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冬瓜のレビューコレクション

  • 『あのゲーム』がやりた――い!!!!
    『あのゲーム』がやりた――い!!!!
    昔プレイして面白かったけれど記憶がおぼろげなゲームを頑張って探す短編コメディです。 主人公のくしみやはそのゲームを頑張って探すのですが、ゲームのジャンルすらあいまいな薄い記憶だけではとても目的に達することはできません。以前からのオタク友達であるせっきーに助けを求め、ゲームのありかを推理しながら探索していきます。 探索自体は一本道に近く脱出や謎解きのような要素はありませんが、探索の合間に挟まれるちょっとしたギャグがいいリズム感を生んでいて楽しい。探索にせっきーが加わってからはボケのテンポも増していき、探索ごとにどんな会話が続くのか楽しみになってきました。ギャグに対するツッコミだけでなく、探索中に出てきたゲームの話題に関する掛け合いも多く、二人の付き合いの長さや相性の良さが感じられてうらやましい気持ちにもなりました。趣味についてこんな風に気楽に話せる相手、大切にしたいですね。 探索中に登場するネタは有名な商業ゲームのもじりになっていることが多く、商業作には詳しくない私にも分かるものが多かったです。フリゲだけでなく商業作もやっているよという方ならきっと私より多くのネタを拾って楽しむことができるでしょう。 さて、くしみやの「あのゲームをやりたい!」という気持ちは、私もしばしば感じたりします。ダウンロード形式の作品を中心にプレイしだしたころからは記録を残しているのでたとえ10年前にプレイした作品でも大体調べはつくのですが、記録に残していないブラウザゲームとかだともう大変。かつて私が愛好していたFlashゲームはサポートが終了してしまっているし、Java AppletやShockwaveなども事実上プレイ不可能になってしまいました。下手したら最後にプレイしてから20年近く経ちゲーム内容に関する記憶があいまいになってきても、あの楽しかった時間の印象は残っているんですよね。そんな風に主人公の気持ちにとても共感できる作品でしたし、フリゲプレイヤーなら同じように感じられる方は多いでしょう。ハッピーエンドにたどり着けて良かった!

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  • ギプス
    ギプス
    シンプルなタイトルと絵画のようなイラストが気になってプレイしてみると、気の利いた心理描写が巧みで15分程度のボリュームとは思えない満足感のある作品でした。 主人公の中村は文芸部所属の高校2年生。かつてはサッカー部で活躍していたものの足の怪我をきっかけにスッパリと辞め、今では文芸部のゆるい雰囲気を気に入っています。夏休みに一緒に補習を受けることになった橋本は陸上部。彼女も足の怪我に悩まされ、陸上部は辞めると言います。 終始中村の一人称で語られる物語ですが、穏やかながらもどこか諦観のような冷めた感情を思わせる語り口はまるで自分たちの状況を俯瞰しているようで、本作特有の雰囲気を演出しているように感じました。 中村は素晴らしい人間というわけではないかも知れませんが、自身の行動を客観的に見て反省できる自制心を持ち合わせています。外から見た状況は似ている2人ですが、どれだけの熱量で部活に取り組んていたかなどその内心は分かりません。そこにきちんと思いを馳せ、自身が散々言われて辟易していた慰めを口に出さずに飲み込み、行動で気遣いを回すのはなかなか並の高校生にはできないでしょう。 それに対して橋本はどう応えるのでしょうか。恋愛ものにおける青春の1ページ、というのとは違う気がしますが、等身大の高校生のやり取りが微笑ましく、元気をもらえる感じがします。彼女がどちらの方向にスタートを切るのかに注目です。

