スイリンさんを選んだルートのサハナさんとの決着で最後の「行かないで、独りにしないで」に「ぴぎゃー!!!」と変な悲鳴が出ました。 サハナさんが本当に好きすぎて、そんな涙は本当に一番見たくない涙でした……マサヒデさんがプラナリアみたいに分裂するしかないと本気で思いました。 スイリンさんと生きるマサヒデさんとサハナさんと生きるマサヒデさん……2人いないと2人ともが幸せになれないじゃないの!!(絶叫) サハナさんルートでは、終わった後のサハナさんのりんご飴の一枚絵がとても可愛らしかったです。 どちらの物語の終わりも国の情勢などから未来に困難はあるかもしれませんが、2人が幸せになることを願っています。 ……ところで、こんな大ボリュームの、商業作品なのではと思うハイクオリティな素晴らしい作品がフリゲでいいんですか? @ネタバレ終了 もうとにかくサハナさんが好きすぎて、後編ではサハナさんが傷ついていることが分かる心苦しいところが出てくる度に「マサヒデぇええ!!」と画面の前でマサヒデさんを叱咤したり、オロオロしたりしていました(主人公、本当にごめんね……君は君で色々抱えているのに) シナリオ、音楽、グラフィック、ボイスなど全てがハイクオリティで、フリゲでいいのかと思う圧倒的なボリュームの作品でした。 サハナさんが本当にただただどこまでも愛い素敵な物語でございました(大事なので結びにしました) とても素敵な作品をありがとうございました!!
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負け犬の癖に吠えるな注意書きにもありますが、暴力の嵐、モザイク込みでの猟奇的表現があるので、それらが苦手な方は要注意です。なんでもOKかつどこまでも病んでる青年が大好きな方にはこの狂った世界をオススメしたいと思います。 主人公の優太くんのラック(幸運値)はどれだけマイナスなんだと心配になるような、最初から最後までひたすらに重なり続ける不幸と絶望の物語でした。 現実世界にいたら光の速さで全速力で逃げ出しますが、美咲さんのイカれ狂いっぷりが凄まじく、どこまでも狂気を培養し続ける姿が好きな人にはドストライクなキャラなのではないかと思いました。 @ネタバレ開始 ご、ご両親が画面に初めて映ったと思ったら、まさかのモザイク肉塊ーー!!! このシーンが一番怖かったです…(涙) 現在実装されているエンドは2つのみということで、この地獄から優太くんが幸せになれるエンドは実装されるのか気になります…!! @ネタバレ終了 かなり重たい話、こってりした絶望感が続くので、めちゃくちゃ元気がいいハート・メンタルの時にプレイすることをオススメします! 素敵な作品をありがとうございました!
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緑山くんと肝試し雷の音や雷の光を見ると「空を疾る光まで見せてくれ」とまで思う私は緑山くんにドン引かれること間違いなしなのですが、緑山くんは緑山くんでルートによっては「み、緑山くん…???」と逆に私の方が一歩後退ることになりました。 エンド1-6まで無事に回収できました。 ルートによってハッピーになる場合もあれば、ガラリとテイストが変わりサイコホラーになる場合もあり、選択一つで主人公の未来が180度変わる展開がとても面白かったです! @ネタバレ開始 緑山くんと無事にお付き合いしてサイコホラー要素が顔を見せずに何事もなくラブラブに終わるエンドから入った後で緑山くん豹変何者ホラールートをクリアしたので「ちょっと目を離した隙に緑山くんに一体何が!?」と思いました。 「行かなくていい」と仰る緑山くんの背後の窓には「どう考えても誰かの手がー!!何かいるー!!」となり、このまま留まっても外へ出てもどちらもバッドエンドな雰囲気しかないのですが!?と、ホラー部分は普通に怖かったです……くすん。 さっきまで雷怖いと震えていたのに、今はケロッとして怖い顔して主人公に迫るなんて、緑山くん本当にどうなされた!? ついさっき見たエンドではラブラブでニコニコしていたんだけれど!?と、物語の展開の変わりっぷりに翻弄されました。 作者様のとっつきやすく軽快なテンポと魅力溢れる文章は今回も健在、むしろ今回はルートによってテイスト違いもあってか一際輝いていました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!