加藤 匠のレビューコレクション
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高層マンション自宅は高層マンションの最上階。 書斎で優雅に休日を過ごしていたら、閉じ込められてしまい…というお話です。 物語は次第に、手元にある本の内容と、同じ出来事を辿っているような気がしてきて、 すこし不思議な展開も見せていきます。 30分前後で遊び終わるぐらいのボリュームで、遊びやすいです。 @ネタバレ開始 逝ったー! また逝ったー!!! 他の方のコメントにもありましたが、何かと主人公が逝ってしまいます。 すみませんが「逝った」というワード選びも面白くて、私も笑ってしまいました。 …なんですけど、こちらはラストまで遊ぶと、ガラッと印象が変わります。 「書斎で・・・あの世へと旅立った・・・。」に収束していた美しさを感じました。 本の過程はともかく、最終ページの結末は変わらないという構成がとても良かったです。 これによって分岐していた各エンドも、 最後に1つの作品としてまとまったような感覚があり、とても印象に残りました! あと、エンドロール中の家族写真ですが、 過程によって写真が変わる演出がとても好きです! 文字で語らないことで「家族内でやっぱり亀裂が走ったか…?」とか、 「この家族はこの先も、きっと幸せだっただろう」とか、 想像が膨らむのがとてもいいですよね~。 オマケ?の教訓シナリオも、 エンド後にこっそりタイトル画面に追加されるのが良いですね。 ボリュームもありつつ、本編の後日談になっている構成が面白かったです! 写真もそうですが、遊ぶ側の興味をくすぐるのがうまいなーと思いました。 ※不具合? ちょうどシナリオとバッジが追加されたタイミングだったようで、 作者さんの次にバッジがGETできたのはうれしかったですが、 「ノベラー」を獲得できる場面がないかも…? です。 おそらく最後の最後だと思っているのですが、 「結婚だけが幸せの対象ではない」の先まで楽しませていただきましたが、 「プチノベラー」のバッジがGETできて終わりとなりました。 「ノベラー」のバッジも探しましたが、見つけられず…。 構成的には教訓が出現するタイミングで「プチノベラー」、 いま「プチノベラー」がGETできるタイミングで「ノベラー」が正しそうかなと思いましたが、 どうでしょうかね…見つけられてないだけだったら申し訳ないです…。 @ネタバレ終了 詳しくは↑のネタバレで書きましたが、 構成の美しさを感じられる印象的な一作でした!
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篠目村オカルト研究部の主人公と友人が、 心霊スポットの「篠目村」へ調査に行く物語です。 タイトル画面の雰囲気に興味を惹かれる方、 田舎の村を題材にしたホラーモノ、 村に伝わる古い伝承などが好きな方には、バッチリな一作です。 20分ぐらいで遊び終わる短編で、とてもコンパクトにまとまっています。 友人とのテンポ良い会話で進行していき、非常に遊びやすかったです。 @ネタバレ開始 個人的にBAD ENDルートの際に、野菜を分けてくれたおじさんがいたのがGoodすぎました。 あの描写によって、村人全員がグルになっているというか、 ローカルな伝承・信仰が根強く残ってる不気味さを感じ取れて、 とてもいい描写だと思いました。 あと余談になりますが、最近『犬鳴村』という映画を観ました。 こちらもいわくつきの心霊スポットになっている村の話で、 詳細はさておき、映画なので結末は1つです。 対して『篠目村』は結末が大きく変わる分岐点があります。 ゲームだし当たり前と言われたら当たり前…なのですが、 自分の選択で話を変えられるという点に、 映画とは違う「ゲームならでは」の良さを感じ、そしてその良さを再認識できました。 『篠目村』の分岐先の話が、どちらも魅力的だったことも、そう思えた理由だと思います。 異なる視点から見る伝承、結末…素直に楽しかったです。 @ネタバレ終了 短時間でノベルゲームの良さを感じ取ることができる、良き作品だと思いました!
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深夜徘徊のための音楽 beats to relax/stray to紹介文の通り、兄妹が世間話をしながら深夜を散歩する作品です。 プレイ時間としては1時間ぐらいですが、よく話題が尽きないなーと思うぐらい、 色んな話題でテンポ良く、会話のキャッチボールが進みます。 そのテンポがあまりに良いので、文字送りの操作すらも、 タイトルの「beat」の通り、何かリズムを刻んでるんじゃないかと思うほどでした。 心地よい音楽、深夜の不気味さとどこか非日常でワクワクもする画像、 それらとマッチした全体の画面構成がイイカンジで、そこに圧倒的な量の会話キャッチボール。 文字を送りながら、不思議とこの作品に浸かっていくような感覚があり、 良い意味で、会話を聞きながらも眠くなっていきました。 作中、あくびの話がありましたが、同じタイミングで出ましたし、 この作品に共感しつつ、リラックスしてる証拠なのかなと思いました。 @ネタバレ開始 散歩が終わり、括弧と別れて一人になってから「……」が連続するシーンが、 マシンガンのように会話していたのと比較して、静寂がものすごく感じられ、 めちゃくちゃ印象的なシーンになっていました。あそこはとっても良かったですね! @ネタバレ終了 この作品は深夜になんとなく、コレという目的もなく、 フラーっとネットサーフィンするような感覚の延長で、手に取ってみるのが、 不思議な感覚と共にリラックスもできて、適しているような気がしました。 ぜひ深夜に遊んでみてほしい一作でした!
