九州壇氏のレビューコレクション
-
対象She-11に関する記録人類がほとんど滅びかけた世界を舞台とした物語。僕は1時間ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 本作品はシナリオの構成が特に良かったと思います。いきなり制作者よりの目線での感想となり恐縮ですが、個人的には緩急がよくきいていた点が素晴らしかったと思いました。死と隣り合わせの戦闘シーンでは緊張の糸がピンと張り、その後のシャルとの微笑ましいやり取りではまた糸が緩んで……、というように、良いテンポで緊張と緩和が繰り返されていました。その巧みな構成のおかげもあって、本作品は読むのが実に楽しかったです。 また、主人公に迫られる選択が大変シビアであったことも印象的でした。こうした問題に彼が悩んでいる様子を通して、彼らの世界で生きる厳しさがひしひしと感じられたようにも思います。本作品の中では、「舞台設定について長々と説明されている」と感じたシーンはありませんでした。にもかかわらず、あの世界をリアルなものとして感じられたのは、主人公の葛藤が真に迫るものであったからかな、と思いました。 厳しい選択を迫られた主人公とシェルでしたが、だからこそ、ひとつを選びとった彼らに強く感情移入できました。ノエーシスが1人で起動するシーンはめっちゃ熱かったです……! その後の展開は、ちょっとウルッときてしまいました。2人で生きて夢をかなえてほしかったという思いはもちろんありますが、あのような形であれ夢が叶ったことに救いを感じました。最後のイベントスチルも印象的で、特に、ノエーシスもそこにいることが素晴らしいと思いました。 @ネタバレ終了 総じて、プレイ時間に比して強い感動と満足感を味わえる作品だったと思います。 素晴らしい作品をありがとうございました!
-
和泉くんと三姉妹。~夏の夜奇譚~「和泉くんと三姉妹。」、「和泉くんと三姉妹。~Summer memory~」に続いてプレイさせて頂きました。自分も「和泉くんと三姉妹。」シリーズの攻略に少し慣れてきたようで、今回はスムーズに6エンドとも回収することが出来ました(笑) 本作品もキャラクターのかわいらしさを堪能させて頂きました! 個人的には、今回は特にあまねさんのお話が素晴らしかったと感じました。過去作でもそうでしたが、自分はあまねさんの意外な一面を見るとクラッときてしまう体質のようです(笑) しずくさんのお話は笑ってしまいました。しずくさん、霊感が強いんですね……! 彼女がニコニコしているイベントスチル、大変良かったです(笑) くるみちゃんは相変わらずで、何だかホッとしました。 素敵な作品をありがとうございました!
-
シリアルキラーの名前主人公環樹と、そのバイト先の常連客である「ジョン」の心の交流を描いた物語。ボリュームのあるシナリオ、約100枚もあるイラスト、主要キャラ2人のボイス、主題歌、ムービー。それら全てを作者様おひとりで自作されたという凄まじい力作です。僕は4時間30分ほどで読了しました。 短くはない作品でしたが、最初から最後まで一気に読ませて頂きました。本作品は「読ませる力」がある作品だと終始感じていました。それはどこから来るのだろうと考えてみると、ジョンというキャラクターが魅力的で、「もっと彼のことを知りたい!」と思わせてくれたからだと思います。 @ネタバレ開始 第1章は環樹視点でジョンとの交流を見ていくわけですが、ジョンの個性的な言動を楽しみながら読むことが出来ました。個人的に、2人でクラゲ館に行ったくだりが特に良かったと感じます。ジョンの色々な顔が見えてくる過程や、正反対のようにも見える2人が惹かれ合っていく過程は読みごたえがあり、面白かったです。 第2章では、ジョン目線で物語をもう一度見ていくことになります。この構成の場合、同じ出来事を2度読むことになるため、読者に退屈を感じさせてしまうリスクもあると思います。しかし、本作品ではそんなことはありませんでした。ジョンの内面がコミカルなイラストで描かれる点が大変ユニークで、素晴らしかったです。