やつかなたのレビューコレクション
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きみはよばんめ柔らかな配色のタイトル画面に惹かれ、プレイさせていただきました! @ネタバレ開始 多重人格がモチーフとお聞きして、ワクワクしながら読み進めましたが展開が想像より物騒で驚いたのを覚えています。しかしその衝撃も束の間、どのキャラクター達も優しさと愛情を持っていて、穏やかな気持ちでエンディングを迎えられました。 どのキャラクターたちも非常に魅力的だったため、誰が一番好きかとは言えませんが、むしろどの子たちもそれぞれ違った個性を持ち、だからこそかけがえのない存在だったんだろうなと思います。本当に、みんないい子で...... あとみんなが樹木モチーフなのもすごくいいな~ 序盤では人格障害を枝葉で表現している箇所がありましたが、物語を読み進めるうちにそういうことか!と伏線回収。苗字も併せて名前を考えると、やっぱり5人で兄妹姉妹だったんだろうな~とニコニコしています。仲良し家族大好き! 震災という人間ではどうしようもない出来事に出会い、そのなかでも自分たちができることを精一杯やってレイちゃんに命を繋げたというシーン、そして彼らが遺されたレイちゃんの悲嘆や苦痛を理解しても尚、絶対に生かそうとする決意は涙なしには読めませんでした。だからこそトゥルー以外のエンドではみんな絶望したんだろうなと納得しております。 しかもレイちゃんが家族に助けられたこと、自分の苦しみを知っていて尚生きてほしいという願いと覚悟を知って、生きるという選択を取ったのも凄く綺麗な終わり方だなと思います。 最後になりますが、イラストが本当に綺麗!背景も担当されているとお聞きしましたが、キャラクターごとにテーマや色合いが異なっているにも拘わらず、ゲーム全体の統一感があるのに感動しました。すご手腕。 エンディング後のイラストも大好きです。はじめはこの4人以外に誰かいるってことか~と何となく予想していましたが、まさかこの絵がレイちゃんを待っている家族の絵だったとは......!物語の展開によって絵の意味が変わってくるの、楽しすぎる。素敵な仕掛け、本当にありがとうございます! @ネタバレ終了 以上、取り留めのない感想ではございますが、本当に楽しませていただきました。素敵な作品をありがとうございました! -
ギプス以前プレイさせていただきましたが、フェスをきっかけに再度プレイさせていただきました! @ネタバレ開始 まずUIや背景の色合いが綺麗! 夏の日差しに蒸発したような色彩を彷彿とさせるものばかりでゲームを起動してすぐに夏の雰囲気を楽しめるのがいいな~ 眩しくて、その眩しさに色が飛んでしまって、輝きゆえに淡くなる色合いがどこか懐かしさを感じさせるような...... イラストも本当に好きです!特に橋本ちゃんの驚いた顔が年相応でめちゃくちゃ可愛い...... 立ち絵だけではなく、おまけまであって豪華すぎる。短編だというのに長編を読んだ時のような満足感! グラフィックの夏らしさにぐっと引き込まれ、物語を読み進めましたが、気付いたときには涙が流れていました。 中村君のフランクな口調が物語が明らかになるごとに、どんどん「多くを語れない不器用さ」の表れだと分かっていくのが好きです。自分の知らない他人の痛みを自分の知っていることに無理矢理結び付けて、勝手に理解しない誠実さゆえなんだろうな。 おそらく、彼の経験上、他人の苦しみや葛藤はその人だけのものというのが何となくわかっていて、だからこそ分かったような口をきいてほしくなくて不格好な言葉を紡いでしまう、その不器用さが彼の優しさだと思いました。 かといってその人にしか分からないからと突き放すのではなく、分からないながらも会話を続ける真摯さも彼の長所ですね。 そして橋本ちゃんが彼の不器用さを決して否定せず、真摯に話を聞いてくれるのも凄く好きです。ギプスという不格好だけど傷を癒してくれるものとして受け取ってたんだろうな...... 優しさが優しさとして受け取れる世界、大好き。 これは個人的な意見ではありますが、どんな理由だろうと続けてきたことをやめるというのはかなり勇気のいることだと思います。 「今までそれを続けてきた自分」と決別しなくちゃいけないし、新しい自分になることで昔の自分と関わっていた人を裏切るような気がするし。 けれど続けてきたのは自分であって、過去が自分なわけじゃなくて。その道が輝かしいのは誰かに照らされていたからじゃなくて、自分が情熱だったり笑顔だったりを輝かせていたからなんだろう。 だから別の道を歩んだって自分は自分のままだし、どんな道を選んだって輝かしいものになるんだろうな~とこの作品を拝見して勇気づけられました。 @ネタバレ終了 何度読んでも勇気づけられる素敵な作品です! 本当にありがとうございました! -
