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田村知樹のレビューコレクション

  • ひとりぼっちの魔女
    ひとりぼっちの魔女
    イクシナという魔女の悲哀と反省を、ダンジョン探索&ファンタジーという設定をうまく使って描いている。 フォーカスが当たるのはあくまでイクシナのお話。それにもかかわらず、同行する魔導士・騎士の二人も含めて、結構キャラが立っています。基本的にクズっぽい主人公や、ギャグ要素が混じった道中のおかげで、背景の暗さのわりにすいすいと読み進めることができました。 最終的には、一つの冒険譚の始まりというところに収まります。、主人公の不死身の理由は明らかにならないのはちょっと残念。「実は全員死んでて自分が亡霊だとわかっていない」展開だと思っていたんですが、そういう路線ではなかったですね。続編を楽しみにします。

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  • 神は骰子を振る
    神は骰子を振る
    すっごい久しぶりに、純文学論争とかいう言葉を思い出しました。 いやなかなかないですねこの作風。80~90年代、メタフィクションというジャンルが死ぬほど流行した時代。作中人物が自分が小説内にいることに気付き……と始まり、自己言及を延々と重ねていく本を読んだことがあるんですけど、それを彷彿とさせるような作品だったと思います。 その場その場のイマジネーション(別名思いつき)で話が進み、読む側の理解を置き去りにしながらも、流れるような文章力で読ませる。内省的で自己完結的な作風。もう純文学論争とか嫌なんですけど、やっぱりどこかしら「芸術っぽい」と感じてしまいますね。 あとjavascript。やっぱ神もjavascriptお好きなんですかね。わたしも好きですよ、C#の次にな。

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  • 「ようこそ、猫柳堂書店へ。」
    「ようこそ、猫柳堂書店へ。」
    優しく暖かな理想の書店を描いた作品。 主人公や店員のみならず、お客さん(のほとんど)まで含めて、素晴らしく人柄の良い人物が揃ってます。正直、猫柳さんよりもそちらのほうがよっぽどファンタジー。でも、そういう「好きなものを集めました」という雰囲気こそが、本作品の一番の魅力なのだと感じました。 人の善意的な面にフォーカスが向く本編ですが、サイドストーリーでは各キャラの意外な側面がわかり、「吉川さん……!」「加藤くん、意外とこういうこと言うんだ」などと楽しみながら読めました。特に気になっていた大野くん絡みの話があったのは嬉しかったです。

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  • さよなら初恋
    さよなら初恋
    初恋の名残りを終わらせる一瞬の話。 内面がわかってるにもかかわらず、主人公が口火を切った瞬間、何でか驚きと切ない気持ちを感じました。 優れているポイントはいくつもあって、特に見事なのは文章力。 ただ読みやすく内面を描く、というだけでなく、人柄のわかる言い回しで流れるように話が進みます。たぶんわりと素直じゃない主人公の感じと、色々ため込んでいたのだろうたっちゃんへの思いが、書かれずともイメージできました。 また情景の切り取り方も素晴らしいです。 カットインで描かれる表情はどれもそのシーンの中核にあたるところで、非常に見やすく、スタイリッシュです。話の大枠自体、重要な一瞬を絶妙に切り取ったものなので、この演出は最高に合っていると思います。 短いですが、非常に完成度が高く、大きく感情を揺り動かされる作品でした。

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  • 探偵とジョーカーのパソドブレ【 GAME 】
    探偵とジョーカーのパソドブレ【 GAME 】
    「ふたりの恋」終わってから気になってプレイ。当たり前ですが、こちらを先にやっておけば良かったでござるね。 おそらくは善良で、多少底知れないところのある主人公が、それぞれ個性的な他の探偵と協力して事件を解決する、「異形の者」退治のお話。ストーリーの展開はどのルートも概ね同じですが、キャラごとに個性が出てるのは素敵。ただこの内容なら分岐しなくても良い気もする。 一番魅力的に感じたのは、事件背景と、三者三様のキャラクター。 依頼者には埋めがたい心の隙間・情念が残る、決して晴れ晴れしくはない結末。非常にこの世界観に合っていて、一筋縄ではいかないなと感じます。 キャラクターはみな魅力の方向が違っており、善知鳥さんの胡散臭さとくたびれたおっさん感、火之くんの優しさ、夜子ちゃんの意外と行動的なところなど、みな一面的ではない魅力を持っています。 個人的なイチオシは火之くんルート。異形の者の感情面にも触れられており、彼の優しさの大きさがわかるのと同時、「ふたりの恋」のほうを思い出してちょっとしんみりしました。