「次は何を見られるんだろう」と楽しみにしながら読むことが出来ました。特に印象的だったのは、かわいらしい空想と殺風景なジョンの部屋があわさった光景でした。これは彼の精神世界を色濃く象徴したものじゃないかな、なんて思いました。 総じて、「ジョンの内面にはどんな世界が広がっているのだろう」と興味を持たずにはいられない構造になっていたと思います。 ジョンの内面については、自分の力不足もあって、正直あまりよく理解できなかったと感じています。彼がつらい境遇で生きてきたこと。子供時代のある時期に固着しているためなのか、大人らしい冷めた思想と子供らしい内面世界の両方を併せ持っていたこと。そうしたところはある程度理解できましたが……。個人的には、悦びすら覚えながらあの凶行を行うようになるまでの過程がうまく了解できませんでした。竹内をぶん殴ったあのシーンなら理解できたんですけどね(笑) 人を人と思えず、まるでモノのように認識するその冷たい一面はどこからきたのか。先天的なものだったのか、それとも後天的に身に着けたものなのか……。それは今でもよく分かっていません。 理解できないのは多分、自分が環樹寄りの人間だからなんだろうなと思います。そして、そもそも彼の内面をうまく言葉で説明しようという試み自体がおこがましいことかもしれないという気もします。 自分の力ではどれだけ考えても分からないところがあったのですが、彼の理解できない部分にこそ僕は強く惹かれたのだとも感じています。また、彼の心の中には確かに人間らしくて温かいものもあったと感じましたし、その温かいものを愛しく思いました。僕はジョンに対して様々な感情を覚えたのですが、いずれにせよ、実に不思議な魅力を持つキャラクターだったと思います。 なお、ジョンにばかり言及してしまいましたが、環樹も良いキャラクターだったと感じました。彼の実直さは本作品において清涼剤の役割を果たしていたように思います。彼みたいな友達がほしいな、なんてことも思いながら読んでいました(笑) 少しダークな雰囲気のある本作品ですが、ユーモアが効いているところも多々あり、そこも本作品の魅力の1つだと思いました。とりあえず、ジョンのクラゲダンスは大きな見どころですよね(笑) 駅名は不意打ち過ぎて吹き出してしまいました。「良く笑わずにアナウンスできるなあ……」なんて、変なところに感動してしまいました(笑) 他にも、個性的すぎる店名にも笑わせて頂きました。 ボイスも素晴らしいクオリティだったと感じます。特に、環樹とジョンのどちらも作者様が担当していると知って驚きました。声の高さだけでなく、声の調子の温かさも違っていたので、全く気が付きませんでした。 @ネタバレ終了 総じて、作者様のこめた思いがいたるところから伝わってくる力作だったと思います。素敵な作品をありがとうございました。
-
ミラーリングサマー夏の田舎を舞台に繰り広げられる物語。僕は3時間くらいで読了できました。本作品はシナリオが特に素晴らしく、特に後半は感嘆のため息を何度ついたか分かりません(笑) なお、本作品はネタバレなしで語るのがなかなか難しいです。以下の「ここからネタバレ含む」については、本作品の核となるネタバレを多々含んでいます。未プレイの方は是非ともプレイして頂いてから読むことをお勧めいたします……。 @ネタバレ開始 プレイしてすぐに良いと思ったのは、夏の田舎を舞台にしていることです。僕は小さな民宿に泊まったりするのも好きな人間なんですが、この作品の雰囲気はとても心地よかったです。田舎の生活の様子や、人と人の距離が近い感じがよく伝わってきました。ちょっと不適切な表現かもしれませんが、主人公と共に「夏の冒険」をしているような気持ちでプレイさせて頂きました。背景画像も印象的で、特に神社の写真が良かったです。 僕が本作品で最も優れていると思った点は、そのシナリオでした。良い意味で予想を何度も裏切られる素晴らしい構成だったと思います。クリア後はもう一度読みたいという気持ちに襲われ、僕は結局3回読みました(笑) 本作品では冒頭から意味深なシーンが出てきて、その後もどんどん謎が深まっていきます。