街八ちよのレビューコレクション
-
教室に巣食う悪魔たち作品の趣旨にきちんと沿っているという意味で、終始嫌な感じのする空気を持つ作品でした。 演出や立ち絵などのグラフィックが武骨で退廃的な雰囲気に統一されているため、世界への没入感が非常に良かったです。 事件について様々な立場の他者から聞いたことのまとめを振り返るという形で物語が進行しますが、それぞれの話者の主観や思惑、推論やステレオタイプ的考えの偏重などが強いなあという感じがしたので、「どれがファクトでどれがオピニオンだ」と悩む楽しさがありました。 また、変に『いい人』が出てこないので、登場人物全員を真っ向から気兼ねなく疑ってかかれるのが個人的に良かったです。 @ネタバレ開始 久住さんが犯人なのは妥当だなあと思っていましたが、協力者がいて、最初にくれたキーホルダーにあんな細工が施されていたとは思いもしませんでした。 画面の構図(カメラアングル)がシナリオに意味を成す作品が好みなので、それも相まって真実がすべて明らかになったときはある種のカタルシスを得られました。 久住さんがこちらをのぞき込むグラフィックは素直にすごくぞっとしました……。 @ネタバレ終了 (あくまでもこれはフィクションなのでわざわざこういったことを書くのは野暮かもしれませんが)一定の特性や体験を持つ人にとっては辛辣・苦痛に感じる可能性のある描写が多いですが、設定や演出がよく練られた、プレイヤーに楽しんでもらおうという試みがよく感じられる作品でした。
-
目覚めた宇宙にアメが舞う児童文学のような、幻想的かつ感傷的な雰囲気の作品でした。 それに加えて散見されるほの暗い描写に、穏便にはいかないのだろうなあと思いながらこわごわとプレイさせていただきました。 しかしながら1~3のエンディングは「ハッピーエンド」と言えるような希望溢れるものばかりだったので「良かったなあ」と思いながらも少々拍子抜けしつつ、「いや、でもあのアイテムは何だったのだろう」と思い返しながら最後のエンディングを拝見しました。 @ネタバレ開始 しいなちゃんは目的を果たすために虎視眈々と『経験』を積み重ねており、みあさんがくれた「あと一歩踏み出す勇気」がそんなふうに作用してしまうとは思ってもみませんでした。 母親の支配下から脱出するために意志を持ち、行動しようとすることは賢明だとは思いますが、それが社会的に許されない行為であるのはどうにもジレンマであり、とはいえしいなちゃんを救えない(救わない)のも社会なんだよなあとやるせない気持ちになりました。 あと私も、みあさんは髪が短い方がかわいいと思いました! @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
Dear Virgin. - ディア・ヴァージン -当方は断じてドMではありませんが、アーティスティックな雑誌のスクラップ記事のようなスクリーンショットに惹かれてプレイいたしました。 ゲーム本編も上記のような素敵なイラストがふんだんに使用されていたり、ムービーを画面合成して演出のひとつとしていたり、相手役の彼氏くんがフルボイスだったりと、オートモードで進められることも相まってまるで映画を観ているようなゲーム体験でした。 @ネタバレ開始 恋くんはなんだかんだ言っても幻想的(精神的)なものに憧れているのだろうということがよく感じられましたが、それに対して主人公は即物的(肉体的)なものでしか満足感を得られないようだったので、利害は一致していても心がきちんと交わることはないのだろうと思っていました。 しかしながら終盤で主人公は恋くんの気持ちに気づいているし後天的で作為的なマゾヒストであることがわかるので、まさに『両片思い』と言えそうな感じですが、表面上はすれ違いがまぬがれないのがもどかしくて切ないなあと思いました。 客観的に見れば歪な関係に感じますが、彼らの身上や立場を考えればこれが絶妙なバランスで彼らにとっての安寧を生んでいるのだと思うと、『よくない関係』とは一概には言えない、そんなレッテルを張ってしまいたくないなと感じます。 自分とは全然違う環世界に生きる人々の日常が体感できて、とても興味深かったです。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