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とある惑星の記録(No.S-01)まず「動いてるタイトル画面スゲー!」という印象から始まりました。 20分もあれば遊び終わる短編ですが、自分はもうですね、 時代を飛び越えて残るような記録とか、そういう設定が大好きなので、 かなりツボらせていただきました。 SF、未来っぽい世界観かと思えば、 中世ぐらいのファンタジーっぽさもあったりで、 これはどういう世界観なのだろうと、疑問符が付きましたが、 遊んでるとそこまで気になる事ではなくなりました。 全体で見れば、とても満足度の高い作品になっております。 @ネタバレ開始 内容が良かっただけに、この世界観への疑問符が、 もったいないと思ってしまいました。 これはたぶん冒頭の「遺伝子改良」「性能実験」「研究所」「宇宙」などのワードから、 未来っぽい雰囲気だと感じてしまったのだと思います。 あくまで1人目の子の時代の技術であり、特に未来未来した技術ではないと思うので、 例えばですがファンタジーの範囲内に収めるように 「魔法実験」「王都の最先端技術」といったワードに変えるとか、 もしくは作中よりもうんと過去に、失われたすごい技術があったかのような設定背景があって、 主人公はそのロストテクノロジー的な存在であり、それを都心部で復旧させた…とか、 何らか言い回しや設定で、回避できる問題かなとは思いました。 ※そもそも解釈が違ってたらスルーしてください…! ※あと先述の通り、遊んでると気にならなくなる点ではあります…! 気になった話はさておき、自分が特に良かったと思ったのは、 3人目の記録の時に、2人目の子から何らかの形で譲り受けたであろう、 耳飾りにさりげなく触れるシーンです。あれ、個人的にグッときました。 特に渡すシーンとかが描かれてるわけじゃないんですけど、 そこに想像/妄想の余地があって、めちゃめちゃ良かったです。 時代を超えて生きられる主人公だけど、彼女達は生きられない… でも彼女達の物品は主人公に引き継いで残る…そこにロマンがありますね! あと、ノベコレさんで公開するという形で、 この記録を配信してるという解釈もできて、 自分はこういうゲーム外にも、仕掛けが及んでると感じられる点も好みでした。 @ネタバレ終了 少々長くなりましたが、個人的に大好物な設定が多く、 短編ではありますが、大変満足度の高い一作でした!
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押入れ5分ほどで遊び終わる短編でした。 パッと見はホラーっぽいですが、話としては前向きに、暖かみのある感じです。 この作品で起きることは、言うてもほんの些細な出来事ではありますが、 主人公にとっては、自分を客観的に見つめ直す大事なキッカケになっています。 これがなかったら、この先はもっと鬱っぽい、暗い展開を見せていてもおかしくなさそうでした。 物事が「些細」かどうかは、主人公(受け手)によって変わるだろうなと思い、 そのあたりが印象深い一作に思いました。
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ティラノフェス2020オープニングティラノフェス2020、開幕おめでとうございます! 今年からの新しい催しも、遊ぶ側・作る側の両方にメリットがあり、 さらに楽しそうになっていますね~! 今年は参戦できなかったのが悔やまれるばかりですが、 遊ぶ側などで貢献できればと思っております。 ちなみにオープニングゲームは、 最後に待っていると「何か」があるのもお約束ですが、 ダイレクトに「あのページ」へ飛んだのは笑いました(褒めてます)。
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最終電車早朝。始発なのに最終電車。 読み始めると、その意味がすぐにわかります。 15分ほどで読み終わる短編で、内容的にはやや暗めなものですが、 最終的に主人公が前向きになっていくので、 読後感は意外にもスッキリと、気持ちいい感覚でした。 @ネタバレ開始 いざ自分が作中のような約束をしてしまったら、 一歩踏み出せるのだろうかと、考えさせられるものがありました。 また、それで一歩踏み出せなかった主人公の気持ちがとてもわかりますし、 踏み出せなかった後悔や葛藤、懺悔のつもりで後から見に行く心情、 友人は何がしたくて現れているかもわからなくて、 徐々に腹が立ってくる気持ちなどがよく伝わってきました。 