違和感はずっとあったのです。「何か大きな事実が隠されている」のはこちらも分かっている。ですので、その謎を解こうと自分なりにずっと考えていたのですが……。結局、ほとんど分かりませんでした(笑) 「‟女性‟でしょ……?」という驚愕の一言から始まる終盤のどんでん返しは圧巻でした。その1度目のどんでん返しだけでも驚いたのに、その後もどんでん返しが続き、言葉を失いました。僕としては悔しいという思いはあまりなく、ただただ「参りました」という気持ちです(笑) 自分も創作をする身ですが、「こんな仕掛けをよく考え付いたなあ……!」とも思いました。 全てが分かった後でまた読み返してみたところ、想像以上に沢山の伏線があったことに気が付きました。例えば夏通の「心外だ! あたしが心理的社会的要因なんて!?」という言葉。夏通のセリフって、エコ発言ももちろん多いですけど、その陰で医学的用語もよく使っていたんだなあと思いました。孫こと美蘭で言えば、「三人も入れないよ!」という発言なんかもそうですよね。七榎なんて、初登場のところで思いっきり「理知的な少年の様な声が俺に向けられる」と描写されていたんですね……! 創作する側の目線で感じたことを少しだけ書かせて頂きますと……。このシナリオを書くのは苦労も多かったのではないかと思います。実際に起こっている出来事をちゃんと描写しつつ、その上で「主人公視点で筋の通った話」を書かなくてはならないわけですから。2つの視点をもって文章を紡ぎだしていくのはかなり神経を使う作業だったのではと思いました。しかし一方で、これだけ多くの伏線をしこんでいくのは意外と楽しかったかもしれないな、なんてことも思いました(笑) また、これだけ構成をひねったにも関わらず、ラストはとても綺麗に着地した点にも驚きました。「ミラーリング」というキーワードが最後までいきてくる、大変美しい物語だったと思います。個人的には、ラストで鷺乃にもフォーカスがあてられた点も素晴らしいと感じました。彼女らのあり方は、いわゆる「普通の生き方」とは少し違うかもしれません。でも、今回の件を通してこれから幸せになってほしいと強く思いました。 @ネタバレ終了 総じて、読みごたえのあるシナリオが魅力の素晴らしい作品だったと思います。少し経ったらまた再読をしてみたいなとも思いました。 ありがとうございました!
-
graduation卒業をテーマにした短編集をまとめた作品。僕は2時間15分ほどで全て読了できました。シナリオだけでなく演出面も丁寧に作られており、至るところで熱量を感じられる作品でした。総勢29名での制作ということで、その点にも感銘を受けました。制作にかかわった皆様、本当にお疲れさまでした。 @ネタバレ開始 最初に演出面についてです。こうした短編ゲームの場合、文字で表現できることは少なくなり、その分文章以外の要素が作り出す雰囲気がより重要になってくるように思います。本作品ではお話ごとにUIやイラストが変わり、それぞれ独自の雰囲気が作り出されていました。その点がまずは素晴らしいと思いました。演出面で特に印象に残ったのは「憧憬の訃報」、「結局いつも通り」、「落葉の刹那」の3本でした。 OPムービーも素晴らしい出来栄えだったと思います。オシャレで疾走感もあるBGMと映像がよくマッチしていたと感じました。 シナリオについて。本作品は短編集ではありますが、「編集」と「先生」の交流を描いたメインストーリーも準備されています。このシナリオも大変面白かったです。 こういう立ち位置の物語には、読者を引き込み、読ませる力が要求されると思うのですが、その点も十二分に満たしていたと思います。先生が抱えている謎の見せ方が巧みで、どんどん先を読みたくなりました。教養の足りない僕は、OPを見て「先生、人を〇して木の下に埋めたのか!?」なんて思ってしまいました(笑) 先生のキャラクター、とても素敵です。先生の人間臭い一面に触れるごとに、先生のことが好きになっていきました。それぞれの成長を感じるラストも素晴らしかったです。 