秘密は冷えたカーテンの中以前プレイさせていただきましたが、フェスをきっかけに再度読ませていただきました! @ネタバレ開始 まず、イラストが綺麗! なめらかな筆跡が柔らかな色使いで彩られており、綺麗で無機質な何か、というより滑らかなひとの肌という印象があります。 そんな雰囲気に惹かれ、読み進めると彼の中身が見えてきて、沖田くんが「綺麗な偶像」ではなく、「普通の」血の通ったひとであるのが明らかになるのも良かったです。物語とイラストの雰囲気が統一されていることでゲーム全体のテーマが浮き彫りになるというか...... 学校という枠のなかでいるだけでも窮屈なのに、青春や高校生、あるいは見た目だったりといういろんなカテゴリに縛られることで自分の在り方が歪められるのは高校生ならではの悩みだな~とぼんやり自分の過去を思い出しながら拝読させていただきました。 悩みに囚われつつも、なんとかやり過ごしている生き方も大人びているようで、若者らしく今を楽しんだりとその塩梅が思春期らしさが出ていて良かったです。けれどそれらの様子は「高校生」という枠で語れるものでもなく、彼自身が彼の過去や性格に基づいて言っている発言だと感じ取れるのもまた良い。高校生だけど高校生じゃなくて、その枠にとらわれないのが彼の在り方なんだろうな...... また物語の進行とともにタイトルの意味が明らかになり、その意味がまたストーリーの展開によって変容していくのも楽しかったです! タイトル回収が二度ある、お得すぎる。 @ネタバレ終了 物語とイラストどちらも楽しませていただきました! 素敵な作品をありがとうございました~! -
月桂樹の涙「変身物語」を元ネタに創作をされたとお聞きし興味を惹かれたため、以前からプレイさせていただいておりましたが、フェスをきっかけに再度読み直させていただきました。 @ネタバレ開始 まず、何故アポロンが太古の神に喧嘩を売るほどイケイケになってしまったかを語る文章が丁寧かつ詩情豊かだったのが印象的でした。 個人的にエロスとアポロンの話が好きなので見知った話ではありましたが、avidaさまの味付けと解釈の美しさにより、アポロンの傲慢な態度も気品あるものになっており、ゲームの雰囲気も相まって一気に物語に引き込まれました。流石ボイポス、傲慢なほどの輝きを持ち、ゆえに大いなるしっぺ返しを食らう......。エロスの台詞にも説得力が倍増しで加わっていたのも面白かったです。 またダフネとアポロンがどうやってもすれ違うシーンですが、やはりダフネ視点から物語を読んでいるせいか、かなり「恐怖」を強く感じられたのも個人的にすごく好きです。 ゲームの内容とは少しずれるかもしれませんが、やはりギリシャ演劇やそれをモチーフにした西洋古典文学において女性の感情はビビットに描かれる印象があります。今作ではそのビビットさも持ちつつ、ダフネ自身の願いも丁寧に描かれていたため、より感情移入がしやすいように思いました。 特にあの男性優位なギリシャ社会において女性、特に少女にとって結婚は今後の人生を大いに決定づける要素であり、そのなかで純潔を選んだ彼女の意思が描写されていたのも良かったです。おかげで、ただエロスの矢を受けたから、という理由では諦めきれない二人のすれ違いを味わえました。だからこそアポロンの痛みが色鮮やかに見えて......。 短い作品ではありますが、どのシーンも欠かせない要素と色彩を持っており、それゆえ作品全体、ひいては作品のテーマたるアポロンの痛みが鮮やかでした! 素敵な作品をありがとうございました! @ネタバレ終了 -
居残りSunsetすたでぃ~穏やかで柔らかなグラフィックに惹かれてプレイさせていただきました! 以前、公開されてすぐにプレイさせていただきましたがフェスをきっかけに読み直し、変わらぬ面白さと可愛さに悶えております...... @ネタバレ開始 南香ちゃんのふわふわでスルスルと喋るさまや、旻くんの素っ気ないようで頼りがいのある話し方を見ると、彼らだけの会話や雰囲気が感じられました。 互いの会話から何となく彼らそれぞれにも別々の世界があるのは読み取れますし、でもその差異というか、自分が知らない世界の言葉にいちいち「それはなに?」とか「どういう意味?」と聞かずに、どんどん会話が進んでいくのも好きです。知らなくても、わからなくても大丈夫という安心がある感じ......。それだけ長い間2人でいたんだろうな、幼馴染の関係性っていいな~ 一問一答形式パートの不正解解答の台詞も面白くて好きです。ばたばた康成、犬を追いかけるので必死そう......。 留年するかもという若干将来に対する不安が拭えない導入ではありましたが、南香ちゃんの穏やかさや、旻くんの「南香がバカでもどこにも行かない」発言のおかげでゆるゆる楽しめました。 私自身も高校理系科目の内容が曖昧で若干、いや結構不安がありましたが、なんと不正解でも楽しいことがある! 優しい世界だ! 最後になりますが、本当にイラストが好きです! キャラクターみんなの表情付けも好きですし、洋服の影の塗り方、特に旻くんが着てたダウンジャケットの影が......本物すぎる......脱帽しっぱなしです。 スチルの背景もすごく綺麗で、柔らかなタッチを保ちつつ、無機物の滑らかさを表現されていることで、冷たさより純粋さが感じられて素敵でした。 @ネタバレ終了 BGMやUIも相まって楽しく、可愛らしい雰囲気でプレイさせていただきました! 素敵な作品をありがとうございました! -