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  • サンタとペンギンの夜
    サンタとペンギンの夜
    ノベコレのパズルゲームコンプリートを企む者です。珍しいタイプのパズルが楽しく一気にエンディングまでプレイしました。 本作におけるパズル要素は、「左に曲がれ」「直進せよ」などの指示を並べ替えて目的地への到達を目指すというもの。直進の指示は1マスだけでなく障害物に当たるまで進み続けるというものなので、方向を間違えるととんでもない位置まで行ってしまうどころか盤面外に放り出されてしまったりします。この順で指示するとどうなるのかを頭のなかでしっかりシミュレーションして行きましょう。 最初のうちは簡単ですが、次第に「右へ曲がれ」「障害物を発射せよ」など指示の種類が増えていくので、後半ステージはいろいろ考える必要があり難しいと思います。 特に厄介なのが20面以降で登場する繰り返しフラグです。フラグで挟んだ範囲の指示を2回繰り返すので指示の数も変動し、頭の中だけで考えるのは大変でしょう。本作は失敗してもペナルティなしの優しい設計のため、どんどんリトライして行方を追うことで指示を徐々にチューニングしていきましょう。 パズルにはこの試行錯誤の作業と切っても切れない関係にあるわけですが、本作においては試行ごとに軽快に動くイラストと効果音が小気味よく、失敗も楽しめるのが優れているように感じます。 パズル以外のストーリー要素では、一風変わったサンタクロース(?)のノエルと、なぜかトナカイ役をさせられているペンギンのコメディカルなやり取りが心地よくパズルへの導入となっています。オールクリアすれば最後にちょっとしたプレゼントも。綺麗でいいですね。 クリスマスはとうに過ぎてしまいましたが、軽快に遊べて少し頭をひねる感じが楽しいのでぜひプレイしてみてください。公式で攻略noteも公開されているので詰まっても安心です。

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  • アイ・フォーカス
    アイ・フォーカス
    綺麗なタイトル画面のイラストが目を引く作品です。曇り空を背景にこちらを振り向き切なげな目を向ける彼は美術部の水樹くん。彼の心を晴らしていくさまが気持ちいいです。 主人公のともはは写真部所属。卒業アルバムのためにクラスメイトの写真を撮って回るのですが、写真が苦手な水樹はぎこちない顔しか撮れず。本人の了承を得て気付かれない位置から彼の日常を撮ることにしたともは。最初のうちはファインダー越しだった2人の関係が徐々に接近していくのが微笑ましいですね。 部活ものというわけではない本作の中で、写真部の存在感がちょうどよかったように感じます。アルバムのためにも素敵な彼を撮ってあげたいという気持ちはそのまま彼を想う気持ちに。部活を口実に水樹に近付いていたともはが、そんなもの不要で本音をぶつけられるようになるまでの過程がじっくりと味わえます。 攻略対象である水樹くんですが、なかなか不器用なところはあるものの気持ちをきちんと伝えようとしてくれるところが素敵ですね。2人の関係はかなり順調に進んでいく本作ですが、最後に彼が隠していたコンプレックスを打ち明けた上でそれを2人で乗り越えていけるのがまた気持ち良い。タイトル画面で見せた少しだけ陰りのある表情の由来に納得できるとともに、笑顔になった彼を純粋に祝福したくなります。キャラデザも結構私の好きなタイプで、特に色使いが良いなと思いました。 本編1時間程度の尺ですがおまけ要素も多いのでたっぷり楽しめると思います。後日談①のバカップル感好きです。遠慮してみたらナレーション(?)に怒られて笑いました。 糖度高めの乙女ゲームをお求めの方、物憂げな表情の彼が気になった方、プレイして損はないと思いますよ。

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  • もし、このトマトが永遠なら……
    もし、このトマトが永遠なら……
    前半と後半で全く違う顔を見せてくれる展開が個性的で、初見ではさっぱり意味の分からなかったタイトルに次第に納得がいく不思議な作品でした。 主人公の理央は登校中に猫耳少女のミヤビと一緒にカラスに襲われていたところを、特殊能力"魔眼"を持つヒロイン恵理紗に助けられます。その後ミヤビのトマト好きもあってみんなで園芸部で活動していくこととなり、理央は一見堅物に見えた恵理紗の優しさに気付き惹かれるようになっていくのでした…… 本作をギャルゲーとして見ると、ちょっと特殊な設定はあるものの王道の展開で、ミヤビやその他部員のナイスフォローもあり2人の関係がどんどん進展していくのが楽しいラブコメ寄りの作品と言えるでしょう。 しかし話はそう簡単ではありません。普通のギャルゲーにしては順調すぎるほどのスピード展開に、珍妙な割にその後の展開に活きてこない設定。これらが有効活用されてくるのは物語後半に差し掛かった頃です。 様々な作品をプレイしてきた経験からも、これは理央の夢か妄想の中の話なのだろうと思っていたのですが、本作ではさらにひねりが加わっておりなるほどと思わされました。恵理紗の趣味、理央の性格、ミヤビの設定。これらが解決して物語が収束に向かうのは気持ちが良く、安心して彼らを応援することができるでしょう。終盤の、恵理紗が振り返った構図のイラストが印象的です。ぜひエンディングまで見届けてあげてください。きっと序盤の印象とは全く異なる本作の魅力に気付くと思います。 @ネタバレ開始 ごめんね私わりと本気で妹ちゃんが黒幕だと思ってたよ。莉瀬ちゃん兄思いのいい子だね。 @ネタバレ終了