以下、12個のシナリオについて感想を書かせて頂きました。 憧憬の訃報 演出面が特に面白いと感じた作品です。音声が流れている最中も画像がどんどん切り替わっていくのですが、この演出によって「ラジオを流している感」がすごく伝わってきました。たかし君のラジオ、聞いてみたいですね……! オチについては全く予想外でした。「これ、妄想エンドの可能性もあるのでは?」なんて思ったのですが、さすがに考えすぎですかね(笑) 関係性を科学する 春風のような心地よさを感じる物語でした。こういう正反対の2人の関係性、好きです。2人の声優さんはキャラクターによく合っていたと感じました。手をつないだ2人のイラストも良かったです。 人間卒業記録係 オチに1番衝撃を受けた作品です。例の力の話を聞いた時も、僕は「まさか、彼女を困らせている人間を〇すつもりか!?」なんて思ったのですが……。いや、本当にすさまじい展開でした(笑) 「大丈夫だよ。僕がずっと、君を見守り続けるからね」という台詞は、最初と最後で全く違ったものに聞こえました。豹変後の立ち絵イラストはちょっと夢に出てきそうです(笑) さよならカエルさん こういう、「スポットライトの外側にいる人々」を書いたお話、大好きです……! 夢のために一生懸命頑張る人って素敵ですよね。「カエルさん」に感謝を伝えるシーンは、ちょっとウルっときてしまいました。このシーンは声優さんの演技も大変良かったです。 卒業式のそのあとで 2人のキャラクターが実に魅力的でした。弥生さん、めっちゃ可愛いですね……! 彰君にからかわれて慌てている様子が素敵です。「これはひょっとして、ずっと弥生さんがお姉さんらしく振舞う関係だったけど、最近になって彰君がからかうような仲に変わってきたのでは?」なんてことまで妄想しました(笑) すごくお似合いの2人だと思います。 結局いつも通り まるで映画のワンシーンのような、素敵な短編作品でした。何気ない会話の端々からお互いを想いあっていることがひしひしと伝わってきました。本作品は演出も素晴らしかったです。特に後半、キラキラとした光のムービーが追加される点が良かったと思います。美しく輝くこの時間にも終わりが近づいていることが表現されているように感じました。 彼方へ 別れの悲しみを真っすぐに描いた作品だと思いました。描写にもリアリティがあって良かったです。彼女も、あの言葉を言うので精いっぱいだったんだろうなあ……。少し冷たい印象も受けるUIや全体的に暗めのイラストもお話の雰囲気によく合っていたと感じます。鉛色の空のもとで咲く桜のイラストが特に印象的でした。 好きって言って! オチで悶えてしまうようなお話でした。天然のようで実は……、な優香ちゃんが素晴らしいです。RPGでよく目にするようなデフォルメのキャラ絵が出てきて、しかもそれが歩行したりする点に驚きました。ティラノってこういうこともできるんですね……! オチにつながる演出も粋だったと感じます。 過去との卒業、未来への始業 設定があまり語られていない分、想像の余地が多々ある作品です。それぞれの表情を見る限り、2人は幸せと呼べる6年間を過ごしたのだろうと思いました。状況に比して穏やかなBGMもまた印象的でした。男はこの結末に心から満足していたんでしょうね……。 春と桜 切ないお話と思いきや……、な作品。こういう裏切りは大歓迎です(笑) 個人的にすごく「春らしさ」を感じた作品で、読後は温かい気持ちになれました。桜が舞い散る演出が良かったです。 出発の刻 これまた、「その後」の妄想をせずにはいられないお話でした。ルナシィ王妃は普段からレディアのことをよく見ていて、その心の内を見抜いていたのでしょうね。これからレディアはどうなるのか。そして、彼らの国はどうなるのか……。もし続きがあればぜひ読んでみたいです。 落葉の刹那 個人的に1番好きな作品です。切なくも美しいお話で、強く心に残りました。ビジュアル面については、特にラスト2枚のイラストが印象的でした。抽象的に描かれた風景は、彼の胸のうちにある激しい感情を表現しているのかな、と思いました。 @ネタバレ終了 総じて、物語ごとに大きく異なる雰囲気を楽しめる力作だったと思います。個人的には、エンディングで作品を書いた方が明らかになる点も良かったです。「このシナリオ、あの作品を書いた作者さんだったの!?」という驚きも味わえて、最後まで大いに楽しませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました。