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  • ふたりの恋 - 探偵とジョーカーのパソドブレ -
    ふたりの恋 - 探偵とジョーカーのパソドブレ -
    よくできたワールド設定で、それを前提とした構成・展開が非常に巧みでした。 ジャンル的には青春+怪奇のジュブナイル系。古くは「学校の怪談」最近なら「物語シリーズ」など色々な作品で題材にされており、ノスタルジックな気分に浸れるので、個人的にはジャンルそのものが好きな感じです。 中でもこの作品、「異形の者」の設定が秀逸です。七不思議みたいな「オカルト」を引き起こし、「人に擬態する」という二つの要素を持っており、これが謎解き・対話の面白さを作り出しています。 本作品のシナリオもそれを活かしたもの。早い段階で予想はつきますし、そもそもそれほど伏せている感じでもないのですが、キャラの心情まで含め、滞りなくエンディングに行き着いてくれるので、綺麗に終わったなと感じられました。 異形の者の「擬態」がどういう代物(同じ人間になる? 別人がそう振る舞う? 記憶は継続? 感情面は?)が不明だったので、種明かしの際、ちょっとですが理解に躓いたところはありました。わりと人間的なんですね。夜子ちゃんに執着を示すきっかけとなったエピソードなども読んでみたいなと思いました。

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  • 季節は、未来に恋をしている。僕は、君に恋をしている。
    季節は、未来に恋をしている。僕は、君に恋をしている。
    淡い表現が持ち味の、少女漫画の第1話という風な作品。 5分ほどで読み終わり、「妙に短いな?」とあとがきを見て、1000文字縛りの作品だったことを知りました。納得。いずれも1シーンのみの描写で、そう思うと切り取り方に整合性がありますね。 複数人の片思いというと、真っ先に「ハチミツとクローバー」が頭に浮かぶのですが、本作品の印象もまさにその一話に近いものがありました。お話が始まって間もないシーンを切り取っており、先々のことをちょっと予感させて終わる。オチという感じの終わり方ではないです。

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  • 彼女は時のねじを逆向きに回した
    彼女は時のねじを逆向きに回した
    ありそうでなかったワンアイディアもの。 「さよなら、うつつ。」に手を染めた方は逆に警戒する可能性あると思いますが、大丈夫、この作品のキャラはちゃんと会話できます。 終わり方にはわりとびっくりしました。なるほど、考えてみれば一番あり得る展開。終わった後、7歳のときのプールの話を思い返し、何とも切ない気分になりました。 個人的には、エピローグで25歳になった後の話を読んでみたかったです。 ちゃんと頑張るって簡単なことではないと思うので、上手くいったのかなと。

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  • 誰そ彼と文
    誰そ彼と文
    すんごいノスタルジックな気分に浸れた。これがエモさか…… 手紙の文章を取り戻すたびに、ねねちゃんの過去の風景が差し込まれるんですが、これがまあとんでもなく美しい。線の朧気な絵柄もあって、ちょっとしんみりさせられる。 同行者の風間くんもまたそちらと遜色ないくらいにキャラが立っていて、シークレットエピソードを読んだ後では、最後の表情がすっごい印象に残っている。 ストーリー自体はわりと早い段階で予想がつく方もいると思いますが、この映像美というか演出美のおかげで、わかっていても心揺さぶられるものがありました。 あと謎解きの難易度はかなり高め。話だけ興味ある人は、公式サイトを読んだほうが良いかと。風間くんの助言そのままではわりとたどり着けない回答が多かったです。

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  • 俺の生死を決めるゲームがパリピ感パない件
    俺の生死を決めるゲームがパリピ感パない件
    勢いすげえ。 カイジの流れでポッキーゲームさせられるという意味不明な導入から、半ばクイズ形式で「クリア」を目指すという構造。ここの選択肢が上手く人を急かすようにできていて、初見は慌てて答えてしまいました。 EDの一枚絵とバッジは最高に笑える。特に掘り下げがあるわけじゃないのに、みんなキャラ立っててわりと好きです

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