リボン仕掛けのアンドロイドレトロフューチャー感あふれるタイトルに惹かれてプレイしました。まさに世界観が近未来的で、全体的に男児向けアニメのようなコミカルでポップな雰囲気があり、親しみが持てました。 選択肢によって物語が分岐しますが、選んだものによってがらりと展開が変わるので、毎回驚かされました。 また、主人公のエントの飼い犬の名前が『ドリー』なのが、個人的にセンスがあるなあと思いました。 @ネタバレ開始 「アンドロイドが人間になる」というのはかなり王道な設定だと思うのですが、本作は逆に人間(アンドロイドを制作した側)がアンドロイドになるために、珍しくて新鮮でいいなあと思いました。 「博士が好きだからこちら側の存在になってほしい」と願うベルベットさんは、かなりアクティブな存在だなあと感じます。 それゆえに少し間違うと暴走してしまいますが、心根は素直で優しい性質なんだろうなあと思います。 それというのも、エントがそのような感情(タユラさんへの想い)を込めてリボンをつけてあげたから、そんなベルベットさんが生まれたのだと思いました。 タユラさんもそっけない人なのかと思いきや、実際は思いやりのある人で好感が持てました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
ヤンデレくんは今日も平和主人公の玲くんが、自身が監禁されている状態だというのにあまりにも冷静に自分の置かれている状況を分析してのけるので、開幕からかなり笑ってしまいました。 特に最初のスチルの玲くんが玉座に座る王のごとき威風堂々さを醸し出していたため、「タイトルにも『平和』とあるし、玲くんが全部円満に問題を片づけてくれるのでは……?」と期待していました。 しかしプレイすればプレイするほど「平和はどこ……?」と思ってしまうほどにはいろいろな意味で救われないエンドが複数あるので、見ていてつらかったです。 とはいえ玲くんのつわものっぷりで伊智くんをなだめるさまはなんともほのぼのとした雰囲気で、基本的には和気あいあいとしたコミカルな掛け合いが楽しかったです。 選択を誤ると即死するので周回プレイ必須ですが、一周がそれほど長くないのでセーブとスキップを駆使すればサクサクプレイできるのも良かったです。 @ネタバレ開始 伊智くんは素直であるがゆえにふきこまれた終末論的な話で思い詰めてしまったけれど、素直だったからこそ玲くんの言葉で救われたのではないかなあと思いました。 実際の世界は終わらなかったけれど、今回のことでそれまでのふたりの世界は終わりを迎えて新しい世界が始まったんじゃないかなあと、ふたりが生還するエンドを見て感じました。 でももうひとつのエンドの穏やかな顔で笑う伊智くんにも心惹かれました……! そしておまけでその後のふたりが垣間見れるのが嬉しかったです。なつかしのBL設定あるあるだ……! いつまでも穏やかに他愛ない日常を楽しんでいってほしいと思うふたりでした。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
夢魔さんと死にたがりさん人生に希望を持てなくなり身を投げようとした男性(死にたがりさん)が人間の魂を食べて生きる悪魔(夢魔さん)と出会い、命を渡す代わりに一日だけ自分の彼女になってもらう……というお話なのですが、その導入がシンプルだったのと夢魔さんがかわいくて常にふわふわしたオーラをまとっているおかげで、暗い気持ちにならずに純粋に彼女とのデートを楽しむことができました。 行き先がたくさんあって選ぶ楽しさがあり、場所によってふたりの意外な一面や過去を知ることができて楽しかったです。 周回プレイをすることでどんどんふたりのキャラクター性が明らかになっていくところがおもしろかったです。当方が抱いていた第一印象からふたりの印象がかなり変わりました。 最後には「希望って思いがけないところにあるものだよなあ」と前向きな気持ちになれました。 グラフィックやキャラクターの設定から作者さんの作品に対する愛情が伝わってくる、とてもあたたかい作品だと思いました。 素敵な作品をありがとうございました。
-