弾圧イグニス以前プレイさせていただいたのですが、ティラノゲームフェス開催を機に再度遊ばせていただきました! @ネタバレ開始 まず最初にやっぱり絵が可愛い~~~~! 弾圧というおどろおどろしい言葉とは対照的なキャッチーでころっとしたフォルムかつカラフルだけどまとまりのある絵、あまりに可愛い 作者様の作品にはほかにもプレイさせていただいているのですが、どれもモチーフをきちんと取り入れつつ、けれども萌えは抜け目なく表現する、その手腕が大変強かで好きです!モチーフ元にも自分のヘキにも妥協しない作者様の姿勢が感じ取れて尊敬いたします! 今回は最推しであるイシス神に注目してプレイさせていただきました! 神話もさながら本当に凛々しく、強い女性(もとい女神)で大好き。作者様のデザインからもそれがひしひしと伝わってきます。 けれども愛情深い母であり、妻であり......。それを表すホルスとの像、これも壊しちゃうんですよね......。この自信満々なお顔がどんどん曇っていき、夫へ力なく謝罪を述べる姿は尊厳破壊を通り越して胸が痛むレベルでした。それに対してイシス神勝利エンドはさっすが~~~!と言いたくなる。 私事ですが、以前古代ローマの宗教に関する授業を取りまして、当時の作品ではイシスは「万の名を持つイシス」とされているそうです。本作で登場するキュベレをはじめ、古代ギリシャや中東地域を含むあらゆる女神は実はイシスだったという言説まであるらしい。どうやら先生曰く、当時多神教社会で氾濫していた神々を一つにまとめるような動きが見られたと聞き、おまけ版のあの紹介はそういうことか!と納得しておりました。 けれども歴史が知り、そして今作でも取り上げられた通り、結局イシス神は某一神教に飲み込まれ、現在では信仰されていないことを見るに、やはり弾圧の力、恐るべしという気持ちになりました。 実はこの授業を履修したのはこの作品によって興味を引かれたからであり、プレイヤーの興味関心を促進してくださるゲーム有難すぎる......と今更ながら感謝しております! @ネタバレ終了 本当に素敵なゲームをありがとうございました! 次回作も応援しております! -
雪消えティラノゲームフェスで話題の作品と聞いてプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 サムネの可愛い女の子に惹かれ、読み進めていくと途端に溢れる不穏感。 いや、何となくタイトル部分の背景とかメッセージ欄のおどろおどろしさからおそらく結構波乱が待ち受けているなとは思ったのですが、開始五分も経たずに生死を分ける選択肢を受けて「そうだね我々遭難してるんでしたね」という気持ちになりました。 読み進めるごとに見えてくる情報や心情、それらを丁寧につなぎ合わせるシナリオとプロット、豊穣な物語に根を張り、美しく咲く台詞の数々にプレイ中何度もうならされました! 特に「自分が地獄だと思っていた場所が、相手にとっては天国だったりするんだぜ?」、もうこの台詞が好きすぎる! 世の中というのは複雑で、一見この台詞もそれを表した、ただ事実を述べているだけの言葉に見える。しかしこの作品ではしのぶちゃんと三冬くんの立場や環境、それによって形作られた価値観の対比があり、お互いへの憧れや期待が入り混じる。つまり単なる事実でしかなかった台詞がこの作品を代弁するほどの物語を孕んでおり、あまりに美味しい! 私事ですが、実は単なるキャラクターの要素や情報が物語の鍵になるのが本当に好きでして......。こう、物語であってもこの人たちはちゃんと生きてるし、この世界は彼らと繋がっているんだ!という感動がありまして、何度も言って申し訳ありませんが本当に好きなんです......。 この作品ではしのぶちゃんの態度や口調、持ち物や台詞の細やかなところにまで伏線が張り巡らされていて、それが回収される快感と、物語とキャラクターとの繋がり・連関性を感じられて本当に大興奮でした! しかも先述した台詞が終盤では「あたしは、日本が地獄のように変わり果てても、お前と一緒なら天国みたいだよ」になるのも最高~~~~~!!!! この台詞のおかげでしのぶちゃんが今までの人生できっと思い知らされてきたであろう社会の残酷な事実が、そのままひっくり返って幸福な事実に変わるの良すぎる。あまりに作劇がお上手! しのぶちゃんにとって確かにこの数日は辛いものもあったけれど、それでもやっぱり幸せだったんだろうな。死へ向かう日々だったとしても、決して無駄ではなく、むしろ今までの人生を塗り替えるような日々だったんだろうと思います。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました! これからも創作、応援しております!