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  • 忙しい方のためのゾンビポリス
    忙しい方のためのゾンビポリス
    あの、これは何なんでしょう? 推理ゲーム?ホラー?ギャグ?ギャルゲー? 私が辿り着いた結論は、アイドルのライブです。 主人公の田村刑事は爆弾事件の解決に当たる(←分かる) 相棒は人間の女性にしか見えないゾンビのゾンビ刑事(←何すかそれ?) ゾンビ刑事の特殊能力で人体模型やカラスに聞き込み(←そういう感じかぁ) グレてるのか中二病なのか分からないスワンボート(←笑った) AIの気分次第で発火する爆弾(←怖すぎ) ぶっ飛び展開が続く本作ですが、最後の解決した時のアレが凄かった! まるでここまでのシーンが全てライブの前座だったように思えてしまう存在感。 いつの間にか完璧にセッティングされたバックライト。音楽に合わせて常識外れのパフォーマンスを見せてくれるゾンビ刑事。分かった、私の負けだ。君は最強に可愛くて頼りになる私のアイドルです。 「忙しい方のための」と付いているのは伊達ではなく、聞き込み結果にハズレなし、推理をミスれば即ゲームオーバーのコメディ仕様。ストレートで解決すれば15分掛からないコンパクトなストーリー。みんなも気軽にプレイしてゾンビ刑事へ向けてサイリウムを振ろう!

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  • 鈍感Boyと打算まみれの恋をしよう!
    鈍感Boyと打算まみれの恋をしよう!
    主人公のかよは高校2年生。文化祭までに彼氏を作るべく、たまたま屋上で知り合ったひちおにアプローチするという短編学園乙女ゲームです。 ゲーム制作部で制作活動に励むひちおはタイトル通りの鈍感で、かよがどんな猛アタックを見せてもどこ吹く風。彼から告白されるという恋愛イベントを夢見るかよの怒涛のアピールが全て微笑ましいエピソードに。物語としての相性は抜群です。 かよは当初、「ひちおを攻略して私に惚れさせてやるぜ!」という意気込み満点でまさに打算的な態度なわけですが、文化祭までに彼と何度も一緒に過ごすうちにちゃんと好きになっていくのがまた気持ち良い。そうした意味でも私はエンド3が好きです。 これは私がひちおくん寄りの人間だからかも知れませんが、打算って持続的でないように思うのです。何でもとにかく褒めてあげれば彼は私に好意的になる。恋愛をそうした一種のゲームとして捉えるならそれで良いんです。お望み通りドラマチックな告白もしてもらえます。しかしふとした瞬間に素が出てしまったり、正直に感想を伝えることが作品の改善に繋がったり。そんな自然にお互いを受け入れることを通じて深めた関係って、計算づくで手に入れた好意とは一段階奥行きが違うと思いませんか? 特にこの物語はフィクションなのですから、そんな素朴な見方もありでしょう。 エンディングは全部で4種類ありますが分岐条件は簡単でヒントもあるため、迷わず回収することができるでしょう。日が変わる時のカットインも可愛くていい感じ。私はかよがひちおの後ろを追う構図の絵が好きでした。 かよが押した場合と引いた場合、ぜひそれぞれの結末を見届けてあげてください。