「君も助けてくれないんだね。」いわゆる「マジョリティの世界」に迎合できなかった者たちのお話です。 かなり極端ではありますが、彼らの言動や思想にはある種の『正しさ』が一貫して存在しているので非常に納得感があります。 綺麗ごとが一切存在しないのでむしろすがすがしささえ感じました。 特に主人公の嗜好に関しては早々に察することができ、変に期待を抱かずに冷静に事の顛末を見守ることができたので、いくらか気が楽でした。 それでも『お隣さん』の境遇には思わず目を覆いたくなってしまうほどの悲痛さと無情さを感じました。 @ネタバレ開始 イブキちゃんは「生に縋り付いている」というよりも「括りつけられている」という感じがしていたので、通常エンドでは自分で自分の行く末を選択する意思が残っていて良かったなあと思っていたのですが、真エンドを見て「むしろそんな意思は持たないほうが楽だろうなあ」と思いました。 そして『同居人』という名の神さまは一体どのような存在なのだろう、やることがあまりにも直接的で人間臭いのでやはり『神』という名目の人間なのだろうか、と勝手ながら想像しました。 ヒトは不条理に耐えられないためすべてに意味や原因を設定したがりますが、そのような「人間特有の営み」をプリミティブなモチーフで描いた稀有な作品だと思います。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
ネコと和解せよ!しっかり練られたSF設定も感じつつ、いい意味でつっこみどころ満載の設定がおもしろかったです。 現実世界でもヒトはネコを友達だと思っているけれど、猫もまたそのように思ってくれていたらいいなあとストーリーを読み進めながら温かい気持ちになりました。 かわいいネコがたくさん見られて楽しかったです! @ネタバレ開始 途中まで「アイリスがヌコウイルスによってヌコになった姿が猫猫」だと思っていたのですが、終盤で「いや右下のメニューボタンがアイリスだったんかーい」と盛大に笑わせていただきました。 その他にもくすっと笑えるポイント(おにぎりとか選択肢とか)がちりばめられていて終始楽しかったです。 ハッピーエンドでみんなが仲良く暮らしている姿を見て再び心が温かくなりました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
コイサクカガミ早春を思わせる深いブルーとパステルピンクの背景が印象的な、きらきらしたかわいらしい作品でした。 立ち絵のバリエーションが豊富だったり、まばたきのアニメーションが用いられていたりと、グラフィックにこだわりを感じます。 システムもシンプルかつ操作しやすくブラウザ(PCとタブレットでプレイしました)でも快適に遊べたのでとても丁寧に制作されているなあと思いました。 ストーリーは学生と青春特有の香りをすごく感じて、甘ずっぱい気持ちになりました。 鏡水ちゃんも桜月くんもけなげで、とても愛おしいです。 @ネタバレ開始 選ぶ選択肢によって告白する人物が変わるので、相思相愛という雰囲気が感じられて幸せな気持ちになりました。 おまけエピソードもかわいらしくて、最後まで『かわいい』と『ときめき』がたっぷりつまった作品だなあと思いました。 モミジ様を無言でなでる桜月くんがかわいいです。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
-
人生はつづくよ、どこまでも伝えたいテーマが終始一貫しており、プロットがシンプルな構造だったのでストーリーが非常にわかりやすく読みやすかったです。タイトルと同様の趣旨のセリフが作中何度か登場しますが、人物によって、または時間経過などによってそれをポジティブにとらえているかネガティブにとらえているのかが異なるのは興味深いなと思いました。 登場人物が皆不器用で、必死に前に進もうともがくさまがとても人間らしく、現実味がありました。どこまでも続く人生を前向きに生き抜いてほしいとエールを送りたくなります。 グラフィックやボイスなどのサウンド面も洗練されていて、非常に印象的であり没入感があってよかったです。 @ネタバレ開始 心春ちゃんの伯父があまりにもモラルに欠ける発言をしていたので唖然としました。主観的で加害性のある意見を子どもである心春ちゃんに言ってしまう時点で一番迷惑なのはこの人のような気がしますし、このような人が身内にいることのほうが心春ちゃんにとって不憫なことかもしれないなあと思いました。しかしそのことを心春ちゃんが「つらかった」と絢人くんに打ち明け受け入れてもらえたことで、心春ちゃんはとても救われたのではないかなと感じました。 絢人くんが心春ちゃんを抱きしめるスチルも相まって、そんな存在に出会うことができてよかったと心から思いました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。