ノベル"ゲーム"として考えると、 踏み出すかどうかが選択肢になってると、 とても悩ましい選択になって、より印象的になるかもなーと思いました。 作者さんのTwitterに、この作品のIFストーリーもありましたが、 それ自体は彼らが大人になった時のものであり、とても微笑ましい内容だったので、 分岐次第ではゲーム中でそういった展開になっても、普通に面白そう…と思った次第です。 二人で踏み出した、自分だけ踏み出した、 二人とも踏み出さなかったパターンも、ぜひ読んでみたいなと思いました。 上記のIFはきっと、二人とも踏み出さなかったパターンなのでしょうね。 また、友人が幽霊のような、すこし不思議な存在になったりして、そのあたりも面白かったです。 何十年もして帰郷した時に、友人の幽霊はどうなってるか~とか、 時間経過した後の話とかも想像すると、かなり面白そうだなと妄想が膨らみました。 @ネタバレ終了 一人で色々と妄想して、勝手に盛り上がった部分もありますが、 それができたのも、ポジティブな方向で作品が完結したことが大きいのかなと、気付きがありました。 たぶんネガティブなまま終わっていたら、こういった将来の妄想も展望もできなかったと思います。 遊び終わってそう感じさせてくれたことが、とても印象的で、良い作品だなと思いました。
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1MINUTE IRREVERSIBLE(ワンミニッツ・イリバーシブル)5分ほどで読み終わる超短編です。 …にも関わらず、映画のようにクレジットが流れるOPデモがあってビビります笑 @ネタバレ開始 内容的には別の"選択肢"からの、別の"運命"の追加も望んでしまうのですが、 そこが一切ない点に、本作品のテーマや、美学のようなものを感じました。 そもそも遊び手が追加を望んでも「Their Happy End」なので、 追加を望むこと自体が無粋なのだろうなと思ったりしました。 もしこれが「End」や「HappyEnd」だったら、現状よりも印象に残らなかった気がしたので、 言葉選び1つで大きく効果が変わるものだなぁと驚かされました。 @ネタバレ終了 短いながらもキレイにまとまっていて、 言葉選びも良いなぁと思った作品でした!
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コインランドリー深夜のコインランドリーを題材にした、少し不気味な短編です。 15分もあれば読み終わるぐらいで、気軽に手に取りやすいですね。 個人的に「夜のコインランドリー」という舞台がもう好みで、興味惹かれました。 不思議な現象との兼ね合いもあってか、さりげなく効果音が豊富な点が良くて、 雰囲気作りに大きく貢献していました。 読み進めるにつれて、じわりじわりと怖くなれる作品でした。 オチも読み手の解釈にゆだねられてる部分があり、 考察の余地があって楽しく、妙な不気味さも残って印象的でした。 作りで言えば、誤字脱字が少し目立ったのがもったいなかったです。 気付いてしまうたびに、良い具合に積み上げていた雰囲気が崩れてしまうので…。 あと自分も最近やらかしがちなのですが、例えば本作で言えば「パッぺーくん」とか、 怖くしたいゲームのはずなのに、ギャグっぽい言い回しや用語で、 雰囲気を損ねてしまうことがあります。 そのあたりも作品の方向性に合わせて、見直せると良いかなと思いました。 とはいえ全体で見れば細かな話で、遊んでいる時の不気味さ/奇妙さが勝っていたので、 最終的にはかなり好意的に遊んでおりました。 また、物語の大半がコインランドリーのシーンなので、 もし怖いゲームの方向性に寄せるのであれば、 コインランドリーがもっと不気味な画像になっていると良かったなと思いました。 ゲーム中の画像もCG、イラスト、実写で混ざってましたが、 統一感があった方がクオリティも高く見えるかなぁと思います。 作品紹介にもある、夜のマンションの実写画像が不気味で良い感じですし、 個人的には全て実写で統一すると、不気味さがグッと増して、 クオリティが数段上がるんじゃないかなと感じました。 実写テイストのコインランドリーも見たかった…! 勝手に「こうしたら良さそう」な話も色々書きましたが、 まだ改善していけるところがありそうってことで、期待大です。 楽しませていただきました!