-
自己満足でも偽善でも「優しさ」について考えさせられる物語。僕は20分ほどで読了できました。自分自身でも考えることの多いテーマであり、興味深く読ませて頂きました。登場人物たちの生き様は心に残るものがありました。 @ネタバレ開始 本作品はストーリー構成にも工夫がされており、終始退屈することなく読むことが出来ました。 個人的には、登場人物らの優しさについての考え方が深く印象に残りました。 何が優しさになり得るかって、本当にケースバイケースですよね……。「短期的にみれば相手のためのようでも、長期的にみると相手のためになっていない」みたいなケースも結構あって、何が優しさになりえるのかは本当に難しいと常々感じています。作中で2人が言っていたように、良かれと思ってした行動が自己満足で終わってしまうことも少なくないと思います。 しかしそれでも、「優しくありたい」と考えること自体は尊いものだと思います。 主人公は、「一度首を突っ込んだらどんな結果であろうと最後まで付き合う」というスタンスで優しさを実践しています。彼の、自分にも相手にも真摯な心構えは立派だと思いました。後輩の女性が変わったのも、彼の優しさがあったからこそです。本作品を読んで、優しさを大切にしたいと改めて思いました。 @ネタバレ終了
-
四十年の初恋タイトル通り、主人公朔と咲夏の「四十年の初恋」を描いた物語。僕は1時45分ほどで読了いたしました。かなり起伏のあるお話であり、中盤以降は先を読み進める手が止まらなくなりました。 @ネタバレ開始 本作品の見どころは、一途な2人の愛の行方だと思います。プレイ中は終始感情が揺さぶられ、彼らがどこに行きつくのかを見届けずにはいられなくなりました。 正直な感想を申し上げると、彼らの歩んだ道のりはあまり褒められたものでないと思います。特に、賀来と咲心に対して不誠実なように思われました。 しかし、その一方で。数々の障害を乗り越え、40年間も互いを想い続けたその姿には、感銘を受けました。これまた正直に申し上げると、僕は「子供の頃からずっと一途に想いあう関係」が好きなんですよね(笑) 過ちを通して本当に大切なものに気が付き、その末に結ばれた2人には「おめでとう」と言ってあげたいと思いました。今度こそ、大切すべきものを最後まで守り続けてほしいなあ……。 ストーリーの構成も良かったです。中盤は胃が痛くなるようなドロドロとした展開にもなり、「これ、どんな終わり方をするんだろう?」と不安を感じていました。が、ラストは驚くほど後味の良い展開となり、かなり嬉しかったです。なお、後書きを読んで少しゾッとしました。もし「後追い自殺エンド」であれば、軽いトラウマになっていたと思います(笑) これは完全に余談ですが、「ここ、バ〇プの歌詞をリスペクトされたのかな?」と思われる文章が出てきて、ちょっと笑ってしまいました。もし作者さんもバ〇プがお好きなら嬉しいです(笑) @ネタバレ終了 2人の真っすぐな愛を描いた素敵な作品でした。ありがとうございました。
-