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  • やっぱ叩けば直るだろ?
    やっぱ叩けば直るだろ?
    「叩けば直る」というのはブラウン管テレビの時代の言葉でした。ドラえもんやサザエさんでテレビや洗濯機を叩いて直すシーンが思い浮かびます。しかし本作で出てくるのはドラえもんの世界における家電製品ではなく、ひみつ道具のような存在、「BK」です。この時代観ミスマッチな組み合わせとノリ良く進むスピード感から、まるでコントを見るような感覚で楽しめる作品と言えるでしょう。 基本は人間のジッカーとロボットであるBKが雑談を交わすだけなのですが、度々様子がおかしくなるBKをテンポよくチョップして復活させるのが気持ちいい。最初のうちはそれだけだったのですが、続けてプレイしていくと何だかBKの不具合にも意味ありげな様子を見せ始めます。 詳細はネタバレのため触れませんが、このBKの不具合の原因と雑談の内容からの連想、そしてジッカーはジッカーで叩き方がやたらと上手く百発百中、という辺りに一貫した意味づけがあって唸らされました。キャラクター造形にもひっそりと仕込まれていて愛らしくて面白い、そんな作品を実現していると思います。 この点によって、「叩いて直す」という一点のコンセプトから筋の通った線としてのシナリオへと進化したのでしょう。 5分で読める、ゆるふわながらもスピード感あるコントのような楽しみのある作品です。気軽にプレイしてみてください。 @ネタバレ開始 現実世界のAIの進化も止まりませんが、まだまだBKの域には達していないように思います。大きな壁として、現代のAIは肉体を持たないという問題があるでしょう。その壁を越え、壊れたBKの指摘する人間の問題をも克服した時、人間とロボットの関係が新たなステージを迎えるのだろうな、ということに思いを巡らせました。

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  • 箱空のニイナ
    箱空のニイナ
    物悲しい雰囲気がありつつも心温まるエンディングに着地する素敵な小品だと思います。 主人公のニイナは外部と隔絶された施設で暮らす女の子です。絵本や詩集を読んだり、オセロや神経衰弱で対戦したり。今の生活に特別不満を持ってはいないようです。 そんな彼女の唯一の遊び相手であり大切な存在がレオでした。一緒に遊ぶのはいつもレオだったし、お父さんからのプレゼントだって届けてくれる。そんな彼を愛しているようでした。 そんな平穏な日々はちょっとしたきっかけで壊れてしまいそうになり、あなたは彼女に3つの不都合な真実を告げなくてはなりません。おそらくそのうち2つまでは読者にも見当がつくでしょう。残りの1つはプレイヤーにも衝撃的だと思います。しかしこの事実こそが全ての謎につながる核心なのです。 ゆったりとした流れの導入、穏やかで前向きな結末が印象的ながら、本作は決断の物語です。ショッキングな真実を知り一時は取り乱していたニイナはどのようにしてその真実を受け入れたのでしょうか。純真なだけであった彼女が現実を知って一歩成長するまでの過程が濃密に記されています。 そして勇気ある決断をしたのはレオもでした。彼のニイナを思っての行動と、それを受けてニイナがどのような選択を取るのかに注目です。

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  • こころのしおり
    こころのしおり
    10分ほどの短い物語20本からなる短編集です。登場人物の年齢も様々で多様なテーマを含みますが、恋愛ものが多めの印象です。地の文が多めの落ち着いた文体で表記は縦書き。カジュアルなゲームよりは小説っぽいスタイルでゆっくりと物語を楽しめるでしょう。 統一されたテーマがある短編集ではありませんが作者の色というのは出るもので、私は本作を読んで、現実的に考えうる最も綺麗な展開を追求されているように感じました。突飛な展開や真新しい設定に頼らずとも、丁寧な描写と温かいキャラクターでストーリーを進めていく手腕に優れていて、安心して楽しめる作品です。 作内には悪意を持った人物や都合の悪い運命はほぼ現れず、そこにあるのは人情味あふれるキャラクターと信じれば報われる世界。物語の中だからこそこういった純朴さを味わいたいじゃないですか。 私の好きだったエピソードとして、1話「マジカルハート」と15話「神が降りた手」を挙げておきましょう。少女漫画も顔負けの甘酸っぱい青春。こんな1枚上手の先輩も大好きです。 そして恋が実る話だけでも面白くありません。男同士の友情や熱血部活ストーリーを交え、少し苦い思い出を描いた話も良し。 「ショート・ショート・ショート100」の時より尺のある分の重みがしっかりと私の胸に届きました。 また、これらの作品に作者さんの趣味や経験が強く反映されていると見えるのも特徴的だと思います。こうした楽しみ方が可能なのも、フリーゲームの良さの1つでしょう。 それぞれの短編は独立して読めますが、一部話が繋がっているものがあるので順番に読むことをお勧めします。19話までを読み終われば、表題作である最終話「こころのしおり」が解放されます。栞は通常本に挟んで使うものですが、心に挟んだ栞とはどんなものでしょうか。ここに辿り着いたあなたならきっと、本作の音楽に隠された仕掛けにも気付くでしょう。そしてこの世界を前向きに進んでいくエネルギーをもらえるはずです。

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