イシカワのレビューコレクション
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雨の袂物語の中盤、回想シーンのラスト辺りから一気に惹きこまれていき、 エンディングまで一気にプレイすることができました。 前作もそうでしたが、主人公の心理描写や他人との関係性について 力を入れているのが伝わってくるため、特に終盤は文章の一文ずつを じっくりと噛みしめるように読んでいきました。 作中用いられる画像やBGMも落ち着いた文章とマッチしていてとても良かったです。 @ネタバレ開始 終盤にある 「もし何かが起きても、二人がくれた思い出が、 笑顔をかわした記憶が、支えてくれる」といった言葉や OPとは打って変わって明るくなるEDが好きです。 ラストのエンディング曲には主人公の気持ちが集約されていると感じました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
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初恋の後悔フィクションの場合、目を惹くような大事件とか個性的なキャラクターが 出てきて話を盛り上げるとか、そういう展開はよくあると思います。 この物語にそういった派手な要素は一切ありません。 ただひたすら、主人公である少年の高校~大学二年までの日常を描き続けています。 高校に入り、文化祭の準備をし、修学旅行に行き、大学受験をして、バイトをして。 端から見れば、本当に何てことない普通の人生かもしれません。 しかし主人公である彼の内部では絶えず繊細な感情が揺れ動いています。 その感情が転機を迎えるのが大学二年。物語のかなり最後の方です。 今作は「初恋の後悔」というタイトルですが、 恋や愛の話が前面に押し出される訳でもなく、 キャラクターたちが目指す明確な目的というものも提示されないため、 読み進めていて困惑するかもしれません。実際自分もそうでした。 ただ最後まで読み終えた今となっては、この作品をプレイして本当に良かったと思っています。 「初恋の後悔」という意味が分かったときは、それまで積み重ねてきた苦悩も相まってか、彼の成長ぶりにとても感動することが出来ました。 @ネタバレ開始 告白を機に前向きな人生を送り出すという展開が本当に良かったです。 もっと切ない感じで終わるかと思ったのですが、エンディングもとても明るくて良い読後感でした。 クリア後にタイトル画面がつぼみになるのも、これからの前向きな玉木くんを予感させるような終わり方でとても良かったです。 @ネタバレ終了 読むのに時間はかかると思います。 でもそれに見合った達成感もあると思います。 素敵な作品をありがとうございました。
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雇い主とバイトくんストーカー被害への対策として、一時的にカップルを装うことになった男女の話。 コンパクトにまとまったサスペンス+恋愛という感じで、 「事件の解決要素」と「二人の関係性がどう発展していくか」という二つの側面を同時に楽しめると思います。 またキャラクターイラスト、背景画像、BGMの雰囲気がマッチしていて、 終始落ち着いた空気感のまま読み進めることができました。 特に藤野さんの風貌にBGMが加わることで、彼女のミステリアスな雰囲気がより引き立っていたと思います。 文章も読みやすくサクサク進めるので、サムネやイラストに惹かれた方はぜひプレイしてみてください。
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エルシェの少年タグに『おねショタ』や『ヤンデレ』など付いていますが、その点を抜きにしても 純粋にシナリオが面白かったです。 「なぜ少年は監禁されているのか?」「エルシェは何者なのか?」 「なぜエルシェは頑なに外へ出ることを禁ずるのか?」 これらの謎が探索パートを挟みながら徐々に明らかになる構成がとても良かったです。 監禁という言葉からして不穏な雰囲気はありますが、比較的誰でも楽しめる作品だと思います。 @ネタバレ開始 狂愛とありますが、エルシェの気持ちはある程度理解できる気がします。 "恐ろしい魔物"="人間"だと思ってますが、 そんな魔物がうじゃうじゃいる環境に少年を放つくらいなら閉じ込めておきたい。 自分一人と交流した方が絶対幸せになれる。 現実を生きていれば、そういう思考に行きついても不思議ではないと思います。 「外に出たら、あなたを待ち受けているのは過酷な運命だけ」 この一言がエルシェがこれまでに経験した人生の過酷さを表しているようで、とても印象に残っています。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