タマキハル~序章 艮為山編~高校2年生の主人公、陽介の学園生活を中心に描いた物語。僕は2時間ほどで読了できました。個性的なキャラクター達とのやり取りがとても楽しい作品でした。 @ネタバレ開始 本作品は登場人物が大変魅力的で、その点が強く印象に残りました。メインキャラクターはもちろん、立ち絵がないキャラクターもみな生き生きとしていたと感じます。その中でも、僕は香月さんが1番好きです。彼女、いちいち可愛すぎませんかね? 「香月さんと一緒に図書委員をやりたい人生だった……」なんて思いながら読ませて頂きました。陽介くんも良い奴で、この2人のやり取りは読んでいてすごく癒されました。 なお、立ち絵イラストも素晴らしい出来栄えで、キャラクターの魅力を更に高めていたと思います。くるくると表情が変わる演出も大変良かったです。 そんな彼らの学園生活の描写は、読んでいて実に楽しかったです。これも、キャラクターがしっかりたっていたからこそだと思いました。個人的には、斬新な新商品でテンションが上がっちゃう香月さんが好きです(笑) 笑えるシーンは他にも多々あり、読み進めるほどに彼らへの愛着がわいてきました。 それだけに……。ラストの展開には衝撃を受けました。いや、本当に落差がすごすぎます(笑) とりあえず今言えるのは、続きが出たら絶対に読ませて頂くということですね。 @ネタバレ終了 またひとつ、続きがとても気になる作品ができました。続編を楽しみにお待ちしております。
-
幸せな毎日を夢見る夢に見たことが現実に起こると気が付いた男子高校生、出臼。そんな彼が、「夢をうまく使うことはできないか」と考えることから始まる物語。僕は1時間30分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 本作品で特に素晴らしいと感じたのは、終盤のどんでん返しでした。正直この展開はまったく予想できておりませんでしたし、ここで作品全体の印象も大きく変わりました。 序盤、中盤を読んでいる時は、良くも悪くも、登場人物の若さが目立つ物語だなと感じていました。学園ものが好きな僕としては学生生活の描写が楽しく読めましたし、茂家さんとの恋愛描写は微笑ましかったです。一方で、友人が死んだというのにどこか切迫感がなかったり、その後も自分のことで一杯一杯になってしまう出臼の姿も印象的で、「これも若さゆえか……」なんて思っていました。 しかし、どこか現実感がないように思えたその言動も、終盤の展開を読んだ後では納得できました。出臼は心のどこかで「これは全て夢である」と理解していたからこそ、切迫感がなかったり、驚くような凶行に及ぶこともできたのかなと思いました。 どんでん返し後の展開も良かったです。正直、中盤までは「これ、どんな風に終わるんだ……?」と少し心配していたのですが(笑) 出臼の成長が感じられ、これからの明るい未来も予感させてくれる良いラストだったと思います。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!
-
そして僕らは世界を壊す従兄弟を救うために、主人公である保志が奮闘する物語。僕は3時間ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 本作品は、シナリオが特に素晴らしかったと感じます。 まず、序盤の「繰り返し」ですが、これはゲームであることを生かした演出だったと思います。タイトル画面に戻った時は絶望感に襲われましたし、繰り返すほどにその絶望が強まっていくのも印象的でした。この演出のおかげで、繰り返し続けた「彼」の気持ちが少しだけ分かったような気もします。 また、物語の展開としては後半が特に面白かったです。何が起こっていたのかが明らかになると同時に、「なんとか打開できるのか」が気になってしまい、一気に読んでしまいました。なお、ラストの展開を読んだ後は、しばし呆然としてしまいました……。 本作品では、愛するものを追い求める人間の美しくも悲しい性が描かれていたと思います。特に、保志の強い思いには終始圧倒されていました。本来、こうした感情は時間と共に少しずつ風化していくところもあると思います。が、今回は彼の執着とタイムトラベルとが結びついてしまったことがさらなる悲劇をうんだように思います。失敗を繰り返すほどに、「自分のやってきたことが間違いだったと認めたくない」と思うようになり、ますます執着してしまう……。後半の保志は、もう引き返せないところまできてしまっていたのだと思います。邑井さんの存在があっただけに、あのような終わり方を迎えるしかなかったことがいっそう切なく思えました。 