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死ぬよりもつらいことエンドロールが流れる中、深夜に思わず唸りました。 良い映画を観終わった後なんかに拍手したくなる感じが、こみ上げてきました。 テーマ的に「面白かった」という言葉選びは不適切かもしれませんが…。 ただそこは素直に。ノベルゲームとして面白かったです。 夢中になって最後まで、ノンストップでプレイさせていただきました。 ノベルゲーム、フリーゲーム、広くは創作活動って、 自分に関心があること、もしくは実体験したことなど、 身近なものを題材にすることってよくあると思うのですが、 そういう意味で、このテーマを選んだ理由にとても興味が湧きました。 この作品を遊んだら、本作品の紹介ページとか、作者さんのブログとか、 めっちゃ読みたくなりますね。というか読みました。 それらも含めて考えさせられるものがあり、興味深かったです。 @ネタバレ開始 ranというハンドルネームの決め方が、wanの意思を継ぐようで格好良かったですね! ザクロ編でwanとの関係性が出てくるところが、伏線回収された感覚があって良かったです。 あとさりげないんですけど、後日談でザクロの苗字が変わってるところが超最高でした。 さて。 ブログでは「褒めるだけでなく批判もしてください」とあったので、私も思ったことを…。 しかしながら色々と感想をまとめているうちに、作者さんが自ら問いていたように 「ノベルゲームを作ってどうしたいか?」の方向性によって、 全然求めてない感想や、的外れなことを書く可能性が大いにあるだろうなと思いました。 一意見として読んでもらえればと思います。 まずタイトルからもわかるようにテーマが「重い」です。 ゲームに期待するものって根幹は「楽しみたい」「ワクワクしたい」とか、 ポジティブな感情を期待して遊び始めると思うのですが、 タイトルや紹介画像を見るに、そういったものではないだろうな、ということが想像されます。 わざわざ暗い気持ちになりそうなものには踏み込みにくいので、 プレイされるまでのハードルが高いだろうなと思います。 (そういった感情を欲してる時は良いんですけども) ただこれはテーマが重いことを、悪いと言っているわけではないです。 作中、真一郎が作ったゲームでも似たようなことを語っていたと思いますが、 重いテーマの話が描けるということは、 その景色を知っている人にしか描けない景色だと思いますし、 これはもう立派な作風・個性・特徴だと思います。 無理に変える必要もないと思っています。 ただテーマとして掲げているということは、いじめ、うつ、自殺などについて、 もっと多くの人に認知してほしい、関心を持ってもらいたい、 考えてもらいたいのかな…? と推測したのですが、 それでいうとメッセージ性を含んだ本作品を多くの人に遊んでもらうことが、 「ノベルゲームを作ってどうしたいか?」の、1つの答えなのかなと思いました。 遊んでもらえばもらうほど、関心持ってくれる人が増えるので、 作者さんの願い(意図)も叶う…って寸法ですね。そもそも違ったらすみませんですが…。 …もしこれが求めている方向性、答えだとすれば、 まずは「遊んでもらえるようにハードルを下げる」ことが、 この先の課題なのかなと思いました。 その観点でいうと、グラフィックは第一印象があまり良くないです。 立ち絵は好みもあると思うので置いておきますが、タイトルは別です。 タイトル画面はWEBなどでもトップにくる画像なので目立ちます。 白背景に黒字タイトルは、どうしてもクオリティが低く見えてしまいます。 もし第一印象で「これはクオリティが低そうだ。遊ぶのやめておこう」で、 プレイされる機会を1つでも失ってるとすれば、 内容は良いだけに、かなりもったいないなぁと思います。 もし自分がこの作品に手を加えるとしたら、 まずタイトル画面に力を入れて、初見の第一印象をアップさせると思います。 あとはメッセージウィンドウに常に 「死ぬよりもつらいこと」の文字がありますが、これは外しちゃうと思います。 紹介画像を見てても思いますが「死ぬ」というワードのインパクトが、良くも悪くも強いのです。 常に数%の重さがかかってる、そんな感じがしてしまうからです。 あとは単純にタイトルを頻繁に出すよりも、 出すべきところでだけ出した方が、バシッと決まるかなと思ったからです。 例えばラストのエンディングテーマの直前でだけ出すとか、 タイトルに戻ってきたときに表示されるので、それを見て作品内容を振り返らせる…とか。 そういう演出もより引き立つかなと。 いざプレイが始まってしまえば、本作品はノンストップで遊べるテンポの良さ、 テキストの読みやすさ、シナリオの面白さもあって、 そのまま最後まで遊び通せるパワーがあると思っていますので、 最初の、遊ぶまでのハードルさえ下げられれば…と思った次第です。 あとは他の方の感想にもありましたが、 テーマをうまく紛れ込ませるのも良いなと思いました。 死、自殺、うつなどの言い方を変えるだけでも、印象は変わるかもしれません。 例えばですが、未開拓の惑星での未知なる病が、実質うつのような状態になるもの…とかにして、 設定を少し変えてみて表現するとか…? @ネタバレ終了 正直なところ投稿するかも迷ったのですが、 作者さんの創作活動に、何かヒントや参考になればと思い、投稿しました。 的外れすぎるとか、不快になるようでしたら即削除しますので、 その際はお知らせください。