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還るプレイヤーによって話の解釈がかなり変わってくる作品だと思いました。 主人公の境遇は徐々に明らかになるのですが、細部まで詳細に語られる訳ではないため、 彼の行動目的や心理状態について、かなり想像の余地を残しています。 文章は読みやすく引き込まれる文体のため、あっという間に読了できます。 暗闇に文章が表示されるだけの静寂な雰囲気を楽しみたい方や、想像力をめぐらしたい方にはおすすめの作品です。 @ネタバレ開始 自分の理想を追い求めて過ぎた結果、現実が見えなくなった男の話ではないかと 解釈しました。昭和時代のテンプレのような家庭環境を築き、順風満帆だった男。 彼にとって解雇通知は全く予期せぬエラーであり、当然受け入れられるものではなかった。 自分の思い描いた理想像の中では解雇などありえない。 いい大学を出て、いい会社に就職した完璧な自分が無職になるなど考えられなかった。 その完璧主義は、今も彼の中で生き続けている。 妻に仕事を押し付け、子に暴力を振るい、本当に一人になった後でも、 完璧だったころの自分を追い求め、もう存在しないはずの家族の元へ「帰らなければ」と呟き、道を歩き続ける。 多かれ少なかれ、自分の理想と現実とのギャップに苦しむことは、誰しも経験すると思います。 でも理想に固執し過ぎてはいけない。 それは話の途中に出てくる人物たち(かつての友人、クラブの女性、父親)が男に示しています。 彼らは、人生とは完璧に進むものでないことを理解し、ときには周りの声に耳を傾け、休むことも必要であると、男に説明しているように感じました。 制作者の方の意図とは、かなりズレていたり、過剰な解釈をしていると思います。申し訳ありません。 ただこの作品をプレイして、率直に上記のような感想を抱きました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
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メイドさんと繋がりたい全体的にテンポが良く非情に読みやすかったです。 メイドカフェには一度も行ったことがありませんが十分楽しめました。 5種類のEND回収まで1時間弱なので、気軽に手が出せる良ゲーだと思います。 ただ気軽にとは言っても、ゲーム内容が薄いという訳ではありません。、 Trueエンドは割とメッセージ性もあるラストだと思ったので、その点もすごくおすすめです。 @ネタバレ開始 END5でメイドカフェという場所をきっかけに、社会との交流も深めていくという構成はとても好みでした。 アニメの話以外できなかった最初に比べると主人公は本当に成長したなと感動しました。 世間的にはまだまだ好ましくない見方をする人もいるメイドカフェですが、そんな場所で内気な一人の男がメイドさんとの会話を通じて、自身を成長させることができるなら、メイドカフェは大変素晴らしい場所だなと思いました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
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ティラノフェス2020オープニングティラノゲームフェス2020開催おめでとうございます。 このような場を設けていただき本当に感謝の気持ちしかありません。 制作者としてもプレイヤーとしても目一杯楽しんでいきたいと思います!
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恋愛短篇集-星屑の小箱-@ネタバレ開始 「コミュ障な先輩」の話が一番好きです。 二人の会話が心地よくて短編にしておくのは もったいないくらいの出来だと思いました。 久保さんに『幽霊社員』という設定があるのもよかったです。 「一体どんな仕事をしているんだ」 「どんな性格をしているんだ」、 「どうやって会社に入ったんだ」 など、いろんな疑問が勝手に膨らむので、それが解決されることを期待して どんどん読み進めることができました。 最後まで読んでも久保さんには、まだ謎な部分が結構あるので、どんな裏設定があるのかすごく気になります。 また短編集ではありますが、 メニュー画面など、システム周りがすごくしっかり作られているなと 感じました。ボタンやウィンドウも明るい恋愛話という雰囲気にマッチしていて素晴らしいと思います。 @ネタバレ終了
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吹き溜まりの彼女はやめに読んで30分程度のプレイ時間でした。 ゆっくりでも1時間は全然かからないと思います。 @ネタバレ開始 特に物語の前半部分、彼女との再会~触れ合いのパートが魅力的でした。 昔の面影を残したまま主人公の前に現れる彼女。 そして直接的な描写が少なくても、 彼女の表情や立ち振る舞いを見るだけで想像できる凄惨な過去。 主人公が感じる罪悪感が痛いほど伝わってきました。 アダルトチックな表現もグイグイ引き込まれました。 これがあることで幼少期の彼女とのギャップが大きくなり、 物悲しい想いを一層強く感じました。 結末は賛否あるかもしれませんが、突拍子もないハッピーエンドにするくらいなら現実的なエンドにする方が自然だと思うので個人的には割と好きです。 @ネタバレ終了
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東雲に霞むまず何より文章が読みやすい。ここが大変素晴らしかったです。。 全編プレイすると1時間近くかかりますが、テンポ良く進んでいくので 時間を忘れて読み進めることができました。 扱っているテーマはただ重いと思います。 ただキャラクターたちの性格のおかげか、作品全体の雰囲気は 明るすぎず、暗すぎない感じなので後味の悪さはありませんでした。 @ネタバレ開始 物語の結末も大団円のグッドエンディングではなく。 全体の雰囲気から飛躍し過ぎない感じがして個人的に好みでした。 @ネタバレ終了 一部ショッキングな表現があるので万人受けはしないと思いますが、 お話はとても良く出来ていると思います。