これは全く個人的な感想ですが、本作品をプレイして「運命とはどの時点で決まってしまうものなのだろうか」なんてことを考えさせられました。僕は決定論者ではないので、最初からすべての運命が決まっているとは思いません。ですが一方で、「今となってはもうどうにも変えようのないこと、避けられないこと」も確かにあると思います。例えば、後半の保志はもう引き返せなくなっていましたし、隆之介は4月4日の時点で自殺することを固く決意していたと思います。 「はじめはあらゆる可能性があって、天秤は平衡を保っている。けれど、無数の選択を通じて少しずつ天秤はどちらかに傾いていき、ある時点を超えてしまうと天秤はもう何があってもひっくり返せなくなってしまう」 そんな風に僕は考えていたりします。ですから、「もっと前からやり直す」という方法は「ひょっとしたらうまくいくんじゃないか?」と思ったのです(笑) しかし、そう考えていただけにラストの展開は衝撃的でした。また、あのように物語を締めくくったことにこそ、本作品の個性が色濃く出ているようにも感じました。昔から「ループもの」のノベルゲームが好きな僕ですが、本作品を通じて「過去をやり直す」危うさも強く感じました。 登場人物の中では、特に邑井さんが好きです。これは想像ですが、保志の中にも自分への好意があることを、彼女はもっと前から気がついていたと思います。お互いに想いあっていると理解しつつ、それでも保志とは結ばれない。彼女がどんな思いで保志のそばにいたかを想像すると、それだけでちょっとくるものがあります……。 個人的に、自分と心的な距離が1番あると感じたのが隆之介です。プレイ中は彼がどうしてこんなにも死にとらわれているのかがうまく理解できず、色々と考えました。彼の知的能力が著しく低かったとは思えません。また、虐待という不幸はあったにしろ、今も著しく不幸な環境にあるとも思えない。その上、他でもない保志が「生きていてほしい」とも言っている。にも関わらず、どうして彼は死を選ばずにはいられなかったのでしょうか。 自分なりにしばらく考えてみたのですが、やはり保志の影響が大きかったのかなと思いました。前半の物語を読んでいると、とにかく「大人の存在感がない」と感じます。彼らにとってキーパーソンとなりえるはずの両親も、ほとんど登場しません。実際、大人が頼りなかった部分もあるのでしょう。しかし一方で、2人がすすんで大人を遠ざけたところもある気がします。それら2つが相互に作用しあって、いつからか2人と周囲の間には深い断裂が出来たのではないかと思います。そうして長い時間をかけて作った2人だけの世界に、2人は生きる意味を見出していた。しかし、いつからか隆之介は「こんなあり方をずっと続けることはできない」と悟り、「ならば早く保志をこの世界から解放してあげたい。そうするのが自分にできる罪滅ぼしだ」と考えるに至ったのかな、なんて考えました。 もうひとつ、これはもっと突っ込んだ意見ですが……。隆之介の中には、自分をこのような状況に追いやった者達への怒りがあったのかもしれないと思いました。それは世界や大人だけに向けられたものではなく、保志に対してもです。もちろん、保志のことを愛していたと思うのですが、それだけでは隆之介の行動をうまく説明できないような気がします。保志に対しては、本当に沢山の感情を持っていたのではないかな……。 まったくの見当違いでしたら申し訳ありません。 本作品は、立ち絵やイラストも美しく、その点も大きな魅力だと思いました。特に、イベントスチルが素晴らしく、物語への没入度を高めてくれたと感じます。隆之介が炎の中で笑っているシーン、溺死してしまったシーンのイラストは怖いほどに美しかったです。 @ネタバレ終了 作品の感想としては少しズレているであろう自論も書いてしまい、すみません。彼らの生き様を見届けて思うことは他にも多々あります。大きく感情を揺さぶられ、読み終えてしばらくはこの作品のことばかり考えていました。様々な角度からの考察ができる素晴らしい作品だったと思います。本当にありがとうございました。