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八ツ神のかみかくし以前プレイさせていただきましたが、ティラノゲームフェスが開催されたことを期にもう一度プレイさせていただきました! @ネタバレ開始 まず何度見てもグラフィックとUIの美しさに目をしばたたかせております! 淡い色使いとそれを邪魔しないシンプルなデザイン、一見素朴に見えるものの色彩が豊かで高校生男女の曖昧で一言では表せない感情や関係性にマッチしていて、本当に素敵! 目次やTIP集があるのもプレイしやすくて本当に助かりました!プレイヤーのことを真摯に丁寧に考えて作ってらっしゃるんだな、尊敬......という気持ちで毎度拝見させていただいております! 前回は美布に注目して物語を追ったのですが、今回は沙里に視点を変えてプレイさせていただきました! まずビジュアルがむちゃくちゃ好きです。赤毛ハーフアップの真面目男子、あまりに格好良い......。 外見・内面共に生真面目な印象を与える彼ですが、笑った顔は柔らかだし、悲しそうな表情では年相応のあどけなさが垣間見えてギャップ萌えに悶絶しております。 彼がメインとなる話では自分の正義を掲げているものの、それが父に由来する正しさで、その曖昧さに直面して悩む姿が取り上げられていて「めちゃ好きな展開だ!」と大興奮でした。 学校内で行われた「校則を変えるかどうか」という討論においてほのかちゃんが「規則は時代によって変わるもの」という旨の発言をしておりましたが、それが「代替わりする」神様である沙里に向けられているのがある種、エールのようなものではないかなと勝手に思っております。 偉大なる神様で、父親の威光を間近で見ているからこそ、それを疑いたくないと思う沙里の気持ちは大いに共感できました。けれども「神」である父もいずれは代替わりによって変わっていく。自分が神様になる以上、誰かを根拠にするのではなく、自分の信念に基づいた正義を見つけなければいけない。思春期による価値観の変化だけではなく、「神」としての感情や価値観の変化という見方も出来て作劇がお上手!面白い!と拍手喝采の素敵な物語でした! @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました! 次回作も応援しております! -
未踏峰 Mystic Mountain以前から進捗を拝見しており、神話や伝説モチーフとお聞きしてプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 まず本当に元ネタの解釈&天使たちのキャラデザがお上手でプレイ中ずっと歓声と拍手の大嵐でした! バベルの塔や天使たちなどのキリスト教的逸話からイカロスのようなギリシャ神話、あるいは『幸福な王子』や『神曲』などのヨーロッパの名作までちりばめられているうえに糊さんの素敵な解釈に裏打ちされて独自の世界観へと昇華されているのが本当に圧巻でした! 特に「地球」では最も強い者を人類とする以上、ヒトが天使と呼ばれる生き物を克服し、彼らが「天使」と呼ばれるようになったが故に獣となるという構図が聖書やヨーロッパの創作でよく語られる「天使の一部は神が人類を愛し、天使よりも上位の存在としたがゆえに神から離反し堕天した」という伝説を彷彿とさせ、その発想はなかったと舌を巻いております。 また天使の方々も本当に魅力的で、私も天使がむちゃくちゃ好きなのですが特にアバドン!!! 「ヨハネの黙示録」にも登場し、D.H.ロレンスの「黙示録論」では彼の名であるアポルオンはアポロン由来であると言われた深淵の王が登場してる!!!ありがとうございます!!!! マイナー天使ゆえに日々飢えていたところに、糊さんの素敵なキャラデザのアポルオンが拝見できて本当に嬉しいです。 その名に似合う太陽神のようなきらめきを持つ瞳と、鋭い陽光のような髪とかぎづめを見せつけながら、「星」が落ちる中での登場はまさに「ヨハネの黙示録」を幻視したかのようなシーンで感謝のあまり涙が出ました。むちゃくちゃ格好良い、絵もお上手で素敵......。