くらげのレビューコレクション
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夜半に道連れ不倫男の妻と不倫相手、奇妙な女二人組による一夜限りのかなしくやさしいフィルムノワール。 @ネタバレ開始 被害者が、(少なくとも二人にとっては)自己評価低い女性を喰い物にする暴力+人格否定の最低最悪最凶不倫DVクズ男、なので本当に自業自得としか思えなかったのですが、佐枝子さんの言う通り「自分の主観で相手を否定し、暴力を肯定することは許されない」のは事実で、でも夫を止めなければあさひさんは殺されていたかもしれない。生半可な手段では佐枝子さんも危なかったかもしれないと思うと、本当にやるせない気分になりました。 何をどう選んでも破滅しかない状況で、自分の責任を自覚し、こんな境遇を放置した社会を責めるのでなく、他者を思いやれる二人には十分酌量の余地があるのではないか。 二人の滲んだ瞼から、彼女たちの怒り、罪悪感、無力感が、愛おしさが伝わってきて、見ている方も泣きそうになってしまいました。 どのエンディングも素晴らしかったですが、 ただ一人の為に殉じる覚悟と喜びに満ちたED1の物悲しさ 前向きな自暴自棄の晴れやかさが沁みるED2の背徳感 互いの為に苦しみに満ちた生に向き合おうとするED3の溢れんばかりの愛 いずれも印象的過ぎて、どれが一番かなど決められないです。全部好きです。 @ネタバレ終了 テープレコーダーを模したお洒落でプレイし易いUI、静かな夜のドライブに似つかわしくも見せ場で盛り上げるBGM、インモラルな舞台の中で細やかな感情を映えさせるキャラクターデザイン。 そして誰かに愛されようと足掻く度に傷付く現代人の、取り返しのつかない罪と破滅の中、見出した罰当たりな希望を丁寧に描くストーリー。 いずれもが調和し、心に刻み込まれるノベルゲームでした。 スーパー担々麺ワールド様、素敵な作品をありがとうございました!
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ファミレス・ミステリー和気藹々とした会話劇に潜む過去の罪業を暴く、新感覚お食事会ミステリー。 物語の本題に入るには「正しい」選択肢を選びTRUE ENDのルートに入る必要がありますが、その過程の会話シーンだけで十分面白く、楽しみながらプレイできました。 社会人の体験談と愚痴。オタク特有の面倒臭い思考。そして死生観・人生観を試すような「話題」の内容。 コミカル・シリアスの両面で読み易く、自然と登場人物たちに共感してしまいます。 @ネタバレ開始 それだけに、物語の真相、実験の目的は衝撃的でした。 「善悪の両面をあわせ持った、普通の人たち」でも容易く罪を犯し、それを隠したまま笑いながら人生を享受できる。 殊に、志賀の「罪悪感を飼い慣らして」いる様子は、読み返すと背筋が凍りました。 そして復讐の念を隠し嘘をつきつつ、更には(ルートによれば最悪な形で)復讐を遂げ志賀たちを破滅に追い遣りながら、浅見とバカ話で笑える坂田も仄かに恐ろしい。 坂田と志賀の表情が似ているのは、恐らく狙ってのことなのでしょう。 主人公の浅見もまた、重い業を背負ったキャラクターでした。 初見では坂田に振り回される標準的な巻き込まれキャラかと思いましたが、左手の事が明かされ、段々とこの物語の主人公として唯一無二の存在になっていきます。 過去に戻り事故をなかったことにしたいとも思わない。 「人の命は平等」としながら、(手紙の内容を鵜呑みにするなら)加害者の家族まで贖罪に巻き込まれてもそれを止めない。 あえてプレイヤーに選択させた心理が、浅見の苛烈さの証左として返って来る。 凄まじく巧みな構成に打ち震えました。 @ネタバレ終了 罪とは何か、罰はどうあるべきか、プレイヤーに鋭く投げかける。 投げっぱなしにするのではなく、この物語ならではの解を明示する。 プレイし易い導入で惹き込み、シリアスな命題を深く心に刻み込む、とても印象に残るゲームです。 古賀様、素晴らしいゲームをありがとうございました。
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怪奇!開けてはいけない扉卍おバカな面はあれど器用で行動派な有閑探偵&エリート校に通う身ながらフランクで口達者な女の子の突撃お宅のホラーハウス実況アドベンチャー。 丁寧に怖い探索ホラーゲームとして作りこまれていながら、主人公2人の精神強度があまりに屈強で、ことあるごとにボケツッコミを始めるため、ガチビビりでも終始笑いながらプレイできました。 @ネタバレ開始 特にエンディングコンプのため無策で霊に突撃する無謀をやらかすような時は基本的にギャグテイストになるので、ホラーゲープレイ時にありがちな「こんなに怖いなら最適行動でベストエンド直行以外したくない」というジレンマをうまく回避して、プレイの機運を盛り上げてくれるのが嬉しい。 それでもホラー描写はしっかり怖く、トラウマを突く攻撃が気持ち悪いからこそ、めぐちと千羽ちゃんがコンビを組んで助け合う状況のありがたさが身に沁みる。 @ネタバレ終了 調査時の2人の掛け合いがとにかく楽しく、隅々まで調べる楽しさがある一方で、一度調べたところはチェック済みになるなど無駄行動を防ぐ配慮も行き届いていて、とにかく素晴らしい探索ゲームでした。