本当にありがとうございます......。今日から糊さんのアポルオンの大ファンになります......。 これは純粋な疑問なのですが、糊さんがアポルオンのおててを鳥の足のような獰猛かつ美しいデザインにされたのかが気になります!是非教えていただけると嬉しいです! また一番お気に入りのエンドはソー&マモンエンド! まさかのバッド(ソーにとって)エンドで『幸福な王子』をオマージュされている?!と驚きでした。物語の王子に憧れ、そして己の欲深さに道を踏み外した彼が美しく、そして心優しい王子の銅像へと変えられる。 そして優しさゆえに己がみすぼらしくなることも顧みず、その行いにより天国へ向かった『幸福な王子』とは異なり、彼自身はマモンの作った偽の天国へ落ちるというのがあまりに皮肉でした。 しかもマモンは7つの大罪のうち強欲を司る悪魔とされているため、結局ソーが向かった先は地獄じゃないか!!と糊さんの元ネタ解釈と、それをご自身の創作にスマートに添える手腕、それにより起こる逆転があまりに見事で感服しております! 人間側で好きなのはアンドレイアくんです。まずお顔がむちゃくちゃ可愛い。 己の怖れに打ち勝つために未踏峰に昇ろうとするその強さも好きなのですが、それでも己の臆病さを克服できないところや、克服しようとしてお守りや聖書に縋ってしまうところが、結局神に縋ってしまう人間の弱さを表していて、サリエルの言葉に思わずうなずいてしまいました。 アンドレイアくんは今までいろんなところを旅して写真を撮っているという実績を持つので、ぜひ自分を信じてほしい!君はすごいぞ!と一ファンは応援しております。 @ネタバレ終了 元ネタの解釈だけではなく、それを丁寧に読み込みながらも己の作品として作り上げていく手腕があまりに鮮やかでした! 素敵なゲームをありがとうございました、これからも創作応援しております! -
人の気持ちが分からない!キャッチーな題名と「罪と罰」というタグを拝見しプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 前作の「ハーレムなんてあるわけないじゃないですか」で登場したシャルル殿下が冒頭から女性に怒られている?!もしや彼女はシャルルさんが気に入っていたというメイドさん?!と前作の記憶と共に一気に引き込まれ、あれよあれよと人間観察をしてはシャルル殿下の心情を分析し、これは恋だ!と言ってしまったがゆえに最初に辿り着いたのはバッドエンドでした。 このエンドでは殿下がベネディクトさんの「愛なんて瓶に詰めて眺めておけばいい」の台詞に後押しされていましたが、トゥルーエンドを見た今では「もしやこれはベネディクトさんの術中にはまったのでは?!」と思っています。 勿論、一番好きなエンドはHappy End! Twitterでも書かせていただいたのですが、殿下がマリアンヌに嘘を暴かれたことで恐怖を感じ、それを恋としてラベリングしていた。けれども彼が経緯はともあれマリアンヌさんを大事に思っていたことは事実であり、だからこそ彼女との恋を諦めるために嘘をやめて、本音を吐き出したことで、むしろ彼女との関係が始まるというのが本当に綺麗な展開で脱帽です! また、マリアンヌさんが彼の「偽善」、それこそ打算ありの嘘も入った善行を「それでも大事に思ってくれたのは事実だ」と認めてくれるところが本当に彼女の誠実さが良く表れててうるっときてしまいました。 個人的によくできた偽物は本物とは区別がつかないし、その偽物の定義は「作り手」や「作られた経緯」に依存すると思っているので、彼女がそこも込みで今までのシャルルさんとの日々を認めるシーンはすごく誠実で素敵だなと思います! またtrueエンドでシャルルさんが「時間をかけて見極めていくか」と呟いたのも、ゲームの中で行われた人間観察では早く切り上げてしまえば見えないこともあるというシステムとも重なる部分があり、ゲームシステムと物語が一致し、現実と虚構の溝が埋まる素敵な台詞だなと思っております! @ネタバレ終了 すごく楽しませていただいた1時間でした。素敵なゲームをありがとうございました!
